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新生女神様の人類お忍び物語ツアー  作者: 上野 たびじ。
第四章 学園バトル、未来日本出張編
60/60

16 HWA-00


「行ってくる。」


舞台袖に控える四人にピースサインを出して、舞冬は軽快にステージへと登った。


対するは上級魔族のセイル。頭から生えた角と、大きな羽や尻尾は見事に隠蔽魔法で隠れている。


魔族の特徴を削いだ彼女はただの少女にしか見えない。まぁ、そもそも地球には亜人や魔族とかいないし、人間しかいないしね。


「はじめまして。随分と可愛らしい見た目してますけれど……」


「嫌味?」


「私はナズールさんと違って容赦はしません。」


「のぞむところ。」


……


静まる会場。主審がその間を切るようにして片腕を上げた。


「両者装着!!」


舞冬は青い蒼いキューブ形のキーを胸に差し込む。それと同時に淡いエフェクトと共に身体があおい装甲に包まれた。


同時にセイル。黒ベースのスーツにピンクのポイントが入った装甲が展開される。軽くてバネのありそうな、スピード特化型の機体。


舞冬は片手にショットガンを担ぎ、セイルはナイフを両腰から抜いた。


「第三試合!!セイル対伊達真冬!!試合……はじめ!!」


審判の合図と同時に姿を消す舞冬。そして一直線に舞冬の方へと駆けるセイル。


とりあえず舞冬のいた位置をナイフで切り裂くが、もちろん既にその位置に舞冬はいない。


日頃からもっと早いスピードスターを相手取っているのだ。このセイルの行動も予測が着くのだろう。


舞冬は現在上空に浮いて銃を構えている。


「どこです!?卑怯です!?姿を現しなさい!」


セイルはステージの端に背中を向けて、背後からの攻撃を警戒し、視野を広げる。


「ロックオン。」


「そこっ!!」


舞冬の小さな声が魔族の敏感な聴覚に反応。位置を特定した。


パァンッ…


放たれた銃弾は真っ直ぐにセイルの脳天へと向かっていくが、舞冬の位置がわかっており、銃弾の発砲元を読んだセイルはナイフを投げる。


キィンッッ!


甲高い音をあげて、銃弾は軌道を逸れ、ナイフが弾かれる。


その瞬間にもう一方のナイフをセイルは投げた。その僅かな瞬間で放たれたナイフは、銃弾や弾かれたナイフと途中まで動きが被り、舞冬には途中まで見えない。


サクッ……


「くっ!?」


ナイフが見えた途端、舞冬は何とか身体を逸らすが装甲にナイフが掠められ、一部の透過が機能しなくなる。


セイルは一瞬で弾かれたナイフ達を回収。そして投擲を続ける。


そのナイフの在処を目掛けて舞冬も銃を変更して攻撃開始。


「っ!?」


セイルのふくらはぎや腕の装甲をかすめる。


しかしセイルも負けていられない。ナイフを手にして投擲していくことで着実にナイフは少しずつでも舞冬の装甲を掠めていく。


そしてセイルは自分がナイフを拾いに行く方向へと舞冬の攻撃を誘導する。


きっと舞冬からすれば、行く先々に、いや、ステージの至る所にナイフが落ちているように感じていることだろう。


「ハァッ!!」


「くっ...」


着実に、少しずつ互いの装甲に傷を入れていく。


舞冬は既に全身が顕になっており、空からの銃撃対地上からのナイフ投げという構図になった。


互いにダメージが蓄積されていき、最後にしかけたのは舞冬。


「ヤァァアアッ!!エイっ!!」


剣先の着いた銃を手に取って、それをナイフ拾うセイル目掛けて投げ込んだ。


銃は真っ直ぐとセイルに向かっていき、ナイフでは防げないと察したセイルが左に避けた。しかしそこにあったのは目の前にまで迫っていた弾丸……そして……



カァンッ……



……


セイルは恐るべき反射神経で弾丸を弾き、あろうことか、真冬が投げた銃のギリギリにもう一つのナイフを投げており、そのナイフが舞冬の額の装甲に直撃。


セイルの投げた最後のナイフは、腰に隠されたもう一本の予備ナイフだった。


舞冬は武装を解除させられた。


互いに全力をだしきった証であった。


「勝者!!南極国!!セイル!!」


ワァァアアアアア!!


