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新たな家族


「…、!」

「この!…っ!」


自分に降り掛かる罵声と、容赦無く痛め付けられる体

何でこんな事になってるか…、仕事が失敗したからだ

まあ仕事が上手くいっても、コイツの機嫌が悪ければ八つ当たりされる

こんな事が俺にとっては当たり前の日常で

こんな奴等でも、いないと俺が生きていけない

だから今日も、いつ終わるか分からない暴力に耐えないといけない


「ったく、あぁ〜っ!!苛つくぜ。おいクソガキ、今日が何の日か分かってるよな?

 さっさと取ってこい」


奴…ドグはそれだけ言うと、目の前から消える

あぁ、やっと終わった

体中に走る痛みを我慢して、ゆっくりと起き上がる

奴の所為で汚れた服、…いや、元から汚れてるか

軽く叩いて、側にある桶の溜まってる水に顔を映す

泥だらけ、殴られたから頬が赤い…、口から血も出てる


「…俺は……、」


俺はいつまで、

ギリッ…と歯を噛み締める

水を飲んで喉を潤すが、俺にはこれだけじゃ足りない

こんなただの水じゃ…っ

早く取ってきて、ドグにアレを貰わないと

アイツに投げ捨てられた布を頭から被り、外に出る

周りを見渡せば、能天気に目の前を歩く人間共


「…ッチ」


俺がこんな思いしてんのに…、お前等はっ…!

ドクンッ!


「…っ、…ぅ…」


怪我とは別の痛みが体に走る


「くそっ…」


早く…っ、早く取ってこねぇと…っ!



今日は1日、クエストには行かずにのんびり過ごそうと街中を歩く

ここにも大分慣れてきた


「シオリちゃん!良かったらコレ買ってかない?」


最近では屋台の人に、よく声を掛けられる


「うん、買う」

「はいよ!今日は仕事はお休みかい?」

「うん たまにはゆっくりしようかなって」

「うん!休む事は大事だ!

 あ!そうだ!

 今日入荷したてのとびっきりの果物があるんだけど、どうだい?」

「とびっきり?」

「どんな果物なんですか?」


蓮と紫音が問い掛ける


「コレさぁ!」


オバさんが店頭に出してる果物を指差す


「滅多に市場に出ないんだけどね〜、今年はコイツの育つ条件が良くてね!

 珍しくて思わず大量に仕入れちまってさ!

 でもねぇ、値がはるから、なかなか買ってくれるお客さんがいなくてねぇ

 このままじゃ赤字なんだよ!」


確かに、少し高めかな…

まあお金は稼いでるし、大量に買ってもすぐに皆で食べるし

2人を見るとニコッと頷く


「じゃあ、いくつか」

「良ければ全部持っていきなよ!」

「ぜっ!?」

「全部!?」

「他の客を待って、結局残って腐らせるのも嫌だし

 だったら買ってくれるお客さんに全部売る方が、こっちとしては助かるよ!」


結局、珍しい果物…ネオを全部買った


「毎度〜!」


オバさんに手を振って

3人で紙袋一杯に入ったネオを持って歩く


「そういえば、コレはどんな味がすんだろうな?」

「…」

「勢いで買ったけど、どうなんだろうね」

〔美味だぞ〕


隣を歩くラルフ


「ラルフは食べた事あるんだ」

〔はい ネオは様々な気候条件が合わないと育たない希少なモノなのです

 それをこんなに大量に…、食べるのが楽しみです!〕

「お前、栞の魔力だけを糧にしてるんじゃなかったか?」

〔それだけしか要らぬ訳ではない

 主と繋がりを持つ前には、果実を食して生きていたのだからな〕

「丁度昼だし、どこかで食べよっか」



?side

ドグに取ってこいと言われたのは、今日入荷する珍しい果物…ネオだ

市場ではただの高級品としてしか扱われないが

闇市では、ある特性を理由に破格の値段で取引される

今夜その取引があるから、絶対に手に入れなきゃいけない

でなきゃ今度こそ…っ


市場の中でも一番多くの果物を扱う店に行き

遠くから様子を見ると


「!?」


店頭に出されてる筈のネオが一個も無い


「…っ、何で…」


店の前に出れば


「いらっしゃい」

「オバさん!今日はあのネオが出てる筈だろ!?」

「アレはもう売り切れたよ」

「なっ…、確か大量に仕入れたんだろ!?

