(5話) あまり私達を怒らせないで。
文の後半より、直接的な表現や単語は用いてはいないものの、非常にセンシティブな情景が繰り広げられます。
そう言った情景が苦手な方はその文章を読んでいなくても分かるよう、次話で簡潔に説明しますので、後半からは物語を飛ばす事を推奨します。
「あまり私を怒らせるな。処したくなる。」
私はシアのあまりにも真に迫った顔に驚きを隠せずにはいられなかったのであった。
「はっ、面白い冗談を言うぜセルシアちゃーん。勿論俺たちを引っぱたいたツケは体で払ってもらうぜぇ?ふヘヘヘヘヘ...」
相変わらずそっちのことを考えている時の笑い方は下品極まりない。驚きで我に返った私は、シアがこの事態にどうケリをつけるのか気になってしょうがなかった。だから少し黙って見ていることにした。
「それもいいねぇ!ナザールさん!最高に面白いよ!アッハッハッ!」
「おー、セルシアちゃんはそっちがわかる派の人間かぁ!じゃあ早速今日の夜から──」
「いやぁ〜楽しみだなぁ、ナザールさんの…処刑」
「...」
笑っていたシアは最後の一言を発言をする際に突然の真顔を見せた。ナザールは『え?処刑?なんの事だ?』と言う動揺ゆえのシンプルな感想を心の中で抱く。
「...え?違うの!?処刑されたいんじゃなかったの!?」
「なんだ〜」と残念そうな顔をするシア、そしてもう一度確認するようにナザールはシアに問いかける。
「い、いや、俺はセルシアちゃんと夜の楽しみをしたいだけで──」
「え!?処刑されたいの!!やったー!!楽しみが増えるね!!」
ナザールは『こいつ、話が通用しねぇ...』と心の中で徐々にイラつきを見せ始める。でも実は話は通じているのだ。ナザールの言葉とシアの回答を結びつけるためのキーワードがナザールにはない。
「お前さっきから処刑処刑何言ってんだ?どこのお貴族様かは知らねーが王家以外に簡単に処刑できる貴族はいねーんだぜ?残念だったな!セルシアちゃーん!」
「うん!知ってるー!だから言ってるじゃん。ナザールさん処刑されるよって。」
「は?ん?どういう事だ?」
ナザールの残念な脳みそでは、これがどう言う状況なのか未だに理解できないらしい。「もー、しょうが無いね〜答え言ってあげますよ〜」と、シアはナザールの脂ぎった鼻の当たる寸前まで人差し指を持っていってウインクした。
「私、ソルニック王国の第一お・う・じょ!!」
ちっちっちって感じで人差し指を左右にふりながら答え合わせをする。
「え、え、そ、ソルニックのお、王...女」
まあ、たかが一介のシーカーが世界最強大国の王女を犯したとなれば死刑は確実どころか、それ以上に厳しい拷問刑すら有り得る。だからシア=王女というキーワードがあれば、犯す=極刑と、自ずから導けるわけだ。
加えてこの世界では王族の名前を王族以外が名乗ることを許されていない。それぞれの国ごとに第一王女には〇〇、第二王女には〇〇と決まっている。なのでそれぞれ王族は正式に名前を書くと〇〇何世と、何人目の〇〇かが表記される。
大国の第一王女の名前を知らない者などソルニックの隣の国であるリングイングの人が知らない訳もなく。それすら気が付かなかったナザール達は相当無礼な人間ということになる。
「処されたくなかったら軽はずみな行動は控えるんだな。行こう、シーナ。」
「はい。」
にしてもシアはカッコイイなぁ...普段馬鹿なフリしてこんなに頼りになるんだもの、あとたまたまだけどここら一帯が消し飛ぶことにならなくてよかった。いや、今回ばかりは本当にシアに感謝。
「「「...」」」
私たちは呆然としている三人を置いてさっさとダンジョンを出た。リオはヒュウちゃんが風で運ぶのを手伝ってくれた。
あと私は一つ気になることがあったのでレイナに念話で質問した。
『レイナ、私が怒ってるのわかったと思いますけど、私なんかなってましたか?』
そう質問するとレイナは顔を真っ青にして思い出すような素振りをしながら答えてくれた。
『えっと...シーナは神様だから知ってるとお思いですけど、ドラ〇ンボールのスーパー〇イヤ人の様な"気"で湧き上がってましたわ...多分それを見てシアが止めに入ったのだと私は思いますわ。』
あ、なるほど、あいつらにイライラして止めに入ったんじゃなくて、私が、何かしでかしそうだったから止めに入ったと。
なるほど、そうだったんですね...
