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新生女神様の人類お忍び物語ツアー  作者: 上野 たびじ。
第一章 悲劇の悪役令嬢救済編
1/60

(オープニング話) 女神、地上におりてみた。

「シーナちゃん忘れ物の無い?」


「勿論です!」


「おどゔざんシーナがいなぐなるど思うどぅぇあふぇうあぁあ$@¥!"」


「あ〜...いつもの始まったので行ってきますね母様。」


少女はビシッと敬礼をして見送る二人に背を向ける。


「ええ。気をつけてね。」


「行ってきます!」


少女は一言残して、自分の身体に人間の要素を書き加える。刹那、純白の空間に歪みが生じ、少女はその歪みの奥へと羽ばき光子を残して消滅した。


「あ゛ぁぁあぁぁあああ゛!!!!ジーナぁぁああぁ!!!!」


彼女がいたであろうその空間にただただ愛する娘の名前を呼ぶ男性の叫び声...というより図太い悲鳴だけが遠く遠くまでこだましたのであった。



-------------------------



さあ!やってまいりました!わたくし事シーナ=ホープス13歳は"晴れて"人間の街にやってきたわけであります!!


ゴロゴロゴロ...ドゴーンッ!!ピシャーンッ!!

ザザァアーーーー


「...」


生憎の雷雨ではありますが私の心は綺麗さっぱり雲ひとつ無い快晴なんです!まあどうせこの雷雨も父様が親離れした娘可愛さに号泣した結果なのでしょうから気にすることも無いのです。どうせ濡れませんし。


「スーゥッ……ふぁ~ー。」


大きく鼻で息を吸って口から出すこの行為を呼吸という。もっと細かく分類すると、深く吸って深く吐いたので深呼吸。


鼻を突く雨水と路面の香り、鼻を通して体に侵入してくる大気と水蒸気が私の喉と鼻腔を潤わせる。


久しぶりの嗅覚に視覚、そして味覚に触覚。其の人間たらしめる機能達の復元に思わず胸の奥がしんみりとする。


これが人間かと。これが生きることであるのかと。


まあ先程からの私の頭の中の一人語りを見てお分かりかと思いますが、実は私は女神様と神様の娘、つまりのところ女神様なのです。


『人間共よ!私を崇め奉れ!!アッハッハッハッハー!!』


───なんて言いたくなる気持ちも山々、私は前世が人間でしたから力を手にした無敵な今は、まさに中二心をくすぐる空想の存在の権化。


しかし神なる者皆紳士淑女であれという教育方針から、元より好き勝手な暴挙などはさせて貰えませんがね。というよりしたら怖いお仕置が待っていますから実行しようとする心持すら抱かせて頂けないのです。


そもそも降りようとする神自体が稀も稀なのでどんなお仕置が待っているかも分からないんですけどね。何故自ら自由を奪われる下界に降りようなどと考える者はいないに等しい。


しかし、とあるお仕事に応募し内定が貰えると、本人の希望があれば地上に降りることが出来るのです。


そのお仕事こそ下界管理省文明調査委員!


これは実際に地上におりて生物と生活を共にし、下界の文明や社会情勢、生態系などを神界に報告するという世界の均衡を維持するためには必要不可欠な職務…というのは表面上の建前で、実際には500歳未満の神の子供が下界について学ぶ、いわば下界塾のようなものなのである。だから行きたい子は行けばいいし、興味が無い子は行く必要が全くないのです。


私は齢13になったばかり。下界塾に通うには些か早すぎる年齢なのですが、私が母様にお願いしたら一瞬の迷いなくGOサインを出してくれたので無理を通してくださった母様には感謝しかありません!


父様はどうやら早すぎる娘の門出に納得いっていない様子。周りの重役を担った神々と共謀し、母様を多忙の身に置き、私のわがままを通さぬよう偽文書まで作成して母様の書類に紛れ込ませた。


が、結果は今私が地上にいることから明らか。母様は見事に流作業に騙されること無く私の下界行きの書類に許可の押印。


それでも納得しない父様は降りようとする私の後を必死についてまわったり、私の足や羽を言葉どおり引っ張ったりして天界に留めようと必死だったが母様からの叱責により断念。


父様よりも母様の方が地位が高いので私が天界に戻される筋合いもございません!!


