表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘境の森林にて  作者: 秘境の狩人
4/6

転機…って言われても…

何時ものように目が覚める。

日の出前の暁闇(ぎょうあん)時だが、辺りは見渡せるな。


先ずは爺ちゃんの様子を見に行くか。

昨夜の食い振りから鑑みるに、体調は安定してるだろうが、歳が歳だしな。


自室を出て爺ちゃんの寝室へと。


「爺ちゃん、おはよ。

 起きてっか?」


まぁ、年寄りの朝は早いから起きてるだろうがな。

その分、寝る時間が早いのだが…


んっ?おかしい…返事がない。

爺ちゃんが寝過ごしたか?

まぁ、たまには、そんなこともあるか…


寝かせておいても良いのだが、様子だけは確認しておくべきだろう。


「爺ちゃん、入るぞ」

そう断りを入れ、板戸を右へスライドさせ中へ。


爺ちゃんは仰向けで寝ており、俺が部屋へ入っても反応しない。

(たまには、こんなことも…な)

などと思いつつ、爺ちゃんの様子をな。


「爺ちゃん?」

ここまで近付いて反応しない?

身動ぎ1つしないんだが…


っか…胸が上下して無くないか?

違和感を感じた俺は、訝しく思いつつ爺ちゃんの口元へ手のひらを。


息して無くね?

慌てて手首を。

脈が…

「い、いや…冗談やろ…

 嘘やん…昨日、あんなに飯を食っとったやん。

 あんな、爺ちゃんさぁ、その冗談、おもろない。

 おもろないかんなっ!

 ええかげん、目ぇ開けぇやぁっ!」


無論、反応しない訳で…

しばらく茫然としていたら、隣に住む伯母が爺ちゃんの世話をしにな。


母方の姉である伯母は、産後の肥立ちが悪く亡くなった母の代わりに俺を育てくれた、育ての親的な存在だ。


親父が狩猟団遠征に随行した後からは、まさに親代わりでな。

結婚を契機に狩猟団を引退した親父が、複数の狩猟団でも難儀する巨獣討伐の助っ人として呼ばれたのは、俺が子供の頃でな。

そして…帰って来なかった…ん、だ…


若い衆を庇ったとか、巨獣討伐に多大な貢献をしたとか…残された俺達からしたら、賛美や勲章なんざぁ、要りゃしねぇ。

親父を返しやがれっ!ってな。


その頃から、さらに伯母には世話になっててな、頭が上がらない存在さね。


そんな伯母が部屋へと。

「声を掛けても反応しないから、どうしたのかと思ってたんだけど…

 あんた、何してんだい?」

そう尋ねて来たんだが…


「ラナ伯母さん…」

茫然とした侭で、振り返る俺に異変を感じたのだろう。


「なんか…あったのかい?

 まさか…」


「爺ちゃんが…爺ちゃんが…」

「父さんが、どう…はっ!まさか…」

反射的に頷くと…


「そう…頑張ったねぇ…

 良く持ったほうさね」

涙声で爺ちゃんの頭を撫でるラナ伯母さん。


「どう言う意味?」

意味が分からず、尋ねるとだ。

生き物として寿命であり、快復する見込みはなかったのだとか。

薬師の婆さんが手を引いたのは、それが分かったかららしい。


「あんたが1人になるからって、なんとか生きるってさ。

 薬師の婆さんがね。

 「良く持ってるもんだ。

  普通なら既にねぇ」

 って言ってたからさ。

 父さん、よっぽど、あんたを1人にしたくなかったんだねぇ」


そんなことがあったんだ…

爺ちゃん…頑張ってたんだ…

「知らなかった…言ってくれたら…」


「そら無理さね。

 父さん、あんたに知られることだけは、避けていたからねぇ」


それからは爺さんの葬儀に追われることになった訳だが…

爺ちゃんって、こんなに慕われてたんだなぁ。


村中から爺ちゃんを悼んで集まってくれたよ。

まぁ、中には通夜の宴に便乗して飲んでた輩もな。


っても、年寄り衆が爺ちゃんを偲んで飲んでは、昔話に花を咲かせる感じだったがな。


そして爺ちゃんの墓は、母さんの隣に。

親父の墓も在るんだが…中は空だ。


巨獣と相討ちに近かったらしいが、身は無事ではなくてな。

体が戻って来ることはなかったかんな。


まぁ形見が代わりに埋まってるんだが、あの世で母さんに会えてれば良いだけどさ。

さて、1人になってしまったし…これから、どうするかねぇ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