 あんな高いのすぐに売れるかよっ!?」

「それが売れたのさぁ、すまないねぇ

 でも何で大量に仕入れたのを知ってんだい?」

「!…、それは…」


下手な事を言う前に急いでその場から離れる


「クソ…ッ、クソッ!」


まさか一個も無いなんてっ…!

事前にドグの仲間が、あの店が大量に仕入れたと情報を掴んでた

そん中から幾つか盗ってもどうせバレねぇ

だからすぐに終わらせて、アレを貰う筈だったのに…っ!

走りながら周囲を見渡し、ネオを買った奴を探す

ドクンッ…ドクンッ…!

体に痛みが走る

早く…っ、早く見つけねぇと!

市場を抜け、色んな場所を行く中

人気の無い休憩所に、3人

男が2人と、狼?の仮面を付けてフードを被ってる…女か?

茂みに隠れ、様子を見ると

奴等の手にはネオが


「! アイツ等か…!」


腰に付けてる短剣を抜くと


「おい さっさと出てこい」

「!?」


ば…っ、バレてる!?

クソッ!しょうがねぇっ!

短剣を握り締めて茂みから出る



紫音side

人気の無い休憩所に行き、ネオを袋から取り出すと


「…」

「姉さん?」


姉さんがどこかに意識を向けてる

蓮を見れば、横目で茂みを見てる

集中すると、確かに…、小さい気配が1つ

しかも…、こっちに敵意を向けてる


「おい さっさと出てこい」


すると、茂みから短剣を持つ子供が

布で顔を隠してるけど、全身がボロボロで少し震えてる


「何の用だ?」


子供は震えながらも、ジリ…ジリ…と近付いてくる


「…れを、寄越せ」

「あ?」

「ソレをっ…、ネオを寄越せ!」


剣で脅す程、コレは珍しいモノなのか?


「…別にそんな事しなくても、やるよ」


蓮はネオを持ち、子供の元に

腰を下ろし、ネオを差し出す


「ほら」


子供はソレをおずおずと受け取ろうとするが、手をギュッと握り


「1個じゃ駄目だ」

「あ?」

「大量にいるんだ!じゃないと奴に殺される!」

「「!?」」

「…」


子供はハッと口を手で塞ぐ


「おい、どういう事だ」


子供は震える手で、また剣を蓮に向ける


「うっ…煩い!いいからもっと寄越せっ!!」


その時、ブワッと強風が

子供が被ってる布が宙に舞う


「「「!?」」」


人間じゃない

青い髪に黄色の目、魚のヒレみたいな耳

顔の所々に鱗が

この子は…


「お前、魚人か?」


俺達はジュノで学んだ

この世界に、どんな種族がいるのかを

魚人族は基本、海の中で生活してる

地上でも生きれるけど、それには必要不可欠なモノがある

水に自分の魔力を注いで出来る、魔水(ますい)

他人が作ったモノでもいいらしいけど、効果は半減するらしい…

だから、本当ならソレを自力で作れる様にしてから地上に出てくる筈

なのに、子供が地上にいるなんて

見た目は10歳位か

さっきの言葉と、身なりを考えると…


「人身売買…」


姉さんがボソッと呟く

蓮が振り向き


「どうする?」

「…」


姉さんは少し考えてから子供に近寄る

子供は姉さんを睨み付けるが姉さんは構わず腰を下ろして、目線を合わせる


「私はシオリ、君の名前は?」

「な、まえ…?」

「うん 名前、教えてくれる?」


子供は目を伏せる


「何で、そんな事聞くんだよ…」

「君の事が知りたいから」


子供がゆっくりと顔を上げる


「知りたい?」

「うん」

「俺の事を?」

「そう」

「…、」


子供は口をキュッと結び


「…カイ」

「カイ、よろしくね」

「…うん」

「俺は蓮だ」

「俺は紫音だよ」

「…レン、…シオン」

〔我はラルフだ〕


姉さんの横にラルフが


「犬?…可愛い」


カイがラルフに手を伸ばす


〔違うぞ〕

「え…っ」


ビクッとカイが驚いて手を引っ込める


〔我は狼神族…神獣だ〕

「ろう、じん…ぞく?…神獣!?」

「違うのは犬じゃなくて、狼って事」

「狼…、神獣なんて、初めて見た…」

〔ほれ、フサフサだぞ?〕


ラルフが尻尾をフリフリとカイの頬に摩る


「フフッ、擽ったい」

「やっと笑ったな、お前」

「え…?」

「カイ、私達にはもっと家族がいるの

 紹介したいけど、今は時間が無いみたい」

「家族? …時間、…っ、そうだ!俺には時間が無ぇんだよ!」

「そうだよ、このクソガキがぁっ!!」

「!?」



カイside

シオリ達と話してたら

いつの間にかドグの仲間…ダーガ達に囲まれてる…っ


「全然戻ってこねぇと思ったら、何楽しそうにしてんだよ?

