(5話) 私はモテる生徒会長。
「リーナ。朝だよ。」
「ん〜...もうちょっと...」
とても気持ちのいい朝です。こういう時は余計眠ってたくなりますよね。
「今日からまた学校じゃないか。シーナさんが待ってるよ。」
「ん...はっ!?」
私は今日から学校なのを今思い出して、布団を思いっきり蹴っ飛ばして起き上がった。
「フェブッ!?」
「あっごめんなさいライル!」
ライルの顔に蹴っ飛ばした布団が直撃した。
「ライル、朝のやつ。」
「はいはい。」
チュッ
「じゃあ準備しちゃってね。食堂にご飯用意してもらっているはずだから。」
「了解です!」
私は早着替えをしてピシッと敬礼する。そして昨日の夜から準備してあった鞄を持って食堂に行き食事を済ませて歯を磨く。長い髪を梳かして顔を洗って、執務室に入る。誰もいない執務室の端にある、床に描かれた白い輪っかの中に入って、鎖骨上窩に手を当てて「転移」と呟く。そうすれば目の前には...
「おはようございます。セレナ。」
「おはようございます。シーナさん。」
私を待っていたのはシーナさん。そして、私はこれからセレナとして学院に編入するのだ!
「では学院に向かいましょうか。」
私はシーナさんと共に部屋を出て学院に向かって歩くのでありました!
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「今日からこのクラスに編入することになりましたセレナと申します。よろしくお願いします。」
大きな拍手が教室中に響く。
彼女の容姿は体格はそのままでハイエルフの耳を人間の耳にし、長い桜色の髪の毛を紫陽花のような深い青色にした。顔立ちも少し垂れ目にしたので正直これをリーナと見抜く人がいたらこの私が直々に天才のレッテルを貼ってもいいレベルだ。
席は自分から一番前に座った。なんと勉強熱心な...
この時期は入学シーズンなので編入生が来ることは珍しくは無い。なので自然にクラスに溶け込めることだろう。現に女の子達に「どこから来たの?」とか「何が趣味!?」とかいろいろと聞かれている。
クラスにとけこめるのはいいことだ。
ちなみに入学シーズンということで、私の最難関の任務、観察対象の彼もしっかりとこの学院の中等部二年生に入学してきた。私達は高等部二年生。今年で私達は17歳になる。何気に学院に来てもう四年も経つのだ。時の流れは早いものだ。ちなみに私は生徒会会長でレイナが生徒会副会長だったりする。
あ、私は去年から会長をやっていたので、話しかけられる時は「会長!」と呼ばれることが多くなった。年下の女の子からは謎に「シーナ様!」なんて呼ばれるけど。まあ、悪い気はしない。ついにやけてしまいそうになるけどね。
シアも誘ったのだけど相変わらず「...私に生徒会...務まると思う?」とドヤ顔で決められたので入らなかった。シアはいつも何考えているか分からない。けど一緒にいてくれるだけでも私は嬉しいのだ。
大体俺TUEEEE学園系作品は主人公に助けてもらう治癒系のファーストヒロインと高飛車な子に勝負を挑まれて勝って仲間になる攻撃系のセカンドヒロイン、敵に操られて主人公達を攻撃してくるが、物語の途中で主人公必死の叫びで仲間になる暗殺系サードヒロインがいて、実験好きな先生が実は敵軍のお偉いさん。
みたいなね。
まあ、多分だけどそういう人達がこの学院の中等部には集まっているのだと思う。
ちなみにやらかした天使も潜入しているのだけど、どうやら入学試験で主人公のように爆発させていたあれのようだ。実はセルリルの同僚のようで、セルリルにものすごく謝られた。セルリルは悪くないのにね。
アヴリルはどうやらかなりおっちょこちょいな性格のようだ。直感で動いてよくミスをして怒られていたそうだ。でもそういう子いるよね。
ホームルームが終わってとりあえず例の彼に初のご対面をすべく中等部に行くことをリーナとレイナに伝えると、「「私も行きたいです」わ!」と言われたのでありがたくついてきてもらうことにした。
「久しぶりの中等部ね〜」
「そうですね〜。ち、中道部の思い出がよ、よみがえり、ます...わ...」
「ちょっとセレナ!?大丈夫でして!?黒歴史ですのね!?」
リーナにとってここは数々の悲惨な出来事をギュウッと押し固めたような場所だ。そりゃ顔を青くして当然ですよね〜。なんか可哀想になってきた。
「わ...私は...ここまでの...よう...です...パタリ...」
「セレナーーーー!!」
リーナはパタンとレイナの膝の上で頭と伸ばした手を落として目を瞑った。
「...演技下手になりましたか?セレナ。」
「そういうネタですっ!」
ムクっとリーナは起き上がって「さあ行きましょっ」と、誰よりも早く目当ての廊下に向かって歩いて行った。
なんというか、やはりリーナはリーナなのかもしれないと思った。ああ、いい方向にね?