会場がどっと湧く。互いの飛び道具の影を使い合った高度な、精密な試合に驚かされる。


「負けた。悔しい……」


「いえいえ、反射神経なんて言う生まれ持った特技がなければ私は最後の弾丸に負けてました。こちらこそナイスゲームでした。」


二人は互いに握手をしてステージから降りた。



・・・



「あの方のもとにいながら敗北するなんて、正直考えにくかったのですけど...しかし私は玲奈のようにはいきませんよ?」


「...?...あの方ってのはよく分からないけど、希望ちゃんはどうしたの?体調でも悪いのかな?」


「白々しいですね、貴女のせいのくせに。それに例え椎名さんが出られたとしても、きっと貴女は相手にもなりません。貴女の相手は私で充分です。」


「まだ競技をはじめて数日だってのに、日本代表で長らく経験ある私を倒せる自信があるなんて末恐ろしいな〜。」


こっちのチームはみんな揃って血の気が強い。


ステージに上がると既にアドレナリンが出ているからだろうか、皆挑発するように相手へと声をかける。


そして毎度のように二人を落ち着かせる審判。今回の戦闘のMVPは言わずもがな審判だ。


「はじめッ!!」


一瞬静かになるスタジアムの雰囲気を感じ取った主審が声を上げた。


日本は今戦う梨衣奈が負けた瞬間に、敗北が決まる。


だと言うのに、新人の代表選手の相手が、代表選手の先輩であるわこ先輩だなんて、本来は絶望ものだ。


観客席からは「終わった。」「彼女には勝てない...」「亡命の準備しとくか。」などと、弱気な発言が多く目立っていた。


皆頭を抱えて試合の行く末を見つめる。


二人はそれぞれ装甲を纏い、既に戦闘の間合いに入っている。


洋剣とレイピアの中間のような細い片手剣を半身で構えるわこ先輩。


そして未だ武器を構えずに様子を見る梨衣奈。


梨衣奈は最初私に、使う武器を内緒にしていたのだが、既に彼女の決闘の様子は見させていただいている。


彼女の戦闘スタイルは予想通りの弓矢である。


「早く撃ってきなよ。撃たなきゃ始まらないよ?」


「では。」


梨衣奈は十本の矢を取り出してセット。


そんなに取り出して同時に撃てるのか?と、思うのは最もなのだが、彼女が数年かけて学んできたエルフの技術を舐めてはいけない。


まだ動かないわこ先輩は梨衣奈の動きをただ見つめる。


梨衣奈は弓を引き、十本の矢を同時に放った。放たれた十本の矢は、わこ先輩を目掛けて一直線に突き進んでいく...訳ではなく、半分以上が誰もいないあらぬ方向へと飛んでいき、姿を消した。


「本当にこれだけで代表になったのかい?」


わこ先輩も自分の方に飛んできた矢を一振、二振りですべて弾き、その矢がステージ外へと放り出されて姿を消した。


「まだまだです!」


次に梨衣奈は二十本の矢を取り出して、宙に浮かんだ。これは剣を使う者との距離を稼ぐためのものであり、鏡華や玲奈のような蜂の動きを真似たり、舞冬のように姿を消して攻撃に利用するためのものではない。


銃と違って矢を放つその瞬間まであらゆるポイントが死角になる弓使いならではの使い方。


「はいっ!!」


次は上からわこ先輩に注ぐように全ての矢が命中するように思えた。


しかし、


キキキキキキキッ...


