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アルテミスの祈り ~ ギャラクシードール戦役 ~  作者: 磨糠 羽丹王
【旅の始まり】 修練の始まり
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第13話 「ディーグル完成」

 《グランドアース歴九三六年、工業用途の地上工作用ロボットGRWグランド・ウォカーが開発される》

 《グランドアース歴一〇五〇年、宇宙での作業用ロボットSWスペース・ワーカーが実用化され、人類の宇宙開発の速度が飛躍的に向上される》

 《グランドアース歴一〇八五年、秘密裏に開発されていた軍用ロボットが初めて実戦投入される。現在運用されているGWギャラクシー・ウォーカーの名称は、この時に命名された呼称である。更に────》


 自分用の新たな機体を作成する為に、イーリスのデータベースから色々と学んでいる。

 今はグランドアース歴一二六〇年だから、一〇〇年以上前の歴史を学んでいる感じだ。 

 グランドアース歴は、人類発祥の星から宇宙への移民を始めた統一政府の発足した年が始まりらしい。

 様々な宙域で暮らしていると、時間も何もかも分からなくなるという事で、実はその星で使われていた時間の単位や日付が今でも使われている。一日が二四時間で、一ケ月は三〇日、一年は三六〇日だ。

 流石にロボット工学などの内容はとても理解できないけれど、現行の軍用機が採用している技術とか設計思想的な流れを学べば、機体の組上げに何か役に立つかも知れないと思い、歴史を学んでいるのだ。


「イーリス。各経済コロニーの軍用機って、全て独自の技術なの」


『いいえ。多少の技術の差はあるかも知れませんが、機体の基本ベースはグランドアース時代に設計されたものから大きくは変わってはいません』


「じゃあ、どこの軍も同じような強さって事」


『いいえ。基本設計は同じ流れですが、多少の技術の差というものが、圧倒的な差になる事もあります』


「そっか。CAIとか機体の装備とかで変わるよね。アルテミスとシャルーアみたいに」


 アルテミスの操縦するシャルーアの圧倒的な戦闘を思い出した。

 あれが多少の差とは思えないけれど、作業用のSWしか操縦した事がない俺には軍用機の差など良く分からない。

 知識の無さを痛感していた時に、疑問に感じていた事を思い出した。


「イーリス。俺のパイロットレベルの件だけど」


『はい。確認します……どうぞ』


「射撃が『F』っておかしくないかなぁ。あの時アルテミスに撃墜出来なかった敵機を、俺が撃墜したんだよ」


『戦闘データ解析します……確認完了。該当の戦闘はアルテミスによるリオンへの狩り方のプラクティス(練習)です』


「え……」


『当該黒色機体の有人操縦を検出。リオンへのプラクティスの為、戦闘処理速度を極限まで低下』


「……」


『アルテミスの射撃は、有人機体の回避位置をリオンに認識させる為のプラクティスです』


 何だか聞かなきゃ良かったと思った。

 アルテミスに子供の様に手取り足取り手伝って貰っている自分の姿を想像してしまう。

 でもまあ、そんなものか……。


「そう言えば、有人機体ってなに」


『CAIによる単体操縦ではなく、パイロットが搭乗している機体という事です』


「えっ。じゃあ、あの時の敵機は殆どパイロットが搭乗していなかったって事なの?」


『戦闘データ解析します……確認完了。アルテミスの解析では有人機は五機程度。その他はCAIによる単独操縦です』


「そんな……」


 思いもしなかった事実を知らされ悲しくなった。

 もしかしたら、親方達はCAIに殺されたのかも知れない。ただ機械的に何の躊躇ちゅうちょも罪悪感もなく。

 そう思うと、ぶつけようのない怒りが込み上げて来た。


「だ、だったらさあ。全ての機体をCAIが操縦して、CAI同士で殺し合って戦争すればいいじゃないか! 何だよ!」


 悔しくて、思わず人工知能相手に叫んでしまう。

 イーリスからの返事はなく、しばらくしてモニターに文章が浮かんで来た。


 《グランドアース歴一一五〇年、SW開発一〇〇周年記念式典において、CAI操縦によるGW機が一斉暴走。セントラルコロニー首脳部及び式典来賓合わせて二〇〇名が死亡》

 《グランドアース歴一一五一年、パナフィックコロニー軍所属のCAI部隊が一斉にコントロール不能になり暴走。二基の居住用大型コロニーが破壊され、民間人約二〇〇万人が死亡。他コロニー軍によるサイバー攻撃と認定。この事件以降、CAIの単独行動は制限される事となる》