とりあえずこんな紆余曲折を経て、私は遥々地上まで降りてきたわけです。


元よりこの世界における人類の進化や生態系、私達神の存在意義にも興味がありましたし、何にしろアニメ大国出身の身として転生とは即ち異世界遊覧こそが醍醐味。人の世に降りない理由は無い。


とはいえ父様の気持ちは分からなくもない。


神にとって13歳は赤子同然と言えど、人にすれば13歳は立派な少年少女ですしね。


凹凸の激しい石畳の地を呪わんとばかりに殴りつける大粒の雹。これは父様の気持ちの表れそのものであった。


少し親不孝だったかなと父様に申し開きのないという感情を抱きはしつつも、結局は自分が決めた道であり其れは誰にも邪魔される筋合いがない。


シーナは豪雨の中を傘もささずに歩いて目的地に向かう。


住宅広がる路地裏の道から、それなりに大きい商店街へと繋がる通りに出てきたが、天候もあってか自然と私の周りに人は一人も現れない。


雨粒の一つ一つが確かに私を捉えている。それでも髪の毛はサラサラと乾燥した晴れの日のような靡きを見せる私を見たら人間たちはどう思うのだろうか。もしかしたら皆何も気が付かずに通り過ぎるのかもしれない。


「はぁ……」


現地点から目的地までは3km程。果たしていつ人間とすれ違うのか、どんな目で私のことを見るのだろうか…という高ぶらせる感情よりも面倒くさいという怠惰の気持ちが溢れ出る。


怠惰は人間の抱く感情の一つ。やはり体が人間な以上精神という感情も肉体に引っ張られてきているのだろう。


しかしながら面倒くさいとは言っても神様っぽく空に舞ってしまっては制約違反になってしまうのだ。


一応変わり種の神々のための地上での制約事項ものがある。が、制約事項とは言っても特に細かい取り決めはなく、(革命を起こすな!)(生態系に干渉するな!)(存在を公に晒すな!)という大雑把なものなのである、まあ簡単に言えば、神も地上では自重しなさいって言うことだ。


ちなみにこの世界では魔法が存在する。しかしそれは次元を歪めたり、鉄から金を創り出す錬金術のような秩序に反するものは使えない。光魔法と闇魔法を除いては。


それでも光魔法も闇魔法もできることは限られているので基本は質量や燃焼、媒体などなど聞き覚えのある現象を念力で扱うといったイメージが正しい。


もちろん何も無しに人を浮かせることなどできないわけで、空を飛べる人などこの世にはいない。


なので私は「なんでこの世界には魔法という物がありながら人は浮けないのかしら」と理想の魔法世界とのギャップに愚痴をこぼした。


一方で俗世に溢れた異世界転生世界と違い、それほど有用でない魔法の代わりに、この世界の技術水準は近世~近代程高く、蒸気機関ならぬ魔鋼機関なるものが存在し、公共交通が勢いをつけ始めている時代であった。


ちょうど時代の象徴であるものが目に見えたので私はそこに向かった。メインストリートの真ん中にある1段高い石段の上に登ってぼーっとしながら待っていれば路面電車ならぬ路面魔車がいつか来るのだ。


この世界の今の時代、路面魔車が通う国などなかなかの先進国に限られている。


私が降りた国はリングイング王国と言って、この星の中で一番の大国...のお隣にある小さな国家である一方、世界でも大きな勢力を持つセーレル教という宗教の聖地であるため宗都とも呼ばれることがある。故にここに住む人は熱心な宗教家も多く、地上に降りた神達も住みやすいのだとか。


実際私みたいな下界塾生が何人も暮らしている。


路面魔車の停留所から見るこの国の街並みは先程話した技術の時代感通り1900年代前半のベルリンといった雰囲気だが、身分制度は転生モノあるあるの中世のような制度らしい。だから路面魔車なんて言う先進的な機械や道具、公共交通機関が発達しているのに民主主義や共産主義、社会主義のなど市民革命の兆候は見られず、未だ世界では絶対王制が主流という、産業革命と市民革命が繋がっているイメージを持つ地球人...というより日本人からするとなんとも不思議な文明を築き上げてきている世界なのです。


五分くらい待つと誰も乗っていないプリューム行きの列車が到着したのでそれに乗り込む。プリュームというのはこの国の首都の名前であり、プリューム駅というのは色んな路線が集まるターミナル駅だ。日本の首都東京にある東京駅と同じイメージ。


