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新生女神様の人類お忍び物語ツアー  作者: 上野 たびじ。
第三章 俺TUEEEE系主人公編
31/60

(4話) エルフの里 lll



エルフの男が顔を青くして息を切らしてこのイングドレラジールの最上階に登ってきた。


「何事。」


エルフ婆は不機嫌そうな表情を浮かべてエルフの男に早く答えるよう急かす。


するとエルフの男は大きく息を吸って...


「里の食料、作物、家畜が全て消えました!里の男たちも私を除いてみな気絶して倒れています!それも全てあの下劣な人間の女の仕業にございます!!」


「なんじゃと!?」


「ぷっ...くはっ...」


「何がおかしい!?」


僕はつい耐え切れずに吹いてしまう。『いや〜、流石だなぁ。相変わらず意地が悪いことで、敵わないなぁ。』彼女は僕達がやられた事をそっくりそのままとまではいかないにしろ、一人でやり返したのだ。


すると、頭の中に『いまそっちに行くわ。』という声が聞こえた。


「いや、その女って、こんな人じゃありませんでしたか?」


僕はニヤニヤが止まらないままいつの間に後ろに立っていたシーナさんを紹介する。


「一時間ぶりくらいですね〜婆さん。」


「人間のガキがこの神聖な部屋に何の用じゃ。」


エルフ婆は決して叫んで私を罵るような真似はせず、あくまでも私がここにいるのは場違いだと、そう言いたいのだ。


「いえいえ、私からあなた達には人間に対する窃盗をやめて頂いたいのと、神の使者、血縁者を名乗るのを止めるよう説得しに来たのです。」


私は決して物怖じせず、笑顔のままエルフ婆に答えた。


「何を言う!この下劣な人間風情が!!」


わたしを通報にしきた男性エルフは私に罵声を浴びせる。私は『このままじゃ埒が明かないな〜』なんて考えながら、わざとらしくライルに質問することにした。


「ライル、この老害は誰の言うことなら絶対に聞くと言ったのかしら?」


「天使様と女神様だそうだよ。」


「あら、そうなのですね。」


私がライルからの言葉にわざとらしく相槌を打つとエルフ婆が「その通りじゃ!人間などという下等生物に聞く耳など持たんわ。」


ほー...随分と言ってくれるじゃないですか。そこまで人間を嫌い、人間の作ったものを堂々と窃盗するとは、行動が矛盾しているような気もしますが、人間を家畜程度にしか考えていないのなら納得できなくもないです。


神々はか弱い人間に魔力を授けた。そして現に人間と神は共に生活し、友としてあり続ける存在となりつつある。その人間を否定することは神を否定することと同意なのでは無いか。