 ドグが待ち侘びてんぞぉ!?」


怒声で体が震える


「あ…っ、ごめん…なさ…」

「今更謝ったって意味無ぇよぉ!?

 俺達はお前を始末しに来たんだからなぁ!!」

「!? し、始末って…っ」

「決まってんだろぉ!?お前を「それ以上」」

「あ?」


シオリが俺を背に庇う

ラルフが横にいてくれて、レンとシオンも俺を囲う様に動く


「それ以上、この子に向かって喋るな」

「あ?テメェは何なんだよ!?関係無ぇ奴は引っ込んでろぉ!!」


ダーガ達が一斉に魔法を放つ


「!?」

「大丈夫」


見上げればシオリは振り向いてて

ドンッ!と魔法が俺達に当たる直前に弾けて消えた


「…え」


今、一体何が…


「テメッ!何しやがった!?」


シオリはダーガに顔を向け


「防御したから弾いて消えただけだ、そんなのも分かんないのか」

「っんだとこのヤロォッ!!」

「蓮、紫音、他は任せてもいい?」

「おう」

「勿論」


レンとシオンが凄い早さで周りの奴等を倒してく


「テメェ等ぁっ!」


ダーガがシオリに襲い掛かるが、ピタ…と動きが止まる


「…なっ、テメェッ何しやがった…っ!?」

「動きを止めただけだ、いちいち聞くな」

「んのヤロォ…ッ、おいオメェ等!やれぇ!!」


また茂みから沢山出てきて、一斉に襲ってくる

ラルフにギュッ!としがみつくと

ポン…と優しくて、暖かいモノで頭を撫でられる

顔を上げると

シオリはこんな状況なのに腰を下ろして、俺と目線を合わせ

俺だけに見える様に仮面を外し、ニコッと微笑む

その優しく微笑む表情…綺麗な目から、目が離せない


「…シオリ」

「大丈夫 カイは、私達が護るから」


シオリはダーガに向き直り


「さて、アンタ等の根城を教えてもらおうか」

「誰が言うかよ!」

「ああ、大丈夫。別に言わなくても」

「あ!?」

「もう分かったから」

「なん…っ、だと!?」

「こっちは片付いたぞ」


振り返れば、レンとシオンが傷一つ無く全員倒してる


「コイツ等、警備隊に突き出しとく?」

「そうしよっか」

「ふん…っ!俺達が何したってんだっ!?何の証拠も無ぇんだからなっ!!」

「証拠なら、アンタ等が持ってる」

「あ!?」


すると、ダーガの目から光が無くなる

暴れてる手足がダラン…と力を無くす


「!? シオリ…、何したんだ?」

「《テロメア(生体コントロール)》で、脳の酸素を少なくしたの」

「てろめあ?脳…の、酸素?」


言ってる事はよく分かんねぇけど


「お前等、スゲェんだな…。それに、強い…」

「さてと…」


シオリは俺に目線を向ける


「カイ、私達はこれからコイツ等の根城を潰してくる」

「!? ホントに分かったのかよっ!?」

「うん 私には色んな力があるの」

「色んな…」

「そう でも今は、カイの事ね」

「? 俺の事?」

「私達と出会ってから、ずっと苦しそうにしてるけど

 それは、魔水を飲めてないから…だよね?」

「!? 何で…それを…」

「詳しい話は後で

 今は、カイを治すのが先

 あんな奴等でも今まで一緒にいたって事は、その水を貰ってたからだよね?」

「…ああ」

「カイは、自分で作り出せる方法は知ってる?」

「…知らない

 俺は、物心付いた頃には奴…ドグといて

 知ってんのは自分が魚人族って事と

 魔水が無いと水が無い場所では生きれないって事だけだ

 だから奴等に何されたって逃げれねぇ…

 奴等がいねぇと、俺は生きていけねぇんだ」

「海には逃げれねぇのか?」



蓮side

カイは俺達に背を向けて服を捲る


「「「!?」」」


黒い魔法陣が、背中に


「コレがある限り、海には入れねぇんだ

 …一回逃げようとした時、死ぬんじゃねぇかって位、痛かった

 だから…」


カイが服を下ろそうとした時


「カイ、背中…、触ってもいい?」

「別に、いいけど…」