でも私は終点のプリューム駅までは行かずにその二つ手前の駅、PIA駅で降りる。


傘も持たずに列車から降りる私を運転士さんが心配して声をかけてくれたが、「いえ、問題ありません。」と言うと「そっかそっか、じゃあ風邪引くなよ嬢ちゃん!」と軽く手を振ってすぐ出発していった。


他愛もない雰囲気で運転士さんと会話したけど、なにげにこの世界に降りたってはじめての人間との会話だったことに少し私は感極まった。


先の運転士に幸あれ。


私は終点まであと一息の路面電車を氷混じりの冷たい雨に打たれながら静かに見送った。


さて、このPIA駅は私の今回の目的地の名前がそのまま使われているわけだ。そう、私はPIAに用がある。さて、ではPIAとはなんなのか、それは停留所を降りた目の前に聳え立つ、立派な建物と行き来する人の格好を見ればわかる。


入口にある立派な門には大きな石にこの国の言葉であるリング語でこう書かれている。


Plume International Academy

プリューム国際アカデミー


そう!学院である!


私は今年から中等部一年生としてお貴族様集まる学院に通い始めるのである!


シーナの感情がここ一番の昂りを見せている。現に口角が情けないほどにあがりきっている事が自分でも分かるほどだった。


シーナはそんな高ぶる気持ちを再び深呼吸で抑え込むようにしながら、堂々と荷物を持って門を潜り、女子寮に向かって歩き始めた。


なんせ異世界の貴族学院ですよ!転移追放復讐系ストーリーに悪役令嬢乙女ゲーム、悪役令嬢転生や俺TUEEEE系転生物語の定番舞台!私が知る限りこういう学院では何かが起こる!そう思えて仕方が無かったのです。そしてここで数年過ごせばなにか一つは楽しいイベントでも起きると思っているんです。


しがないアニヲタ()()()受験生であった私からすれば一度は夢見た世界だったわけです。何回か神様に狂うように『どうか異世界転生で無双できますように!』とお願いしましたけどまさか自分がその神になって自分の願いが叶うとは思ってもいませんでした。


そして何より夢の花園です。美少女同士のイチャコラはアニヲタにとって目の保養。私は今女神様であり、見ぬ者ですら目を引く程の美貌を持った少女なわけで、合法的に女子達の着替えや日本のクラスでよく見る女子同士の過度なスキンシップなどを堪能出来るわけです。


なんなら覗きを食らって「キャーッ〇〇さんのエッチー!!」なんて悲鳴を上げることができちゃう側ですからね。


私はすれ違う度に顔を赤くして振り返る人間貴族達に『どうよ!私の美貌に見蕩れたか!人間共よ!アッハッハッハッハー!』と内心他人の目を引く自分の見目麗しさに酔い溺れ、前世の理想の女の子であるクール系美少女を演じるために真顔で何事も無いように女子寮へと歩いて向かった。


この後少し大人ぶった自分自身に恥ずかしくなって顔を赤くしたのはここだけの話である。



-------------------------



私はアカデミーの建物の割に普通の見た目をした寮の扉を開けて中に入る。すると中で使用人さんがお出迎えをしてくれる。そして一人まとった雰囲気の違うお姉さんが前に出て挨拶を始めた。


「お初にお目にかかります、シーナ様。私は使用人取締役のアウラと申します。これから6年間よろしくお願いします。」


アウラさんはスっと頭を下げて微笑みを見せながら顔を上げた。案外こういう完璧メイドさんみたいな人がある事件では黒幕!?なんてこともあるのだよ諸君。


にしても美人。バランスのとれた身体、外見だけでは分からない艶やかな筋肉。


果たしてこの隠れた美しい筋肉は何に使うのかな?


私はアウラと名乗るメイドさんをジロジロと舐めまわすように観察。もちろん本人にバレないように時を止めて。そして30秒くらい観察させて頂いた後に自分は元の体勢に戻り時間を流す。


「はじめまして。シーナ=ホープスと申します。こちらこそこれからよろしくお願いします。」


まるで先の30秒はそもそも存在していなかったかのように、アウラさんはなんの疑問も抱かずに私の挨拶を笑顔で受け取る。


アウラさんの無言の笑みが果たしてどういう感情を意味するのか…


前世では貴族マナーなど知る由もなかったので、ただただ日本人が普通に使う丁寧語みたいな挨拶みたく、取って付けたような仮初の淑女だったので少し無礼をしていないか心配だったのだが、そのままアウラさんは私に背を向けて部屋の鍵を取り出し始めたので問題は無いようだ。


