異世界へ(5)
蓮side
恐る恐る目を開く
「ようこそ」
ソルさんの声で顔を上げると、目の前には大きな城が
「ジュノ国へ」
城へ入り、ソルさんについていきながら辺りを見渡す
騒がれるかと思ったが、警備してる人自体がいねぇ
城の中も、まるで人払いをしてるみてぇだ
そうしてる内にある部屋の前まで来る
「では皆様、ここが国王への謁見室です」
ギィ…と扉が開き、進むと
奥に国王らしき人が
「国王、シオリ様のご家族を連れて参りました」
「うむ、ご苦労」
ソルさんは脇に移動し、国王と目を合わせてるのは栞
「決まったのか?」
「はい」
「ふむ、ならば親として挨拶せねばのぅ」
国王は栞から視線を外し
「ワシはこのジュノ国の王、ザキロと申す。其方達の名を聞いてもいいかの?」
「私は栞の父、桜井 幸。隣は妻の初」
「初めまして、初と申します」
「息子の楼です」
「次男の蓮です」
「栞の弟、紫音です」
「ふむ。さて、シオリとソルからは話は伺っておりますかな?」
「はい」
「では、単刀直入に申そう。シオリと共にこちらに住う者はいるかの?」
国王の言葉に俺と紫音は目を合わせ、国王と目を合わせる
「「俺達が」」
「レンとシオン、シオンはシオリの弟じゃったな。
レン、お主はシオリとどの様な関係じゃ?」
「俺は…」
俺はシオリに向き
「俺は、栞の夫です」
「…ほう」
国王は栞に目を合わせ
「シオリ、誠か?」
「はい」
「…そうか。ではレン」
国王は真剣な表情で俺と目を合わせ
「シオリを、頼むぞ」
「はい」
国王はニコッと笑顔になり
「さて、他に何かあるかの?」
「ザキロ殿」
「何じゃ、ロウ殿」
「栞達がこちらに住む条件として、不定期でもこっちの世界に戻る
これを認めて頂きたい」
「心配無い、その案はシオリから既に提示されておる
時期さえ考慮すれば、構わん」
「そうですか、なら俺からはもう何もありません」
親父と母さんがザキロ王と目を合わせる
「正直、今でもこの事態に困惑してる
だが、栞が自分で決めた以上、親として何も言う事は無い」
「私も同意見です
…ですが、栞は女の子です
そして今まで沢山の苦しい思いをしてきました
出来る限り、この子がもう危険な目に合わない様に配慮して頂けませんか?」
「…ワシも親として可能な限りの事は致す。勿論レンとシオンも
今後、シオリには何かと助けを求めるが
其方達の思い…心に留めておく」
「では、私達の娘と息子達を」
「宜しくお願いします」
「俺達も」
「これからお世話になります」
「ふむ、宜しく頼む」
「では、レンとシオンの部屋を用意せねばな
そちらの世界で色々と片付ける事があろう、落ち着いてから来なさい」
「「はい」」
俺達が部屋を後にする中、栞はソルさんと話してる
「ありがと、ソル」
「いえ、お帰りをお待ちしています」
栞が側に来る
ソルさんが不安な表情だ
「ソルさんと何話してたんだ?」
「世界を移動する力の使い方」
「…え?」
「さ、行こ」
城の誰も居ない部屋で、俺達の視線は栞に向いてる
栞は目を瞑り、集中してる
「すぅ…はぁ…、予め言っとくね
もしかしたら副作用で全員意識を失うかもしれない
でも、確実に家には戻るから」
皆、頷きで返事を返す
「じゃ、やるよ」
栞の左目にペンタクルが浮かび、ソルさんの時と同じ様に足元が光り始める
光がカッ!と一瞬強くなり、眩しくて目を瞑ると
「戻ったよ」
目を開ければ、広間に立ってる
見渡すと酒向がポカン…と俺達を見てる
「も、もう…、戻られたんですか?」
「ああ。酒向、あれからどれ位経ってる」
「いや…あの、今行かれたばかりですよ?」
周りも同じ反応だ
栞はソルさんと同じ様に出来たって訳か
「上手くいったな、栞」
栞に振り向くが、居ない
「…え?」
見渡しても、居ない
「? 栞と紫音はどうした?」
兄貴も気付いた
まさか、2人だけ戻れなかったとかはないよな?