「ありがとう」


栞の左目にはペンタクルが

すると

バチッバチッ!と魔法陣から黒い電気みたいなのが出て、栞の手を傷付ける


「おい!?何やってんだよ!?」


カイが離れようとするが


「動かないで」


栞の表情に力が入る

そして…、

少しずつ魔法陣が消えていった

ついでに体中の傷も


「はい、もういいよ。ありがと」


カイが慌てて服を整えて振り返る


「何したんだ!?」

「魔法陣を消した」

「…え?」

「これでどこへでも行けるよ」

「…っ、ウソ、だろ?」


栞はニコッと微笑む


「ホント」


カイはポカン…と茫然とする


「でもコレだけじゃダメ、魔水を手に入れないと」

「…アレは、ドグから命令されて成功した時しか貰えないんだ」

「なら、早速行こうか」


栞が立ち上がる


「そのドグって奴のとこに」



紫音side

姉さんがアイツから読み取った、2つの拠点の1つ…ドグって奴がいる方へと向かう

カイは少し辛そうだからラルフに乗って


「なぁ、シオリ」

「ん?」

「どうやって背中の消したんだ?」

「それはね、レノに調べてもらって出来たの」

「…レノ?」


姉さんの隣にレノが出てくる


「!?」

〔初めまして、カイ。私は光の精霊…レノです〕

「…光の、精霊…」

「カイの背中にあった魔法陣は、呪術っていう…悪い魔法だった

 そういうのはレノが一番適してるの」

「そう…なのか、ありがとう」

〔いえ これからもお願いしますね〕

「…おう」

〔我も挨拶しておこうか〕


ゼルファが子竜で出てきた


「!? ドッ…ドラゴンッ!?」

〔人の姿にも変わるぞ?〕


ゼルファが姿を変えると、カイはまたポカン…としてる


〔我はゼルファだ!宜しくな!カイ!〕

「お…、おう。…よろしく」

「「「…っ…」」」


これから敵陣に行くってのに、思わず笑みが溢れる


暫く進むと


「あ…、あそこだ」


カイがある建物を指差す

俺達は物陰に隠れて、様子を伺う


「カイ、これから潰してくるけど

 ここで待ってる?」

「嫌だ!

 シオリ達が俺の為に動いてくれるのに、じっとなんてしてられるか!」


姉さんはクス…と微笑み


「じゃあ、1つ約束してくれる?」

「何だ?」

「私から絶対に離れないで」

「分かった!」

「よし、じゃあ私とラルフで正面から行く

 蓮と紫音は裏口から攻めて」

「「了解」」



カイside

レンとシオンは裏口に行った

俺とシオリ、ラルフは正面から

ゼルファは


「我が出るまでもないな」


そう言って、シオリの中に入った


「そういえば、私は舐められやすいんだっけ…。ラルフ」

〔はい〕

「下手に動かれない様に威嚇を」

〔承知しました。カイ〕

「何?」

〔我が大きくなっても驚くなよ?〕

「わ、分かった」


シオリに続いて入ると


「何の用だぁ?嬢ちゃん?」


ドグと他の奴等が武器を持って警戒する


「あ?犬に乗ってんのはクソガキじゃねぇか?

 おいっ!そこで何やってんだっ!?」


怖くなってラルフの毛をギュッと持つと

グググ…とラルフがどんどん大きくなる


「…っな…!?デカくなりやがった!?」


ドグ達はラルフに怯えて下がっていく

すると


「ギャアッ!」

「何だテメェ等っ!?」


奥から叫び声が

ドグが俺達と後ろを交互に見て


「なっ!?お前等…っ何しやがった!?」

「ここと、お前等の根城を潰しにと、お前の持ってる魔水を貰いに来た」

「潰すだとぉっ!?何ふざけた事言ってやがるっ!?」

「私に言わせれば、お前等の方がよっぽどふざけてるけどな」


シオリが一歩前に出ればラルフも一歩進み

ドグ達はジリジリと後ろへ


「奥は片付いたぞ〜」

「後はここだけだよ、それと…」


レンとシオンの声

シオンはヒラヒラと何かを見せてくる


「多分コレ、取引関係の書類じゃないかな?