私達もリーナについて行くと何やら廊下が騒がしいようだった。生徒会長としては見逃せない。
「何を騒いでいるのですか。」
私は騒ぎの後ろにいた生徒たちに声をかけて事情を聞いてみることにした。
「会長!」「おお!会長だ!」「え!?シーナ様!?」「シーナ様よ!?」
まずい、もっと騒ぎになってしまった。
「そこのあなた、事情を聞かせてくれるかしら。」
私は端で縮こまっていた少女に話を聞いた。
「あの、編入生のトール=ミカヅキ君と会長の従姉妹のアヴリル=ホープスさんが喧嘩をしてて...」
私は少し背伸びをして騒ぎの中心を覗いてみる。すると何かを叫んでる黒髪の男子生徒と、何か言い返しているプラチナ髪の少女が言い争っているのが見えた。
私達は囲っている子達に「少しいいかしら」と言って通してもらう。
私がそう言うとそこまでの道が自然に開けていく。そして避ける人一人一人が私たちに向かって羨望の眼差しを向ける。
いいわ。最高ね。これはかなりの優越感。生徒会長になってよかったなと思う瞬間であった。
そして私の事が見えたアヴリルは涙を「うぅ...」と、目いっぱいに溜めて私の所に駆けてきた。
「シーナ姉様〜!!」
ターンッと飛んで私の16歳の頃よりまた大きくなった胸元に飛びついてきた。
「な、何かしら...というよりこの状況は何なのかしら...」
「もうダメですぅ、アヴリル任務成功出来なそうですぅ...何言っても聞かないんですぅ...私もう女王様にポイされちゃうかもですぅ!そんなのイヤですぅ...」
なるほどねぇ、つまり人間より圧倒的に何もかもが上であるアヴリルですら話が通じなくて面倒なのだと...そういうことなのかな?
「大丈夫よ、その時は私が隣で消されるのを見守ってあげるわ。」
「なんでそんなこと言うんですか!酷いです!」
余計にアヴリルの目に涙が溜まっていく。
「冗談よ、冗談。セルリルと一緒に私が雇ってあげるわ。」
「ありがとうございます...」
私がよしよしと背中と頭をさすってあげると、彼の相手に相当疲れたのであろう。すぐに眠りについてしまった。私はアヴリルを保健室に連れて行ってもらうよう近くの生徒に預け、私と正面に向き合う少年に目を合わせた。
黒い瞳に鋭い目付き、黒の短髪と左腰に付いた日本刀!そして彼の隣には大人しそうな癖毛ロングのおっとり目、正統派ヒロイン系女の子とポニーテールの気の強そうな高飛車ツンデレ系赤髪の女の子。
三人は私をじっと見据えている。
そう。彼こそがミスター俺TUEEEE君こと、トール=ミカヅキ、いや、三日月 徹だ!