第三話 白銀と死体
第三話
「総員用意できたか!」
「第二小隊準備よし。」
「第三小隊準備、よし!」
やや遅れて俺と武蔵野先輩が並び終え、全員が準備を終えたところで、正面の扉が開いた。
「白、、」
目の前に広がった光景は白一色で覆い尽くされていた。まさしく豪雪地帯と言ったところなのだろう。白銀の世界が広がっていた。ついでに雪が降りしきっているので、視界も悪い。
「全隊、小隊ごとに距離を開けて前進!」
隊長の合図で一斉に三つの塊が動き始めた。
自分たちの小隊は左斜めに。その他隊長の率いる第一小隊は真っ直ぐ、もう一つの第二小隊は右斜めに前進して行った。
隊長によると、一定の距離を開けつつ、お互いの小隊同士がカバー出来るようにしているのだとか。
「寒っ、」
「中央はそんなに暖かかったのか?ここではこの寒さはまだ暖かい方だぞ!」
先輩が寒がっている頃、小隊長は笑いながら無機質な声で先輩を叩きながら言った。あ、小隊長は機械なのか。
そう思っていると、
「冗談はそこまでにして、警戒してください。」
隣から真面目そうな意見が飛んだ。
あ、こっちの人は生身の人なのか。
俺の隣にいる人は、小隊長のバディ。なんか馬鹿でかい棒状の何か、正確にはカバーがかかっている物を背負って歩いている。重く無いのだろうか?
「ところで、俺たちの名前言って無かったな。俺は小隊長の日向だ。で、そっちの真面目ぶってるやつが、」
「林だ。てか真面目ぶってるわけじゃねえよ、日向っ!」
ドゴっ!
「痛ってーな林!」
なんか騒がしそうだなぁ、この小隊。
そう思いながら先輩と、小隊長が林先輩が背負っていた棒状の何かで吹き飛ばされたのを眺めていた。当たった音的に多分金属だろうなぁ、あの棒。
ちなみにまあまあ飛ばされました、小隊長、、、
その後、無線で中央の隊長から、何かあったのかと言う連絡と、音を立てるなと電話ごしで怒られました。結構お怒りだったようです。
ちなみに小隊長と林先輩ってああ見えて結構仲良しそうのようだ。小隊長は優しそうな人だが、林先輩はなんかヤンキーみたいな人のようだ。結構ヤバい人なのだろうか?
あと、
「お世話になります!自分の名前はっ、」
「聞かなくても知ってる。それに、すぐ死ぬやつの名前なんて、覚えるだけ時間の無駄だ。」
武蔵野先輩が林先輩に挨拶をしようとすると、痛烈な言葉だけが返って来た。先輩は少し落ち込んでいたので、「元気出して」とだけ励ましておいた。
なんか少し煽ったように聞こえるかもだけど、煽って無いからね。ほんと。
その後は、やや空気が重い感じになりながらも、何事もなく進んでいたのだが、目の前に何やら森林地帯になっていた。ただでさえ雪が降って視界が悪いのに、森の中に入るのは危なく無いのだろうか?
「気をつけろ、ここから少し先が、バディが死んだ辺りだ。」
どうやらこの辺りから、敵の占領地域らしい。なぜか急に緊張して来た。先輩も少し怖気付いているらしい。林先輩は全くもって緊張していないようだが、、
とにかく任務が偵察である以上、俺たちは薄暗い森林地帯へ足を踏み入れた。
周りを木で囲まれているので動きにくく、さらには雪と合わさって視界が悪いと言う、最悪のコンディションだった。
そんな時に、
「小隊長っ、すみませんがトイレに行って来てもよろしいでしょうか、」
武蔵野先輩がトイレに行きたくなったらしい。俺は機械だからトイレに行かなくて済むのか、ある意味便利だと、自分の体を見ながら思った。
「オムツは履いてるだろう。それでしろよ。」
「だ、大ですっ、、」
オムツは履いているのか小隊長が確認したところ、大、まあ、ウンコのようだった。
流石にオムツにウンコは出したくないな。
「はあ、仕方ない。おい安藤! 武蔵野のトイレについて行ってくれ。」
え?そう思いながら、仕方なく先輩のトイレについて行くことになった。
もちろん少し離れたところで、草に隠れながら。
「やべぇ、けつ痛いな、」
寒さでお尻が痛い先輩を心配しながら、俺は用を終えるのを待っていた。
「お! やっとでっ、、」
ドスっ
一瞬目を離した途端、ドサっと音が鳴り、振り返ると先輩が倒れていた。
「先輩っ!?」
そう言った瞬間、
カーンッ、、、
え?
後ろの首元あたりに違和感を感じ、ふと後ろを見ると、
「死ねぇ! 政府のイヌがぁぁぁ!」
ナイフを持った青年が、俺を目掛けて襲って来た、、、