森奥で採掘を
ようやく目的地へと。
この洞窟は親父が見付け、それを知らされた爺ちゃん経由にて知った、我が家秘伝の坑道だ。
ってもな、我が村で、ここまで来られるのは、爺ちゃんが死んだ今では俺だけだろう。
この度の道中では、矢鱈滅多、晶獣が襲い掛かって来たが、この度が異常としても危険な獣が徘徊している地だ。
それなりの技量を得ぬものが立ち入れば、生きて帰れないだろうよ。
洞窟奥へと分け入り鉱石が採掘可能な場所へと。
荷車からピッケルを取り出し採掘を始める。
この鉱石は樹木が石化したような形をしており、採掘した鉱石には年輪も存在する。
学者が発表した論文では、空島に存在する木々が鉱石を形成する物質を取り込み、凝縮したものらしいな。
浮遊能力を有しており、木々がその成分へ干渉し浮力を得ることで、空島を浮かばせているのだとか。
ただ成分を取り込む際に不純物も取り込むらしく、それにより、徐々に浮力を失い空島落下の原因となるらしい。
まぁ今1番有力とされている仮説なわけだ。
こうして採掘しているとな、埋まった木々を砕きつつ得ている感じなので、納得ではある。
そして得た鉱石を製錬して、浮遊成分のみを抽出しインゴットにすると、軽くて硬い堅牢な金属にな。
しかも晶術師が制御すれば浮かぶため、村では『フィラティア』と呼ばれてるぞ。
まぁ、我が村ではだが。
1日で採掘できる量には限りがあるため、再び採掘に来ることになるだろうが、なるべく多くの『フィラティア』鉱石を採掘するべきだろう。
なにせ、親方の息子夫婦と弟子が戻って来ているため、人手は十分だからな。
村に在る荷車が使えたら良かったんだが、全て人が牽く形で造られており、流用が厳しい。
短距離ならば別だが、領都まで馬に牽かせれば途中で破損するだろう。
台車を鋳溶かしインゴットへ戻せば良いんじゃないかと考えたんだが…親方が言うにはな。
「鋳溶かした場合、かなり脆くなるでな。
再利用なんぞ無理じゃて」
ってことらしい。
っかな、実際に鋳溶かしてインゴットへ戻したことがあるらしいぞ。
脆くて使い物にならなかったそうだ。
それもあり、新たに荷台を造るには鉱石採掘が欠かせないっと言うわけだ。
朝に洞窟へ辿り着いて、昼を洞窟で摂り、午後も限界まで採掘。
限界までっと言っても、日が暮れる前には村に着きたい。
流石に夜の森を移動するのは、ごめんだ。
暗闇に潜んだ猛獣を察知するのは困難。
知らない間に忍び寄って来た猛獣に襲われたら…
うん、経験済みです。
九死に一生を得ました。
虎の子の雷晶石を失い、何とか生き延びた訳だが…代わりに晶猛獣から高純度の風晶石が手に入ったりな。
ちと複雑な気分になったりしたが、生き延びられたので、まぁ、良かったと言えるだろうさ。
そんな経験を、またするのは御免なわけで…日暮れまでには村へな。
急ピッチにて採掘を続け、荷台へ採掘した鉱石を。
「うん、狩った晶獣が邪魔!」
鉱石を載せ難いため、晶獣を降ろして鉱石を載せる訳だが…
「これ以上は、狩った晶獣を破棄せざるをえんか…」
俺は狩人だ、鉱夫ではない。
鉱石を優先して狩った獲物を放置するなど有り得ないだろうさ。
「しかたねぇ。
今日は、ここまでにするか」
後ろ頭を掻き掻き、採掘を諦めることに。
鉱石を積んだ荷車へ降ろしていた晶獣を積み込み、洞窟を後にな。
しばらく進むと、また晶猛獣が樹上から襲い掛かって来た。
頻発し過ぎだろがっ!
咄嗟に避けたため、俺には被害はない。
素早く反撃し討伐した訳だが…荷台に破損がな。
晶石が取り付けられていたんだが、その晶石が剥がれてしまっていた。
これは荷車へ浮かす力を流し易くなるようにとのことでな、確かに荷車を浮かす際の制御がし易くなったんだわ。
まぁ無くとも問題ないがな。
ただ…この晶石が荷台から剥がれ落ちた後からは、晶獣の襲撃が絶えてな。
これが原因じゃないかと思えるんだが…どうだろう?