表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生女神様の人類お忍び物語ツアー  作者: 上野 たびじ。
第一章 悲劇の悪役令嬢救済編
8/60

(7話) 出会い、そして願い。

前半が断罪当日のシーナ視点、

後半が断罪当日のレイナ視点で話が進みます。




不気味な真っ白人形事件から約一年と半分。15歳になった私の体は身長も伸び、少しづつ母様のように立派な果実が実るようになってきた。既に前世の記憶の中で今の私より大きい人を現実で見た事は無いくらいだ。


うっふっふ〜、既にナイスバディな私の体はどこまで成長するのだね?元男子高生の僕の意見としてはもっと大きくなってもいいんだよ?自慢だけどお腹もキュッと引き締まってておへそのラインも我ながら美しいことこの上ない!


まだ女の子の日が来ていないので大事な場所はまだ自分でも見た事がない。


神界では地上において少女の生姿を見たり、犯したりする輩が現れないように、理不尽な光が胸のトップラインと股下をガッチリとガードしているのだ。だから私自身自分の体の女の子を見たことは無いし...その...いじった事も無い...




...




ってそんなことはどうでもいいのです!今日は私達にとっての最重要イベントが開催される日なのですよ。


そう!乙女ゲームの最重要イベントと言えば、クライマックスには必ずあると言うあれ!"断罪イベント"である!悪役令嬢が王子様に婚約破棄を言い渡されて牢獄にぶち込められてしまうあれです!


実のところ、レイナはもう既にここ一ヶ月くらい元気がありません。恐らく、今日という日が来るのが怖くて怖くてしょうがなかったのでしょう。


ココ最近はずっと仲の悪かった攻略対象同士が急に仲直りをしてコソコソと集まっているという噂も耳にしますし……


悪いことは何もしてないのに追い詰められて、本当に可愛そうです。


実際にレイナは何度も何度も教会に足を運んで、私や母様に祈っては静かに泣いていました。


『あぁ、シェイアスエルナ様、セルレイトラル様、どうか私をお救い下さい。導いて下さい。殺さないでください!』


そんな祈りを教会に来る度にしておりました。


学校ではそんな一面を見せることは無かったんですけどね。しかし現に隣で一緒に歩くレイナはとても体調が悪そうです。


無理もありません。今日から拷問が始まる可能性がある訳ですから。私だったら怖くてこんなイベント逃げ出してしまいますよ。


私達シーナ、レイナ、シアの三人は今、歩いて卒業パーティーの会場に向かっているところです。私の隣を歩くレイナは相変わらず表情が優れません。


レイナのいる物語は断罪イベントが二回あります。そのうちの最初の断罪イベントが、私達が今歩いて向かっている中等部卒業パーティーです。ゲーム内のレイナはこの卒業パーティーでまず第一王子ライルから直々に婚約破棄をされ、ヒロインにしてきた数々の悪行を罪に問われ、禁錮五年の実刑判決を殿下直々に言い渡され、第二断罪イベントまでの一ヶ月間に及ぶ苦しい拷問の日々が始まります。


そしてやっとの思いで一ヶ月耐えた後に彼女を待ち望むのは洗礼の儀という第二の断罪イベントなのです。ゲーム内のレイナはここで聖紋を焼かれ、"女神の悲鳴"と言う女神の金切り声のような悲鳴を頭に響かせられ、鼓膜が破れた耳、目、鼻、口から血を流しながら発狂して15年の生涯に幕を下ろすわけです。


レイナでそんな想像をしたくはありませんが、まあ正直二つ目の断罪イベントは問題ありません。ここに出てくる女神とは私か母様のはずなので、ここまでとても文句の付けようのないほどのいい子ちゃんであったレイナを罰することなどまず有り得ません。というか私がさせません。


問題なのは今日の卒業パーティーです。恐らく数々の無関係ないじめ事件を私たち三人に擦り付けてくる事でしょう。でも大丈夫。絶対に失敗しない案が私にはあるんです。これでレイナちゃんはハッピーエンドを迎えられる。私はそう確信しているんです。


一体私が何をするのか?


それは本番までの内緒です。


ヒントを言ってしまえば"お披露目会"ですね。


シア「今日は楽しみですわね!」


レイ「...」


シナ「レイナ、」


レイ「な、なんでしょうか...」


シナ「大丈夫よ。私達がついているわ。」


レイ「え、ええ...?」


シア「何も心配することはありませんよレイナ様。上を向いて歩かないと、物や柱にぶつかってしまいますわ。」


私の発言に『何を言っているの?』という表情を向けられたけど、大丈夫。私はレイナが頑張ってたこと、耐えてきたこと、言いつけを守ってくれたこと、全部知ってますからね!