「シア、ありがとうございます。」
私は素直に感謝を伝えるとシアは引き攣った笑顔で答えた。
「シーナが人間じゃない何かに変わりそうで怖かったから...うん、止めて良かったと今でも思っているよ...」
あー、なんて言うか本当にごめんなさい。
この後謝罪の意味も込めて二人に街で売ってるクレープをご馳走した。
とても甘くて美味しかった。
-------------------------
その日の夜。首都プリュームの宿。ギシギシとベッドが激しく揺れる音が部屋に響いていた。
「今日はっ...ヤケに...んっ!?...激しいわね...っ」
シールズの言葉にナザールの動きが止まった。
「はぁ、はぁ、はぁ...どうしたのかしら?やっぱりあの三人の事かしら?」
「ああ。許さねえ。絶対に許さねえ、」
息切れしながら怒りを顕にするナザール。それが行為に出ていたのだ。その様子を見てシールズが表情を変えた。
「ならあの娘達を強引に捕まえて犯しちゃいましょうよ。きっとあなたの事を好きになってくれるわ。」
ナザールに三人を襲わせるよう説得に入るシールズの顔は、それはそれは醜いものだった。
「あの娘達は処女よ。分かるのよ。わたし、ああいう白いものを黒く染めるのが趣味なのよ。大丈夫よナザール。きっと受け入れてくれるわ。彼女たちも立派な貴方の遊び道具になってくれるわぁ、自分から求めてくる程に...」
「そうだな、そうだよな。」
「どう?あの稀にも見ない程の美少女たちが自分から腰を振って来ることを想像してみて、」
「さ、ささ、最高だな...ふ、ふふふ、へへ、」
「悪いのはあの娘たち。なんせこのパーティのリーダーはあなたなのよ。それに逆らう子にはお仕置が必要だと思わないかしら?」
「その通りだ。よし、決めたぞ。明日早速一人目を襲おう。一人落ちれば勝手に二人を誘って乗ってくれるだろうよ。」
ナザールはシールズの案に乗ることにした。だいたい気に食わないのだ。自分より身分が上のやつらが自分より後に来たくせに調子に乗って命令ばかりして来るのが。
「そうね。いい考えだと思うわ。まずは...この子なんてどうかしら?」
シールズはパーティNのメンバー票を手に取って、そこに書かれている名前をを指さす。それを見たナザールは気持ち悪い笑みを浮かべた。
もう既に王国がどうこうとか極刑など彼らの頭の中には無い。
「そうだな。うへへ、あいつなら逆らう力も無さそうだからな。ここの3人は皆絶世とも言える美少女だしな。俺が遊んでやるのにあ不足はねぇ...いひひひ...」
「あら、私も忘れないでちょうだいよね。」
「勿論だ。続けるだろ?」
「ええ。もっと激しくてもいいのよ?」
「明日のための体力温存だ。」
ナザールはそう言って相変わらず気持ちの悪い笑みを浮かべると、二人は月明かりの差し込む部屋の中で、再び夜の楽しみを始めるのであった。
こんな話、学院の女子三人は知る由もない...そしてナザールの言う通り明日の探索の際に上手いこと巻かれて犯されるのだろう...そう。
女神がいなかったのならの話だが。
この話に耳を傾けていたシーナは直ぐに気持ち悪い会話を遮断して自分のベッドの上で身震いを始めたのであった。