7脂肪 俺の嫁 (頂き物の画像有り)
誤字報告ありがとうございます。
助かります。
本文、微妙に修正。
10個目の空中庭園が空に浮かんだ。月明かりに照らされてロマンチック……と乙女ぶりたいところだけど、個数が多くて逆に怖いかも。
「お館様、どのように対応するのでしょうか?」
執事が訊ねる。ここまで具体的な作戦は聞かされていない。執事は焦ってるけど、状況を把握しないと立てようが無いわ。辺境伯様は地上を見ていた。
地上では、脂肪系の魔物同士が同士討ちしているわ。魔物同士で争うのは、種族によっては珍しくないけど、私が不死鳥2匹と一緒に討伐したときはそんな挙動は見せなかったわね。昼と夜とで習性が変わるのかしら。
「「「「「うわぁ♥雑魚さが増してくぅ♥雑っ魚♥雑っ魚♥雑っ魚♥」」」」」
メスガキ属性がウザさを増してくわ。
「「「「「遊んでいないで勉強しなさいッッッッッ!」」」」」
教育ママ属性もウザさが増したわ。誰か別の属性でも使ったのかしら?
「まさかな……」
辺境伯様の呟きが耳に入った……
風が冷たい。『ちくわ』は空中で停止しているから、移動による風圧じゃなわ。北西から吹いている。あの方角は……
ふわりふわり、と『わからせ』の4文字が風に乗って飛んで来た。
「スリミィナさん。今回の討伐は極秘ということで……」
朗らかな方向に豹変した辺境伯様の声色に、私は『過ぎたるは及ばざるが如し』のことわざを思い出した。
禁呪の影響だ。このときはそう思ったし、後で調べたけど実際そうだった。あまりにも濃いメスガキ属性が脂肪系魔物を変質させてて、レアドロップが確定ドロップ変わっちゃったみたい。メスガキと教育ママのウザさが増したのも禁呪の影響ね。
ーーアノ娘ハワイノモンヤ!
ーーオマエダケノ萌エキャラダトオモウナ!
ーーワイノ嫁ヤ!
脂肪系魔物の咆哮が聞こえる。……アノ娘って誰だよ?
「「「「「うわぁ♥脂肪に知性が宿ってる♥」」」」」
おい、煽るなッッッッッ!
ーーFUUUUUUUUUUUU!
興奮した脂肪系魔物たちの同士討ちはヒートアップ。死んだ魔物が建物をどんどんドロップしてく……あっ、あれ、昔ラリィが絵で描いてくれた前世の建物の……なんだっけ、社会ツリー?
ーーボクカラノオクリモノデス、萌エ~♥
『萌え~♥』って言葉に出して言う人初めて見た。違う、魔物だわ。ううん、姿が変わって人っぽくなってく。人……ごめんなさい、豚だった。えっ、手足は人?豚?人……なの?
正直、脂肪系魔物が変異した存在が何なのか、私にはわからなかった。強いて近い存在を挙げるなら、親戚のおじさまかしら。なんでも12歳から1度も部屋から出ずに暮らしていて……あんな感じの体型になったそうよ。窓から私の胸をガン見してたから、引きずり出してシメて、裁判で落とし前付けて……確か今は鉱山働いているはず。体重も大きく減って健康的な生活をしてるって聞くわ。賠償金も欠かさず送ってくるし。(母が投資で溶かしましたけど)
その豚的存在の1体が、同士討ちしてドロップした社会ツリーを『ちくわ』の上に乗ったメスガキどもに向けて差し出したわ。ドロップアイテムを選べるなんて凄いわね。どうせなら肩こりほぐしポーションをドロップして私に貢いでくれれば良いのに、って本気で思ったわ。
そう言えば『アノ娘』とか言ってたけど、どのメスガキでも良いみたい……めっちゃキモい。引きこもりだったおじさまと同じ臭いがして死にそう。『ちくわ』で吹き飛ばそうと思ったけど、その前にメスガキが。
「「「「「うわぁ♥キモッッッッッ♥」」」」」
なんて発言をかますと、おじさまモドキは揃って炎上して行ったわ。これで一件落着……悪臭以外は、ってみんな思ったみたい。
「「「「「やったか?」」」」」
なんてフラグっぽいこと言う人もいた。その全てが母性に包まれてたから台無しだった。
まあ、でもやっぱりフラグっぽい。辺境伯様は気を許していないし、不死鳥2匹が燃え上がっている。執事がスクワットを始めたわ。筋肉がめっちゃ盛り上がる……
《スリミィナッッッッッ!今すぐ肩こりほぐしポーションを飲めッッッッッ!急げッッッッッ!》
自称野球英雄神が慌ててそんなことを言う。私も嫌な予感がしてる。でも、なんで肩こりほぐしポーション?