まあ、暴論ではあるが...神の名を使う以上こんな卑劣極まりない行為は辞めさせるべきだ。これには母様も同意している。


さあ、断罪の時はやってきた。



「なら...」


私のこの一言で威圧された三名はビクッと肩を震わせて黙り込んだ。私は声を脳内干渉に切り替えた。


「貴様らのような蛮族の声など聞きとうないわ。」


ただ呟いただけのはずの声が、ライル以外の二人には、心の奥深くに突き刺さるように聞こえたはずだ。


「なっ!?貴様のような人間のガキに何故そこまで言われねばならんのじゃ!!我々は神の使───」


「口を開くなと言いたかったのですけど...低脳なあなた達では分からなかったのね。しっかり言葉にするわ。黙りなさい。」


「「ヒッ!?...」」


顔を真っ青にして何が起こってるのかも分からず口をパクパクしてる二人を見てライルは「お〜...怖い怖い...」と冷や汗をかく。


「我々の名を語り人間族に対して行ってきた数々の悪質な行為、許されると思ってるのかしら?」


「き、kkiki貴様は一体nnna何なのじゃ!?」


ここまで神気に当てられてよく口が開けたものだ。流石長い年月生きてるエルフは伊達じゃないと言ったところか。ま、噛み噛みだけど、


「私ですか?私はこういう者なのですよ〜。」


私はパァっと笑顔で質問に答えながら本来の姿を現す。ちゃんと本物だと思われるようにヒラヒラと浮いておく。エルフ二名は私の姿を見て青かった顔をあさらに青くした。


「「...ぁ...ぁぁ...」」


「わかったかしら?私は女神シェイアスエルナよ。つまりあなた達の里の住人は皆、女神を罵倒して襲いかかって差別しできたってことになるわね〜。」


「あ...あなたは...」


エルフ婆は私を見て何かを思い出したかのように呟くが、私がその言葉を遮る。


「そこのエルフの男。」


「は、はい...」


「あなた、私のした行為に、いや、その行為をした私自身に下劣だと言ったわね。」


「あ、あ...」


男は絶望そのものを表したような顔をした。会ったことは無いのに分かるのだ。私が神であり決して逆らってはいけない存在なのだと。


「私がこの里でしてきた事は全てあなた達が私の愛する人間の街で行ってきたものよ。分かるかしら。知恵ある者が知恵ある者の物を強引に奪うのは窃盗。知恵ある物は知恵ある者の集団の中でしか生活していかない。その枠組みの外に出ればそれからはもう窃盗では無い。言葉通りの弱肉強食の世界の勝者となる。身を置く環境によってそれらひとつの行為が賞賛されるものかそれとも批難されるものなのか変わる物なのよ。」


「...」


エルフ二名は俯きながら拳を強く握る。


「そしてあなた達は今まで神の名を語り、言葉通ずる知恵ある者の集団内において窃盗という卑劣極まりない行為をしてきた。あなた達は"言葉"セーレル教"同一の物を使って生きる同じ集団内において窃盗を働いたの。しかも私達神の名を使って。それがどう言う意味をなすのかわかるかしら。」


「...」


きっと二名の頭の中には「死」の一文字が即座に浮かんだはずだ。


「あなた達は神の名に泥を塗ったのよ。もし来たのが私ではなく母様だったなら...あなた達の首はもうその高さに無かったかもしれないわね」


「「っ!?」」


二名の喉仏が上下に動いた。きっと首を落とされることを想像して唾を飲んだのだろう。二名は何度も何度も唾を飲み、汗で髪の毛を湿らせ、強く拳を膝の上で握る。もう大丈夫だろう。


「...私からの罰は」


「「...」」


二名は歯を食いしばって強く目を瞑った。


「エルフの里を解放し、差別を撤廃。そのままスパシア領に所属して人間と交流を深めなさい。ちなみにあなた達と領民には既に私が、差別発言や行動を起こしたら罰が下されるよう神術がかけられてるわ。あなたは長から引退し若い子を立てなさい。」


「「...」」


二名は刑を言い渡されてもなお目を瞑って歯を食いしばったまま動かなかった。ああ、終わりって言ってなかったか、と思い、


「以上よ。」


と言っておいた。


「「え?...」」


顔をスっとあげ、目をぱちぱちさせながら『え?それだけ?』的な反応をする二名。


「え?って何かしら?もしかして私に殺されでもしたいのかしら?」


「いえいえ!」

「決してそんな事は!」


私は冗談を言うと二名は途端に焦って顔を横にブンブン振った。


はあ、とりあえずはこれで一件落着と言ったところだろうか...私はライルの肩に手を置き瞬間移動をしようとするがエルフ婆が話しかけてきた。


「お慈悲をありがとうございます...にしても貴方様はセルレイトラル様にとても似ていらっしゃるのに似ていらっしゃらない。」


いや、どっちやねん。


「えっと?」


私は困惑する表情をエルフ婆に見せるとエルフ婆はすぐに答えた。


「私は3000年前、最後にセルレイトラル様が地上にお降りになった時、その姿を実際に見させていただきました。言葉遣いに容姿...とてもとても貴方様、シェイアスエルナ様に本当によく似ていらっしゃる。しかし...セルレイトラル様はどちらかと言うと女神に逆らう者には容赦をせぬお方でしたので。」


あ〜...なるほどねぇ、確かに想像が着く。『え?わたしにそんなこと言っちゃう子はそれ〜!』って言いながら首をはねてそう...でも私も別に情けをかけた訳では無い。


なぜなら今まで完全に下の存在として見てきた人間と同格の存在として生きるという事なのだから。プライドの高すぎるエルフには精神的に酷であろう。それを乗り切ることこそが私からエルフの里に課された試練なのだ。


強制的にエルフの心を矯正し、人間との共生を試みる、KYOSEI計画。それこそが真にエルフたちにとって辛い罰となるのだ。


私はその旨を長に伝えてスパシア領主館に転移した。



「いやぁ、怖かった。流石シーナさんと言ったところかな。」


ハハハッとライルは領主の椅子に座りながら笑みを見せた。


「解決出来て良かったじゃないの。とりあえず約束は果たしたわよ。」


私は人の姿に戻りながら、条件を忘れるんじゃないわよと釘を刺した。


「わかっているさ。じゃあリーナに内緒で準備を始めようか。」


「ええそうね。」


私達はリーナが学院に通えるよう手筈を整えるのであった。


これにて小章エルフの里編は終わりです。次話より再び本編に入ります。

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