神様はいつも見てるんです!『決まったぁー!!』



私達はパーティ会場の入口に到着した。



...それよりもさっきからキラキラとお嬢様オーラを撒き散らしているシアに一言言ってやりたい。



『だれ?』



後日談にはなるが、シアはパーティー前に届いた手紙に母親にそろそろいい男捕まえてこいって書かれていたらしい。で、猫かぶってたらしい。


シアがシアならその母も母だね。王族なのにいい男捕まえて来いって。


本当にこのままの文章で送られてきたんだって。


まあ、シアっぽくていいかもしれませんね。



-------------------------




とうとう来てしまった。この日が来てしまった。私は何度も何度も時計を確認しては目を閉じ、時計を確認しては目を閉じてと、進んで欲しくない時計の針を何回も何回も確認してしまう。


しかし今日が中等部卒業パーティー当日である事実は変わらない。


今日私は断罪される。


そして今日から苦しい拷問の日々が始まる。ゲーム内の映像では拷問されているレイナの写真しか無かったけど、少なくとも爪は剥がされ、歯は何本か抜かれていた。太腿にも何本かの細い針が刺さっていた。気性の荒い兵士に犯される絵もあった。



朝の五時。


私は日課であるプリューム中央教会に足を運んで掲げられた神輪の目の前で膝をつき、手を握って額の前に持っていく。


今日でここに来るのが最後かもしれない。その可能性もある。そしてそう思っていると不意に喉の上、鼻の奥が詰まったような感覚になる。そして切れ長の綺麗な下瞼から暖かな雫が一滴一滴、ポツン、ポツンと落ちていく。次第に連続して大粒の涙がどんどんと溢れてくる。


「うぅ...あぁ...」


声に出さないようにしてるのに詰まった苦しい声が漏れてしまう。


ここはレイナにとって大切な場所であった。


生まれてこのかた15年。歩けるようになってから毎日のようにここに通ってはお祈りを捧げてきた。


正直宗教と言う感覚が薄い日本から転生した私自信もびっくりするくらい真剣に神様にお祈りをしていた。


最初は『15年後、どうか死にませんように、』と、手を合わせていた。そして歳をとる事に14年後、13年後とゲーム内でのレイナの命日カウントダウンは進んでいく。そして断罪まで残り2年というところで私は大きな出会いをした。そう、彼女に出会った。本当にびっくりするくらい可愛い女の子であった。それはもう人間なのか疑ってしまうくらいにかわいい女の子であった。


そんな少女を教会に連れて来た日のことだった。いつも通りお祈りの姿勢をとって、『神様、私今日、こんなに可愛い子に出会えましたよ。これも神様のお導きなのでしょうか。』と心の中で呟いた。そして『ありがとうございます。そして2年後、どうか学院でヒロインに断罪されませんように!!』と、いつも通りのお祈りをした。


いつも通りそれで終わりだと思っていた。


しかしその日は違ったのだ。


『人の子よ、私の標す道に従うべし。』


なんと頭の中に声が入ってきたのだ。これは女神様の声だ。聞こえた瞬間にわかった。とても幼い、けれどこの上なく上品な声だった。彼女はシェイアスエルナと名乗った。


シェイアスエルナ様は私と同じ13歳なのになんというか、自然に従いたくなってしまうような気分にさせてくれた。これが女神様なのだと心から思った。


その時にシェイアスエルナ様と約束したのが、"例え何をされても仕返しをしてはダメ"というものであった。そうすれば私は救われる。私はシェイアスエルナ様にそう言っていただけたのだ。


だから私は学院に入学して、ヒロインが登場して、どんな理不尽や嫌がらせを受けたとしても、仕返しをすることは無かった。大切な友達がヒロインに何かされた時も、友達を慰めるだけで仕返しだけは絶対にしなかった。とてもとても心が苦しかった。


なんで私とシーナだけがこんなに苦しい思いをしなくちゃならないの?本当にこの苦痛に耐えたら断罪されないの?


そう疑ってしまった日もあった。


でもその度にあの美しい声を思い出して何とか今日という今日まで我慢し続けることが出来た。


あれ以降シェイアスエルナ様の声が聞こえてくることは無かったが、女神様は見てくれている。私には何故かそういう自信があった。


『女神様。シェイアスエルナ様、セルレイトラル様、見てくださってますか?私はシェイアスエルナ様との約束を守り切りました。なのでどうか、どうか私を救ってください!』


...



相変わらず女神様からの返信は来ない。けれどやれることはやってきた。


「すぅー...はぁー...」


私は深呼吸をして涙を拭い、教会の扉を開けた。


「行ってきます。」


私は教会にそう一言残して歩き出したのでした。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