と、目にも止まらぬ剣先のスピードで二十本の矢は弾かれる。


その間にも十本の矢をとどんどんと矢を放ち、30、40、50と、雨の如く矢がわこ先輩に降りかかる。


しかしわこ先輩はそれをもろともせずに弾き、四方八方に矢を散らしていく。


「はぁ、はぁ、はぁ、」


弓は大量の矢を同時に放つ為弦は固く、数発も撃てばただの少女である梨衣奈に力は残されていない。


普段はその数の暴力でおおかた交わしきれずにダメージ許容オーバーで倒せていたはずだが、正面に立つわこ先輩は無傷。


「さぁどーするんだい?」


そして攻撃に必要な弓も既に使い果たしてしまった。


つまり、梨衣奈は地面に降りて使える矢を拾わなければならない。


「どうするも何も、降りて矢を拾うだけです。」


梨衣奈はゆっくりと地面に降りる。しかしそれをわこ先輩が見逃すはずがない。


スススッ


足音立てずに縮地のごとく地に足をつける梨衣奈に襲いかかる。


「ははっ!!待ってあげたけど流石にここまで面白くない代表戦は初めてだよ。さ、早く終わらせるとしましょっか!!」


「っ!?」


気がつけば目の前にまで迫っているわこ先輩に驚き、梨衣奈は思わず再び宙に逃げようとするが、そこもわこ先輩は把握済み。


「空に逃げられると思ったかい!?」


「なっ!?そ、そうでした!!」


空に逃げて安心するはずが、こちらに着いてくるように宙に舞うわこ先輩。


彼女も翼を持っていた。なぜなら、彼女は裏切ったとはいえ一応日本代表なのだから。


「いっ!?」


梨衣奈が飛んだ瞬間に振り抜かれた剣が梨衣奈のつま先に当たり、この試合初のダメージを食らった。


「ほらまだまだぁっ!」


そして追撃を避けようとする梨衣奈だが、わこ先輩の剣を避けきることができずにダメージはどんどんと蓄積されていく。


「ほらほらーどうしたんだい!?もっともっと逃げないと〜!!」


「いっ!?」


ただただ空中で繰り広げられるのは剣を振り回して追いかける先輩とただただそれから逃げ回る後輩という構図。


「あー、負けたなぁ」「やっぱりわこ先輩には適わないか。」


と、観客も日本一強時代の終わりを予感した次の瞬間に、ステージのど真ん中の上空で試合は決することになる。


「鬼ごっこはどうだった?」


「はぁ、はぁ、はぁ、」


もはや受け答えすらできないほどに消耗した梨衣奈。それにため息をついて、期待はずれだとでも言わんばかりに軽く剣を構えるわこ先輩。


「ま、もういいか。」


「...」


軽く剣を梨衣奈へと振りかざした。


しかし...


「チェックメイトですっ!!」


梨衣奈が突然の笑みを浮かべた直後だった。


「ッ!?」


カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ!?


......ドスッ...



「「「「「...」」」」」



観客は何が起きたのか理解が追いつかない。


確かに圧倒していたのはわこ先輩であって、決して追いかけ回されていた梨衣奈では無い。


しかしステージの中央で意識を失って倒れているのは梨衣奈ではなくわこ先輩であった。


「し、勝者!諏訪梨衣奈!!」


ウォォォオオオオッ!!


梨衣奈はぺこりとお辞儀をして舞台袖に降りた。


「ちょっとどうやったのよあれ!?」


「急に視界が真っ暗になって気づいたらわこ先輩が倒れてたのですわ!?」


舞台袖に降りた梨衣奈を出迎える鏡華と玲奈は未だに何が起きたか理解ができていなかった。


「おふたりとも落ち着いてください!!


私のやってることは舞冬さんのしてることとあまり変わりません。」


そう。実は最初から梨衣奈は狙って大量の矢を分散させていたのだ。


その理由は、梨衣奈の矢には、透明化と操作という二つの技術が組み込まれているところにある。


最初からステージ全体にミスショットしたり、弾いてもらう事で、矢を満遍なく会場に散らす。そして最後の最後にステージ中央に集結し、ラストショットで気が抜けているわこ先輩の隙をついて一斉操作。


100を超える矢がわこ先輩に降り注いだのだ。


流石に同時に降りかかる百の矢を不意打ちの状態で振り払うことは出来ない。


そして許容ダメージ量を遥かにオーバーし、試合は終了。


相手を慢心させて最後に一発とは末恐ろしい子。


さあ、これで通算戦績二対二となり、最終戦が確定したことにより、それぞれの主人公が登場となる。


「それでとうとうラストゲーム!!両陣営のラスボスが登場です!!」


スタジアムの司会者さんの声と同時に、二人の男が舞台袖に姿を現した。


「南極国からやってきた奇人!!カルナ!!...そして日本国HWAの誇りと希望!!天道大輝〜!!」


ゥォォォオオオオオッ!!