一応ここでの言葉遣いのレベルは平民の方々が日本で俗に言うタメ語。貴族は会社や目上の人に使うレベルの敬語だ。仰々し過ぎるものでは無いらしい。


これは予め調べておいた情報だ。間違っていたりしたらどうなるかと心配だったのだが何とかこの場を耐えきった。


表面上は余裕を取り繕っていたものの、はじめての淑女に内心胸が張り裂けそうな思いだ。


「では、お部屋までご案内いたします。」


アウラさんはそういうとコンコースを出て少し奥に行ったところにある階段を上り、東西に貫く廊下の南側かつ一番西にある角部屋まで案内してくれた。


「こちらが鍵になります。大切に扱っていただければ幸いです。」


「ありがとうございます。」


部屋の鍵をアウラさんが私に渡してくれたので私はよろこんでその鍵を頂き、ドアの鍵穴に差し込み手首を捻る。


すると重い感触を伝って、中で金属が弾けるような感触と共に「ガチャッ」と解錠された証である音が廊下に一度響く。


スーツと音もなく開く大きなドアを開けると開放感のある明るくて広々とした部屋が視界いっぱいに広がっていた。


日当たりもよく、日本の学校の教室並の広さがある立派なお部屋に案内されてついつい「わぁ...」と感嘆の声を漏らしてしまう。だってベッドもよくある屋根とカーテン付きのやつなんです。


それも一人で寝るには勿体ないくらい広い。何度寝返りを打っても落ちることの無い素晴らしい極上のもの。布の質も起毛仕上げとなっており手触りも非常によろしく低反発なクッション性能は体全体を包み込んでくれそうであった。


「ここは女子寮の中でも最上級の部屋なのです。王家の方々も利用されていた事があるお部屋になりますので、シーナ様も六年間苦なく寛げる間となって下さるる事でしょう。それでは、何か要件がございましたらなんなりとお申し付けください。失礼します。」


アウラさんは頭を深々と下げて物音一つ立てずにドアを閉めて元のエントランスの方に戻って行った。私はアウラさんの足音が止んだところでドアに鍵を閉めて部屋のカーテンを締め切り、ベッドに「わーっ!」とダイブした。


予想通り低反発なマットレスは体全体を包み込みストレスひとつ感じさせない強情の質感であった。


「あ〜……」


ついついこうして情けない声が漏れてしまうほどに。


私は誰も見ていないことをいいことに本来の姿に変身を解く。変身を解く理由は単純で疲れるから。


なんせ人間だった時は何も思わなかったけど、神様になってから人間の姿になるとなんというか、重い。筋肉痛になる前兆、あのなんとも力が入らなかったり思ったように体が動かないあの感覚がするのだ。例えるなら目がいい人が友達にメガネを貸してもらってつけたらぼや〜っとするようなかんじ、耳も水の中に入ったような、そんな全身のスペックが一気に落とされたような感覚がして精神的に疲れるのだ。


ハイスペックスマートフォンを使ってた人が会社の低スペックスマートフォンを使って動作の重さにイラついているのと同じイメージですね。


私は布団でバタバタするのをやめて、部屋に置かれた大きな鏡の前に立った。それを見れば私が人間では無いということが嫌ほどわかる。


白髪とは違う絹のような白い輝きを持つ上品な髪、肌も白く、触られたら触った指に沿ってそのまま溶けてしまうのではないかと思えるほどの艶。遠目で見れば蝶に見える、こんなに要らないだろと思えるほどの羽、なんの意味があるねんって感じの頭上のリング、顔はのっぺらぼう……という訳では無いが口と鼻は若干形づくっているだけで鼻の穴は無いし、口も開いていない。目もしっかりと形作っているが瞳や眼球という概念とは違いひかりの輪が浮かび上がっているだけ。


服なんか着てるはずもなく、全身白くて体のラインだけが浮き出ている。足の指なんかは無い。腕や脚には移籍にある石版のような光るラインが入っているし、どっからどう見ても人間では無い。


あ、私はまだ13歳なんだから男の憧れである果実はまだ未成熟だから!やっと実がつき始めたくらい。でも母様曰く私は母様みたくナイスバディになれるらしいから心配はしていない!