 これで証拠はバッチリだね」

「!? テメェ等…っ俺の部屋に勝手に入ったのか!?」

「入ってないよ 

 何人か倒したら、たまたまアンタの部屋っぽいとこも壊れちゃって

 風に乗って紙がヒラヒラしてたから、ソレを取っただけだよ」

「壊しただぁ!?テメェ等…っ俺達に喧嘩売ってただじゃおかねぇぞっ!!」

「ただじゃ済まさねぇのは俺達だ」


レンの拳には、火が


「子供を、逃げられねぇ様に酷ぇ傷を付けて

 モノ取りが上手くいかないと殺すとか…」


火がゴウッ!と激しく燃え、レンの目には…怒りが


「よくもまぁ、そんな下衆な事が出来るもんだ」

「…っ、フン、自分の物に印を付けておくのは当たり前だろうが

 それにな?あのガキは俺がわざわざ貰ってやったんだ

 俺様の命令に従うのは当たり前の事だろうが!

 簡単な事もロクに出来ねぇ奴なんか、殺すしかねぇだろうがよっ!?」


瞬間

ゾクッ…!と体が何かに怯える

他の奴等も同じみたいだ

レンとシオンだけがシオリを見て、…焦ってる?

恐る恐るシオリを見ると


「…っ!」


髪や服が、風じゃない何かで揺らいでる



蓮side

ドグって奴が、栞にとって…恐らく、一番タブーな事を言いやがった

栞は感情を抑えようとしてるが、魔力が反応して周りに圧を掛けてる

ビリッビリッと体が感じるコレは…、殺気


「な…っ、何だよ…っお前…っ…」

「それ以上…」

「あ?」

「それ以上…、喋るな」

「はぁ?何言ってんだテメェ?」

「…レノ、ラルフ」

〔〔はい〕〕

「面が壊れない様にと、強力なモノを建物全体に」

〔〔承知しました〕〕

「蓮、紫音…、私の後ろに

 巻き込んじゃうかもしれない」


俺達は壁を足場に、避難してるラルフとカイの側に行く


「レン!シオリは何するんだ!?」

「…アイツが、栞がキレる言葉を散々言っちまった

 死にはしねぇが…、アイツは覚悟しねぇとな…」

「!?…な、シオリがキレるって…っ、何でだよ?」

「カイ、姉さんは昔…、カイと同じ様な環境で酷い事をさせられてたんだ」

「!?」

「だから、さっきのアイツの言葉が…、君に対しての言葉が、相当頭にきてるんだよ」


俺と紫音は仮面越しでも表情が見えてる

だから

栞がどれだけの怒りを必死で抑え込んでるのかが、分かってんだ



傍観者side

栞に薄らと黒い魔力が纏わり付き、ブワッ!と衝撃波が放たれる


「な…、何なんだ…っ、お前…っ」

「…」

「クソッ…!お前等行けっ!!」


数人が栞に襲い掛かるが

ダァンッ!と横の壁に吹っ飛ばされる


「!? な…何、したんだよ…っ!?」

「…」

「…クソッ!」


ドグは魔法を放つが、栞に当たる寸前で弾け消える


「クソッ!クソッ!クソがぁっ!!!」


何発撃とうが、無意味


「クソッ!テメェに当たんねぇならっ!!」


ドグが蓮達に手を向けると


「おい」


栞がドグの前に一瞬で跳躍し、手を捻り上げる


「うっ!?ぐぁ…っ!」

「今、誰に攻撃しようとした?」


ミシッミシッと骨の軋む音が


「ぐ…っ、テメッ…離せ…!」

「これ以上…、俺を怒らせるな」


ドグの横腹に蹴りが入り、ドゴッ!と壁に激突する


「ぐ…っ、ゲホッ!…ゴホッ!」


ドグが顔を上げれば、殺気を向けてくる栞が

ガタガタガタッとドグが震える

栞はドグの胸に足を乗せ、グッと力を込める


「…っぐ…!止め…、ろ…っ…!」

「だったら、魔水を寄越せ」

「…っ、無ぇよ、んなモン」

「…」


《サイコキネシス》を足に纏い、更に押さえつける

ミシッ…ミシッ…バキッバキッ!


