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新生女神様の人類お忍び物語ツアー  作者: 上野 たびじ。
第三章 俺TUEEEE系主人公編
38/60

(11話) 物語とは、悪役がいなければ始まらないのだ。



例えば一人が犠牲になれば世界が救われるとしよう。その犠牲が自分で、自分には大切な人がいたとしよう。まだ成し遂げられていない恋があったとしよう。そしたら自分を犠牲にすることに躊躇うだろうか?




私は無い。




自分が犠牲になれば例え数億分の一の可能性でも大切な人が亡くなる未来を一つ潰せるのなら、それを私は好んで選ぶだろう。



って言っても、神様になって自分が犠牲になっておきながら何事もなくケロッとしてられるのだから犠牲になることは正直なんとも思っていない。神の手も借りたいのなら貸してやろう。



魔族で会議をした次の日、母様が言っていた、魔族にスパイとして送るもう一人の神様が私に、トールとセカンドヒロインが人間に戻ったという情報をくれたのだ。


弱音が母様に聞こえてたか〜...多分だが母様が私のために彼を人間に戻したのだろう。


結局私も母様にはまだ頼らなくちゃならないのね...私は未熟。そういう現実が深く深く突き付けられた気がした。


でもこれで物語が軌道に乗った。魔族は人間族共存作戦を実行する。それと同時にトールの俺TUEEEE物語を進める。その両方を実現することは不可能である。どちらかが悪にならなければ事は上手く進まない。


でも一つだけ魔族が人間と共存できて、彼の俺TUEEEE名声が上がる方法がある。それは...




私が犠牲になること。




別に私は殺されても死なない。そもそも私は世界が終わらない限りは死なないんだけどね。現に宇宙が広がり続けているのと同じように、世界も広がり続けている。私の寿命はどんどん伸びてるというわけだ。


作戦としては単純。魔族たちが街に馴染んだ頃、私は単独で魔族が馴染んだ街を襲いに行く。


私は超上級魔族だから普通は手をつけられない。だけどそれがあえて人間たちとの共通の敵になり、共に手を取って戦うことで認められていく。それが魔族側の作戦の成功。そして私は最後、俺TUEEEEの名声のための贄となり、トールに討伐され、彼は晴れて人類最強に返り咲くのだ。



良いストーリーだ。


戦争に価値を見出さなくなった魔族。魔族を嫌う人間族、でも彼らが仲良くしていたのは実は魔族で仲違いをしてしまうこともある。しかし大きな存在が敵になることで再び手を組み敵を排除する。そして感動の仲直りと英雄の誕生。





物語とは、悪役がいなければ始まらないのだ。





私一人が悪役になればこの物語は救われる。皆が笑顔になる。そして私も死なない。


最高じゃないか。


これこそ女神として生きていける生きがいというものなのでは無いのだろうか。地球においても神の使徒と言われるものは皆最後犠牲になるのだ。そうなることで人々の不安は削がれていく。まあ私は使徒じゃなくて女神本神な訳だが。


あと今更だけど"物語とは、悪役がいなければ始まらないのだ"ってどうよ!名言じゃない!?いつかこの世界の教科書に私の綺麗すぎる絵か写真と共に、



"物語とは、悪役がいなければ始まらないのだ"

シェイアスエルナ=ホープス [S:3218〜]



的なね?いやこれまじで気持ちよすぎる件。いやはやわたくしポエマーデビューですかな。さすが私!そこにシビれる憧れるぅ〜!



...コホン



ちょっっっっっっっとだけオタクが出てしまった。まあオタクやめろって言われてもそれを拒絶するかのように"だが断る!"で返すけどね。いやいや、前世までアニメ大好きすぎる健全な男子高校生だったんだから許してくださいね。って私は誰に話してるんだい!!ってね。



この魔族たちが人間界に馴染むまでの間が暇すぎて一人でボケツッコミを続けていた私であった。格好がつかないね。すると後ろからコンコンと部屋を叩く音が響いてきた。


「何かしら。」


「いえいえ、随分と機嫌の良さそうな妄想に走ってらっしゃるようで。」


扉の向こうからはフードを被った魔族の少年が現れた。


「あら、いけなかったかしら?日本のアニメ文化はどこの世界よりも優れていると私は思うわ。」


「それは僕も同感です。」


営業スマイルが抜群に効いた顔で肯定されてもなぁ。


「あらそう。女性の機嫌を損ねないよう言葉だけでも同意することは顔に出ない人だけが許された技よ?カルラルトランテ=ライト君。」


「それではまるで僕が貴方を否定しているように聞こえてしまうではありませんか。私は齢十四にして消えたくありませんよ?シェイアスエルナ=ホープス王女殿下?」


そう。彼こそがもう一人のスパイ。私の神界での幼馴染、カルラルトランテ=ライト。通称ラララ...ップっ...