「んっふふーん!」


我ながら完璧な容姿だ!と鏡の前でポージングを取っていたら、コンコンと扉が叩かれて「ひぅっ!?」という情けない声が漏れてしまう。


「は〜い」と言って私は翼とリングを消して人間の姿を形作りドアに向かう。


ドアを開けると、これまた絶世と呼べる程の美少女が現れた。『わ〜...可愛い子...』という心の声がつい漏れてしまいそうになるほどだ。いかにもお貴族様っぽい、身体のセンターラインに針金でも埋まってるんか!?と思うほど真っ直ぐ伸た安定感のある立ち姿に『この子も淑女教育的なやつを頑張ってきたんだろうなぁ...』と感心してると、その子はオドオドとした声で挨拶をしてくれた。


「ぁ...あの...はじめ...まして..ですわ..わ、わたくし!サンバルド公爵家次女、レイナ=アーラ=サンバルドと申しますわ!お隣の部屋で同じ新入生とお聞きしてご挨拶に参りましたわ!」


と、途中から綺麗なカーテシーとは似合わない勇気ある挨拶になってしまっているが、この子はレイナというらしい。ですわ口調の金髪碧眼縦ロール公爵家娘といういかにもな悪役令嬢素質のある子だが、この緊張ガチガチの挨拶を見てしまうと金髪縦ロールがいかにもな日本人の偏見であることを思い知らされる。


「私はシーナ=ホープスです。恐らく聞いたことは無いと思いますが、ホープス家というここから遠く離れた島国の貴族の子と思っていただければ幸いです。」


これは予め考えていた私の設定。


この世界は国家間交流も限られた者しかしてこなかったので他国の情報には薄い。特に遠い国ともなれば尚更である。


「なるほど、他国の子なのですのね!どうりで見ない髪色だなと思いましたわ!」


興奮気味かつ少しづつ顔を近づけてくるレイナさんに、つい心の中で『お、おう、』という声が漏れる。そしてレイナさんは目をキラキラと輝かせて私を見る。


「え、ええ、私の国ではこういう髪色が多いんです。」


……嘘ではない。天界は母様も父様も幼なじみも皆同じような髪色をしている。


「へ〜!そうなのですね!皆シーナさんみたく、とびきりの美少女なんですの!?キラキラしたお姫様や王子様みたいな人が沢山いるんですの!?行ってみたいですわ!!」


「え、えぇ、まあ、どうでしょう...私はそこが日常でしたので実際どうかは...」


「まぁ、そうなのですね!帰省の際は是非私をお誘い下さいまし!!」


「えぇ、まぁ、かなり遠いので学院にいるうちに帰れるかは分かりませんが...」


どうやらレイナはかなり好奇心旺盛な子のようだ。話してる時質問ひとつする度に踏み込んでいたもん。でもまあそれがまた年相応の女の子って感じがして可愛いとも思った。興奮すると自分でも止められなくなるタイプの子だね。うんうん。いるよね、そういう子。


私も前世で中学校の時友達とアニメの話をしてたら勝手に話に割り込まれてどーでもいい推し語りを興奮気味に、テレビ局のアナウンサー並の呂律でされたことがあったものです。


このままだと永遠と話が終わらなそうなので、とりあえず既に部屋も片付いてることですし、室内に入って席に着いてもらい、お茶を出した。


「そういえばシーナさんはこの国は初めてなのでして?」


「ええ。今日が初めてです。」


それなら!とレイナは勢いよく立ち上がって、


「わたくしがシーナさんにこの国と街を案内してあげますわ!」


「えっ!?ちょっ!?...」


と、レイナは私の手を取ってさささっと女子寮の外に出た。外は大雨じゃないの?なんて思っていたけど、どうやら父様も泣き止んだらしく、空には見事な夕陽がかかっていた。父様はどうやら母様に慰め...いえ、甘えさせてもらっているらしい。


石畳の地面に残った雨水が夕日を反射させて幻想的な世界が広がっているところを私はレイナの手に引っ張られながら駆けていく。


そういえばレイナって日本人っぽい名前だよね。あとこういう名前のキャラ、アニメでいたよな〜。なんてアニメだっけ...まあいいか!


私は『楽しい学院生活が送れますように!』とお祈りをした。


神だけど。




小説家になろう初の投稿です!誤字脱字もあることかと思いますが、温かく見守っていただけたらと思います。


この作品面白いなと思いましたら是非"いいね"や下の☆、ブックマークの追加などなどよろしくお願いします!


それでは失礼しました。

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