「! あぁあああああああっ…!?」

「さっさと答えねぇからだ

 早く言わねぇと…、肋全部折るぞ」

「…っ、クソ…ッタレがぁっ!!」

「…へぇ」


栞がドグの右肩に指をトン…と付けると

ズバッ!

ゴトンッ…とドグの右腕が床に落ちる


「!? うぁああああああああああっ!?!?!?」


ドグは悶え、体を動かそうとするが

栞が動きを封じてる所為でロクに動けない


ちなみに、蓮達には死角になってる為

腕が落ちたのは見えていない


ドグはあまりの激痛に意識が飛びそうになるが

栞が《テロメア》を使って強制的に意識を保たせている


「これでも、まだ無いって言うか?」

「…あぅ…、ぐ…、もう…」

「あ?」

「も…う、止め…て、く…れ…」

「止めてほしかったら、さっさと出せ」

「…お…れの…、部屋…、金…庫…」


栞は蓮達に向き


「コイツの部屋の金庫、お願い」

「俺が取ってくる」


紫音が奥へと消えるのを見届けて


「カイの背中にあった魔法陣は消した

 もうあの子を、お前の好き勝手にはさせない」

「…はっ…、それ…で?ガキを…どう、しよって……だ」

「それは私達が決める事じゃない」


栞はカイを見る


「どうしたいかは、カイ自身が決める」


ドグに向き


「他人がどうこうしていいもんじゃねぇんだよ」


紫音が慌てて戻ってくる


「無い!」

「!? おい、この状況で嘘吐いてんじゃねぇよ」


ミシッ…ミシッ…バキッバキッバキッ!


「…っ!」


ドグが言葉にならない悲鳴を上げる


「さっさと言え、本当はどこにある」

「…っ、違…っ、ボス…が、持…て、たん…だ…っ」

「ボス?」

「ほ…とに、1…個、あっ…た……」


ドグがチラッとカイを見る


「俺…は、ボ、か…ら、貰って…、が…

 あの…ガキの…親…か…ら、奪…てた…モン…だ…って…」

《!?》

「ボ…ス…が、親か…ら、ガキ…を、盗…ん、だ…」

「…その親は?」

「…っ、ゲホッ!」

「答えろっ!!」


ドグはヒューッ…ヒューッ…と息も絶え絶えになっている


「栞、これ以上は無理だ…」

「…っ」


栞はドグの頭に手を置き、記憶を探る



蓮side

どれ位経ったか…

栞はドグから手を離すと、ドカッ!と思いっきり殴る

ドグは気絶したみてぇだ

栞はこっちに戻ってくるが、怒りは収まってない

…寧ろ、殺気立ってる


「本拠地に行く、頭をぶっ潰す」



栞は仮面を着けてるが、今でも僅かに黒い…闇の魔力が溢れてる

レノとラルフがアイツに見つからねぇ様にしてくれてる

んでゼルファが暴れたいっつって人型に


本拠地の近くで、栞が中を探る


「…今現在で捕まってる人はいない」

「つまり、全員潰しちまっていんだな?」

「うん、…あ」

「どうしたの?」

「地下に動物が沢山いる

 鎖に繋がれて檻に…、ゼルファに頼んでいい?」

〔うむ 任せておけ〕


カイは辛そうにラルフの背中でグッタリしてる

栞はカイの頭をそっと撫でる


「ゴメンね、もう少しだけ待ってて

 ラルフ、カイをお願い」

〔承知〕


扉をぶっ壊そうとすると


〔我がやろう!〕


ゼルファが腕を竜化させ、思いっきり叩き付ける

ドガァンッ!

見事にぶっ壊れた


「何だぁ!?」

「どうしたっ!?」


中で騒ぎ出す声が


「お前等をぶっ潰しに来たんだよ」


戦闘開始だ



地下はゼルファに任せ、私達は他を全部潰す

ドグの記憶をよんでボス…シュドは分かってるから、それ以外は容赦無く


そして、ウザい位の人数を潰して

漸くシュドの所に


「おいおい、何好き勝手してんだよ?」


…流石、人身売買なんかしてる奴等のトップ

こんだけ暴れても平然としてる


「アンタがドグって奴の金庫から持ってった、魔水を貰いに来た」

「魔水?…それは」


シュドが懐を探り


「コレの事か?」


透明な小瓶の中に、キラキラと輝く水が


「もしかして、その犬の上で寝てるガキがソレか?」


シュドがニヤッと嫌な笑みで近付いてくる


「それ以上、この子に近付くな」

「お前等、そのガキがどんだけ儲かるか知ってるか?」

「…は?」


蓮の呆れる声


「ソイツはな?魚人の王族の血を受け継いでんだよ!