「あっ!?今ラララって思い出しましたよね!?思い出しましたよね!?」


「悪いかしら?ラララ?」


「あーー!?殿下と言えどそれだけは許せません!!」


彼の名前はラ行が多すぎて稀に呂律が回らない神様もいる。宴会で酒なんか飲んでいると、みんな呂律が回ってないので、まだ酒の飲めないカルラルトランテは酒を注ぐために呼ばれては酒を注ぐのだが、その時カルラルトランテと言う名前を皆言えずカラララララランレ!カララララランレ!と呼ばれてしまうことから神界ではラララと言うあだ名が着いてしまったのだ。


ぷっくくく...やっぱり面白い。


「あー!また馬鹿にしましたね!?」


「いえいえ、本当にラル君には笑いの提供をしてくださって..クッククク...いえ、本当に感謝してるのですよ?ブフッ...」


「...感謝してるなら褒美くらいくれてもいいんじゃないですか?」


おっ、ラルはどうやら自分のネタを出汁に何か益を得ることを覚えたようだ。いつまでのやられっぱなしの弟分ではなくなったってなわけですね。


「なら何が欲しいのか答えてみなさい。」


「っ!?...それはぁ......」


ラルはみるみるうちに顔が赤くなっていく。チラチラと私のことを見るが身は合わない。少し目の下を見て...あはーん。そういうこと〜。


私は魔族の姿を解いて、神の姿になる。そしてラルの姿も強制的に神の姿に戻す。私はラルの元に一歩一歩近づいて...


むにゅっ!


「あぁんっ」


「っ!?!?!?なっ!!!!!??でっでででででで殿っ下っ!?!?」


神の真っ白な肌に走る考古学的な模様が真っ赤に光る。人間なら鼻血を出していることだろう。ラルは私の大きく発達した胸を見て『触らせて欲しいなぁ...なんて出来るわけないよね...』と心の中で願っていたのだ。


それを見た私はからかいたくなって彼の頭を抱いて自分の胸に押付けたのだ。ついでにいやらしくするためにあえてえっちい声を出して、ラル君を煽る。


「どうかしら?柔らかいでしょう?私の胸。あなたの小さい顔なら埋めるくらい造作もないのよ?」


「はっ...はははははわわわっわっわっはわっはっ」


私はそう言って声にならない発狂を続けるラルを胸に押し付ける。多分私も高校生の頃にここまでの絶世の美女の胸に顔を押し付けられたら興奮しすぎて気絶してただろうなぁ。いや、気絶どころじゃなかったかもしれないなぁ。まあ、される事なんて日本の学校の中でもどこかにビ○チがいなければされることなんてないけどね。


私は元が男だから男と結ばれるつもりは無いけど、こういう反応を見るのは面白い。


「ぷはっ...た...助かっ...た...」


「もっとやってあげてもいいのよ?胸に溺れたいのは男のロマンじゃない。」


「も、もう十分であります!!」


ラルは急に背筋をピシッと伸ばして敬礼する。


「私のに触れたらもうほかの女神じゃ満足出来ないかもしれないわね。ラル君も可哀想ね。私も罪な女神だわ〜。」


わざとしおらしい演技を見せてラルを煽る。


「殿下が男とはゴメンだって知ってるんですからね!じ、じゃあ僕は任務に戻りますから!失礼しますっ!!」


そういうとラルはピューっと直ぐに魔族化の神術を自分にかけて出ていってしまった。


『少しやりすぎたかな...そういえば何しに来たんだろう。』


私はそう思いながら体勢を立て直し、魔族の姿に戻ると母様から『シーナもやるじゃない!?私も負けてられないわね!!アナタ!来なさい!おねんねの時間でちゅよ〜!』と聞こえたので念話を切ろうとしたが切れなかった。母様が強制的にこの念話を繋いでいるのだ。頭から母様と父様による養育プレイの声だけが聞こえてくる。


あー、私の軽率な行動に母様は少しながら怒っていらっしゃるのね。


私は変装の裏で身体に走る光模様を赤ではなく青に染めた。


『アナタ?おっぱいでちゅよ〜。上手に飲めました〜!』


ぐはっ!?...


さすがに厳しいものがある。耳を塞いでも聞こえる。必ず頭の中に入ってくるその声は私にとって一番の恐怖なのであった。


『お父さん。シーナちゃんのメロンが食べた──グハッ!?』

『アナタ、流石にそれは私も引くわ。』


私は念話越しに父様の頭に氷の矢を刺した。頭を冷やしてください。私はそういう意味を込めて、強制力の無くした念話を切ったのであった。

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