『現行の軍用GW部隊の運用には、必ずパイロットが搭乗した指揮機が存在します。万が一CAIが敵に取り込まれた場合や、何らかの理由で暴走した場合に破壊処分する上位権限を有した機体です』


「過去にそんな事が……。ごめん。もっと学んで良いパイロットを目指すよ」




 それから、イーリスに大半を設計して貰いながら、俺が乗っていたSWを解体し、拾い集めた部品を使いGW 紛いの機体が完成した。

 軍用GWと同じ人型の機体。高さも同じくらいで、俺の背丈の五倍くらいだ。シャルーアと並べると肩ぐらいの高さになる。

 頭部は敵対した機体と同じになると嫌だと思っていたら、イーリスが良い感じに作り変えてくれた。

 ゲームで見かける様な、古代の戦士が被っていた兜を横広にした形で、目の部分にはハーフミラーのゴーグル状のパネルがめ込まれている。

 装甲は厚めで、コクピットを守る胸部から腹部にかけては、かなりガッシリとていて、その厚みのまま脚部と本体との接合部を守る装甲に繋がっている。

 腕や脚部などの可動部を覆う箇所にもしっかりとガード装甲が施され、一番の特徴は脚部の膝から下がスカート状に大きく広がっている事だ。

 今まで乗っていたSWの細い三本指のものとは違い、太い腕部の先に人の手と同じ様なしっかりとした五本指のマニピュレーターが付いている。

 真っ白で美しい甲冑をまとったスラリとしたシャルーアと比べると、筋骨隆々で斧を振り回す戦士の様にガッシリとしていて、全体的にずんぐりむっくり。そんなに格好の良い機体じゃないかも知れないけれど、見掛けはかなり強そうだ。


 この機体は、理由は詳しく教えて貰えなかったけれど、アルテミスからの指示で重力下における近接戦闘を重視して設計されているらしい。

 だから、宇宙空間では姿勢制御に一番大切なスラスターの類が最小に抑えられていて、どちらかというとホバリングやジャンプに使用するブースター類の装備が多い。脚部の膝から下がスカート状に大きく広がっているのも、その機構のせいだ。

 ただ、ホバリングやジャンプと言われても、ゲームの世界では知っているけれど、実機での操縦は経験がないから完全に未知の世界だ。どんな操縦感覚なのか見当もつかない。


 出来上がった機体は、材料に使用した元のGWの色を隠すために塗装されている。

 イーリスにはシャルーア用の白と黒の塗料しかないらしくて、機体色は薄いグレーだ。ちょっと地味だけれど仕方がない。  

 機体の名称は好きに付けて良いと言われたから、ゲームで昔から使っている名称にした。

 このGW紛いの機体の名前は『ディーグル』。グランドアース歴の遥か昔の時代にあった銃器の名前らしい。


「よろしくな、ディーグル!」


ここまで読んで頂きありがとうございます!


「面白そうなSFを描けているのだろうか?」という不安に苛まれながら、執筆を続けています。


もし「面白そうだ」「続けて読んでも良いよ」と思って頂けたら、


☆評価やブックマークを頂けると、とても嬉しいです^^


これからも、引き続き、宜しくおねがいします。



一言でも構いません、感想など頂けたら、作者が安心して執筆を頑張ります!


磨糠まぬか 羽丹王はにお

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― 新着の感想 ―
[良い点] 次々に起こる事件。 ハラハラとしながら第13話まで読み終えました。 今後、明らかになっていくであろうアルテミスの謎や、リオンの成長がとても楽しみです! とてもとても面白いSFでした。
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