 魔力が他のヤツとは違ぇんだ!

 元々魚人族の魔水は闇市で高値で取引されるが

 コイツや親のは桁違いだ!

 だからソイツが赤ん坊の時に盗んで

 返してほしいんなら魔力を寄越せと、親から魔力を奪い続けたんだ!

 ラッキーだったぜ?

 なんせ俺も…」


シュドが帽子を取ると、カイと同じ…


「ソイツと同じ、魚人族だからなぁっ!」


シュドが手を広げた瞬間、部屋全体に水が流れ込む


「「「!?」」」


咄嗟に自分達を《サイコキネシス》で囲うが、激しい水流に飲み込まれ

色んなとこにぶつかって位置感覚が分からなくなる


「ギャハハハッ!何にも出来ねぇだろっ!?

 さっさと降参してガキだけ置いて帰りなぁっ!!」

「…っ」


この水を何とかしないと、アイツに近付く事すら出来ない

…やってみるか

蓮達を引き寄せ、私だけシールドを解く

水圧が体に一気に掛かって苦しい…っ

蓮と紫音がドンッドンッとシールドを叩いてるのがチラッと見える

早くっ、息が続く内にっ…!

右手は氷、左手には火の魔力を

威力も調整して…


《インフェルノ(氷炎地獄)》!