問う前に……
《スリミィナは【ダイエット無効】を付与された!》
精霊が状態異常の付与を告げた。初めて聞く状態異常だわ……
「ぐはっッッッッッ!」
重力が上がった……そうじゃないわ。体重が増えたッッッッッ!着ている服が伸びるッッッッッ!【運命の果実】までッッッッッ!
私だけじゃない。精鋭の一部も太って行くッッッッッ!これは今までのダイエット的行動が無効化されて肥満体型に……私は太ってなんかいないッッッッッ!冤罪よッッッッッ!
まずいッッッッッ!
肩こりがッッッッッ!
背中から圧倒的存在感を感じた。しかし、一瞬で消滅。
ーー君ノタメナラ死ネルッッッッッ!
おじさまを連想させる存在の1体が火だるまのまま跳んで来て、私の肩こりから生まれた終憎を瞬殺。そしてメスガキに向けてウインクッッッッッ!
「気を付けろッッッッッ!その個体のLVが上がったぞッッッッッ!」
叫ぶ辺境伯様。圧倒的経験値を得たおじさまモドキの炎上が止んだ。体表に光の線が走ったわ。
「嬢ちゃんッッッッッ!逃げろッッッッッ!」
ヒーギャックとエアッゾが、おじさまモドキだった存在に飛びかかる。が、一蹴。
「【お巡りさん♥この人♥痴漢です!】」
辺境伯様は恐ろしい形相でメスガキ属性魔法を放った。【お巡りさん♥この人♥痴漢です!】はメスガキ属性の単体向けの攻撃魔法で非常に高い即死効果を持ち、即死判定に失敗しても【社会的抹殺】の状態異常を100%付与する超強力な魔法なの。
でもその渾身の一撃をおじさまモドキだった何かは、軽々と弾き飛ばした。その方向に浮いていた空中庭園が社会的に抹殺されたかは不明だけど粉々になったわ。
「「「「「みんな寝ないで勉強しているのよッッッッッ!」」」」」
母性に甘えた精鋭を包んだまま、教育ママが受験勉強を煽る。おじさまモドキだったソレは後方へと飛んだ。
「こう見えて大卒なのでねッッッッッ!」
はっきりと、知性溢れる言葉で、ソレは答えた。
ソレは太っていた。確かに人間の姿だった。女性かと思ったけど、細い……細い細い……男のシンボルが股間に存在した。
ソレの体走っていた光の線が……文字に変わっていく。
『最推し』
『俺の嫁』
『尊い』
『課金して支援』
『最大限のリスペクトが込められた同人誌』
何かの言霊なのか、どのような意味なのか、結局今でもわからないわ。
ただ、禍々しいことだけは理解できた。
《スリミィナよ、我が真名を唱えよ》
《この物語はフィクションです。実在する人物や団体とは一切関係ありません。怒られた場合、予告なしに登場人物やスキルの名称が変更されたり、ストーリーが変更される場合があります。ご了承ください》
死ぬかも知れない。
野球英雄神と精霊の声によって、私は確信した。