焦り始める頭で、何とか気配を探ると
元の栞の部屋に2人の気配が
「蓮!?」
急いで部屋に向かうと襖が開きっぱなしだ
「栞!紫音!?」
「シー…」
紫音の腕の中には栞が
思わず駆け寄るが、あくまで声を小さくし
「栞? 紫音、どうしたんだ?」
「大丈夫、疲れただけ」
紫音side
元の世界に戻れた直後
部屋を見渡す蓮達を他所に姉さんが凭れ掛かってくる
「!?ね「…静かに」」
「…気付かれない様に、元の私の…部屋まで…」
「わ、分かった」
部屋に戻り、姉さんを自分に凭れさせながら座り込む
姉さんは目を瞑って、怠そうだ
「姉さん?」
「大丈夫。言ったでしょ、意識を失うかもって
でも眠いだけだし、私だけで良かった」
「良くはないけど、休んでれば大丈夫?」
「うん。後、蓮が来ると思うから説明よろしくね」
「分かった、ゆっくり休んで」
「ありがと…」
姉さんはクタ…と俺に凭れ、眠りについた
「…お疲れ様」
姉さんが何で特別な力を持ってるのか
何で俺達の目は、違うのか
今まで悩んでたのが思わぬ形で解決した
これからきっと、もっと大変な事になりそうだけど
「何があっても、離れないよ」
ドタドタッと足音が
さてと、蓮に説明しなきゃな
蓮side
栞が眠りについてから数時間
俺と紫音は、荷造りを終えるとこだ
この時ばかりは組に入ってなくて良かったと思う
引き継ぎが必要なモノは無ぇし、元々自由に生きる選択があった
紫音も何の柵も無い
元々やる事が決まったら3人で出て行くつもりだったしな
ちなみに栞の荷造りは母さんがしてくれてる
っつっても、栞は物欲が無ぇから身だしなみを整える物位しか無い
服をどうするか迷ってるが
ソルさんや国王の服装を思い出す限り、何かこう…中世ヨーロッパみたいな感じだ
…持っていかない方がいいか?
「蓮、栞の荷物纏まったわよ」
「おう、サンキュ」
「俺も用意出来たよ」
「おう」
「あっ、姉さんが目を覚ましたみたい」
「? 分かるのか?」
「何となくね、弟の直感?」
紫音がニヤ…と口角を上げて栞が寝てる部屋へ
…何かムカつく
栞が目を覚まし、荷造りも出来た
「栞」
「蓮、心配掛けてゴメンね」
「焦ったけど、紫音に聞いたから。気にすんな
それとな?」
「ん?」
「今日の夜、宴会を開く
これからはなかなか会えなくなるんだし、ちゃんと話しておきたいだろ?」
「そうだね、…うん」
「よし、俺は朔や春也に連絡しとく」
「紫音も挨拶しとく奴がいれば連絡しとけよ」
「うん」
「栞は、体休めとけ。
またお前に力使ってもらわないと、あっちには行けねぇんだし」
「ん、分かった」
「じゃ、後でな」
その夜
盛大な宴会が行われた
和士と正や奈緒さん、美弥も来てくれてる
お酒が入る前に異世界の事、私の事を話したら
ポカン…とフリーズしたり驚かれたり
あっちで暮らすって言ったら、美弥に泣かれちゃった
たまに戻ってくるのを話すと
「その時は絶対に会いに来てよね!」
泣きながら笑顔で言ってくれた
正や奈緒さんも、泣きそうな笑顔だ
蓮side
美弥が栞に泣きつくのを見てると
「今日急に来てくれなんて言うから何事かと思ったら、予想以上の展開ですね」
「そうだよ!俺なんか頭ん中パンクしそうだぜ!?」
朔と春也
「俺達だって、未だに困惑してる」
紫音
「でも、これで栞さんの特別な力の謎が解けましたね」
「いや、俺今でもよく分かってねぇんだけど…」
「…たまには戻ってくるんですよね?」
「おいっ!?俺の発言無視!?」
「ああ、そういう条件だ」
「蓮まで!?」
「流石にこんな話だから、皆にちゃんと挨拶して行こうってなったんだ」
「……紫音まで」
春也が隅でキノコ栽培を始めた
「ま、そういう訳だから」
「…ふぅ。蓮と紫音、栞さんが決めたんなら何も言いません
ほら春也、言う事があるでしょう」
「そうだな、よし…2人共」
「「行ってらっしゃい!元気で!!」」
紫音と目を合わせ
「「おう!!」」
蓮達は問題無さそう
「栞」
呼ぶ方に顔を向けると、お父さんとお母さん、楼に和士、春も
「栞、お前が決めたんなら、俺達は何も言わない」
「うん」
「ただね、体に気を付けて。
力も…必要とされてるのは分かってるんだけど、あんまり無理しちゃ駄目よ?」
「うん、大丈夫だよ」
「ちゃんと連絡をくれれば、それで良い」
「なかなか会えなくなるが、俺達は何があっても、お前の兄貴だ
何かあったら、遠慮無く頼れ」
「うん、ありがとう。楼、和士」
「栞さん、自分で良ければいつでも力になりますので!」
「ありがと、春」
全員と話し、落ち着いた頃
「そろそろ、行こうか」
「おう(うん)」
蓮と紫音が私と手を繋ぎ、皆を見渡す
「「「行ってきます」」」
「「「「行ってらっしゃい!」」」」
私は目を瞑って集中する
足下が光り始めるのが分かる
よし
《マタスタシス(転移)》
酒向side
栞さん達が消えた後、そこら中で啜り泣く音が
元々、3人のやりたい事が決まったら、この家を出るのは決まってた
こんな急な話が無くても
…でも、やっぱり寂しいな
「また、会えるのを待ってますよ」
新たな道を進む彼等に、どうか素晴らしい未来が待ってます様に