二人はアナウンスと同時にステージに登る。


「君はぁぁああっッ!?HWAのもももももも申し子ぉぉおおおっぉっおっ!?」


アナウンサーの言っている奇人という表現が生ぬるく感じるほどに狂った喋り方をするカルナ。


どうやら見た目や格好だけでなく、その全てが地の底に落ちてしまったようだ。


会場の観客達は「なんだアイツ。」「ぷッふっ...」「ダメだ笑いこられられないッ!」と言った感じでカルナをバカにするようなムードが広がっているが、大輝は真面目に彼と向き合っている。


「確かに俺はつい最近までそう言われていた。でもな、大事なものをたった一つ失って、そして全てを失ったんだ。だから俺はそんな大層なもんじゃない。」


「まるでぇぇぇ...僕とぉぉぉ?おっおっおっ同〜じぃだねぇぇええええッ!?」


ぎょろぎょろとした目つきで荒い呼吸を繰り返しながら目の前に立つ平凡な見た目の少年に共感を示すカルナ。


私は思わず舞台袖にいる梨衣奈をチラッと見てみたが、言うまでもなく、カルナが全てを失った原因が自分であると重々理解している梨衣奈は既に舞台袖で土下座を決め込んでいた。


隣で急に土下座を始めた梨衣奈に鏡華や舞冬があたふたしている。


国の存続がかかっている試合で随分肝が座っていること。


「君とはぁぁああぁぁあ、仲良ぉくぅうっう、なれそぉぉおおっお!!仲間!!仲間!!にいっいっなるぅう?」


ちょっと解読不能な域に達している狩るなの言葉だが、自分と似た境遇だからか、どうやらカルナ陣営に誘っているように聞こえる。


「たたたたたた他人んっんっはぁ、期待するぅだだだけっししぃて。うしなななったぁぁあああらぁ、見み捨っってててるるるぅ。そぉるぇうぉ、きぃみはすぃしししってるぅ!!」


訳:「他人は期待するだけして、いざそれを失ったら元から無かったかのように見捨てることを君は知っている。」


カルナは数年前に梨衣奈に捨てられ、そして自分の嘘が原因とはいえ、神からの加護も失い、そして地位を失い、そして家族から見放されて大切な人も何もかも全てを失った。


そんな共感を煽って仲間に引き入れようとするカルナ。しかし大輝には既に大切な人がいることを本人は理解している。


「大輝〜!!そいつが何言ってるかは分からないけどさっさとやっちゃいなさいよ!!」


「大輝の苦労は大輝しか...いや、舞冬と大輝しか知らない。大丈夫、私がいる。」


「ちょっ!?私は!?私も知ってるわよ!?」


「はははっ。こりゃ困ったな。」


いつも通りの二人のやり取りに思わず目を赤くする大輝。一度目をぬぐって正面に立つ奇人カルナに目を合わせる。


「すまんが俺にはこの国に大切な人が沢山いるんだ。俺だけ逃げ出して自分から大切なものを手放そうだなんて考えたことすら.....無いなっ!!」


「「「「「ッ!?」」」」」


大輝が起動させたのは最近使っていた汎用型HWAでは無かった。


雲がかっていた空から光が差し込み、斜陽の照らすその機体は白く大きく輝き、肩に書かれたコードを見せつける。



HWA-00



かつて纏う者を拒み続けた伝説の機体は、一緒に、直接繋がることで栄光を掴んだ伝説の少年と共にこの舞台に帰ってきた。


「「大輝っ!?」」


「私のレーダーにも...反応無かった00が...なぜ...」


その懐かしき姿に驚きを隠せない鏡華と舞冬、そして00製作者である大輝の姉。


観客の眼下にはあの伝説の少年と機体。


確かにここに奇跡は起こった。


そりゃそうよ。なんせ私がここにいるのだからこんな奇跡が起こってもおかしくないじゃないの。


勝利の女神が果たしてどちらに微笑んだのか、それは誰の目から見ても分かる単純な答え。


「女神...そっちに微笑んだか。」


鋭い眼光でこちらを睨み、普通の話口調で呟くカルナ。


「ちょっとお遊びに付き合ってあげるわ。堕神」


「...」


「それではラストゲーム!!南極国カルナ対日本国天道大輝の試合!!.....はじめッ!!」


両者のただならぬ思い背負った戦が、今始まったのであった。





戦闘シーンってほんっっっとに難しいですね。武道の心得がないのでイメージすら思いつきません...


内容の薄い戦闘シーンで申し訳ありません(>_<)

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