紫音side

姉さんのお陰で、部屋中が水で溢れても平気だ

でも、アイツを倒すにはどうしたら…

俺の魔法でも、これだけの水圧じゃ途中で消える

すると、グン…と引っ張られ、気付けば全員が姉さんの側に

姉さんは1人だけシールドを解き、強い水圧に苦しんでる


「!? 姉さん何をっ!?」


姉さんが苦しい表情の中、左手から見えたのは火属性の…

瞬間

俺達側は水が蒸発し、シュド側はピキン…と凍り付く

シールドが解け、着地すると

姉さんが座り込む


「ぐ…っ、ゲホッ!ゲホ!」

「「栞(姉さん)!」」


何度か咳き込んで、飲んだ水を吐き出す


「フェニア!」


蓮とフェニアの火が姉さんを包み込んで水気を飛ばす


「ゴホッ…、はぁ…。ありがと」

「栞、何やったんだ?」

「氷と火の魔力で《インフェルノ》って魔法を使ったの」

「インフェルノ…」

「1つのエリアで氷と火を同時に発生させる魔法だよ」


姉さんは火の魔力を纏い、氷を溶かしながらシュドの元へ

あと1m位のとこで止まり、手だけを伸ばし、さっきの小瓶を取り出す

姉さんは戻ってくると、ラルフからカイを下ろすが


「…」

「? どうした?」

「今、アイツの記憶をよんだら…、カイの両親はもう…」

「そう…なんだ…」

「もしかしたら、コレが最後のかもしれない

 今全部飲んだら…」


姉さんはカイを優しく揺する


「カイ、…カイ…」


カイがゆっくりと目を開ける


「カイ、きっとコレが今ある最後の魔水

 飲めば今は楽になるけど、また苦しくなる

 それでね?カイ…

 私達と一緒に来ない?」

「…え…」

「私が少しだけコレを飲んで、私が作れる様にする

 私達と家族になってくれれば、もう…、苦しい思いをしずに済む

 それに、カイと一緒にいたい

 だから…、家族に、ならない?」

「か…ぞ…、く…?」

「そう」


カイはフニャ…と力無く微笑み


「うん …なる。シオリと…皆と、…家族に…なり…たい」

「ありがとう」


カイは目を瞑り、息も絶え絶えだ

姉さんは小瓶を開け、少しだけ飲む

目を瞑り、体内で魔力を調べる

そこに…


〔おい、こっちは終わったぞ〕


ゼルファが来る


〔む?何をしておる?〕


かくかくしかじかで…


〔ふむ 状況は分かったが、恐らく足りん〕

「「え?」」

〔魚人族特有の魔水だ、そう容易には出来ぬ

 だが、魔力よりも有力なモノを取り込めば、カイに適したモノが作れるだろう〕

「それは?」

〔うむ ズバリ、血だ

 血は何者にとっても一番の源、カイの血を少しでも取り込めば

 シオリが作る魔水で生きられる筈だ〕

「…ホントか?」

〔む? 何千年何万年と生きておる我の言葉を疑うとは

 シオリ、やってみよ〕

「…カイ、ちょっとゴメンね」


姉さんはカイの指先を少しだけ切り、血を舐める

改めて生成すると

数秒後には片手にキラキラと光る水球が


〔成功だな〕


ゼルファがドヤ顔だ

ソレを少しカイの口に入れれば、弾けて液体に


「! ゲホッ!ゴホッ!」


上手く飲み込めず、咽せてしまった

姉さんはすぐに魔水を飲むと、カイに口移しで飲ませる


「「!」」


コク…と飲み込めた

その後もカイが落ち着くまで、姉さんは口移しで飲ませた

全部飲み終わり


「カイ…」


姉さんが呼べば、ゆっくりと目を開ける


「もう、大丈夫」


姉さんは慈愛に満ちた笑みだ

カイは涙を流し


「…お…母…さん」


姉さんにギュッと抱き付く

姉さんは優しく抱き締め、カイの背中をポン…ポン…と叩く


「さて、帰ろっか」

「「おう」」


シュドや潰した奴等はまとめて警備隊に突き出しておいた



蓮side

その夜

カイは栞の(いつもは俺と栞が寝てる)ベッドにラルフと寝て、紫音は風呂に

俺は栞とベランダでゆっくりしてる


「今日は色んな事があったな」

「ね、大変だったね」

「…なぁ」

「ん?」

「カイ、お前の事、お母さんって呼んだだろ?」

「…うん、呼んだね」

「……実は、前から、考えてたんだけどよ

 俺達も…、子供…つくって、みねぇか?」

「…」

「…」

「…、蓮」

「お、…おう」

「…私も、何度かは、…考えたの…」


栞は段々と俯く


「…蓮との子供は、欲しいって…何度も、思った…、けど…」

「……、けど…?」


俺を見上げる栞の目には、迷いが


「私は、蓮も知ってる通り…まともな環境で育ってない

 それに…、この世界を知るまでは、私の力は、異能だった…

 もしこの力が、自分の子供にまであると思ったら…、怖かった…

 この世界があるから、怖くなくなったけど

 それよりも…、私がちゃんと子供を愛せるかが分からない…っ」

「…っ」

「蓮と…皆と再会してからっ、やっと愛し、愛される事を知った

 それまで私は、愛が無い…いや、それ以前に感情を必要としない環境で育ってきた…っ

 そんな私が、ちゃんと育てられるのかな…っ?」


思わず栞をギュッ!と抱き締める


「ドグって奴に何をしたか…見えてなくても分かってたでしょ?

 あんなの…、カイがいる前でやるべきじゃなかった…っ!

 私には闇がある…

 忘れたくても忘れられない過去、闇が…っ

 皆が、…蓮が側にいてくれるから、私は闇に堕ちない

 でも、そんな私が子供をつくっても…、いいのかな?」


俺の胸に頭を付けて、震えながら…、今まで溜め込んでたであろう不安を漏らす


「…栞、俺の目を見ろ」


栞はゆっくりと顔を上げる

泣いて、目が赤い


「栞、…ありがとな」

「…?」

「お前も…俺との子供が欲しいって…、思ってくれてるんだな」

「…うん」

「栞の不安は、多分…もう解消されてると思うぞ?」

「…、え?」

「カイが水が飲めない時に、お前は迷わず口移しで飲ませた

 んで、カイが目を開けた時…

 お前は、スッゲェ優しい顔をしてたんだ

 それを見て、カイは母さんって呼んだ

 きっとお前は、愛情を沢山あげられる…優しい母親になれる

 そんで俺も、栞以上に愛情を沢山あげる父親になる」

「…蓮」

「今すぐにじゃなくていい

 ただ、栞も俺も…お互いに同じ事を望んでるって分かってくれてればいい

 この世界に来て、精霊も宿して寿命が長くなったんだ

 考える時間はいくらでもある

 お前自身が納得出来るまで、待ってるから…」

「…っ、蓮」


栞がまた涙を流す

そして


「ありがとう」


月明かりに照らされるその笑顔は、最っ高に綺麗で…見惚れちまう

カイが近くで寝てるのにも関係無くキスし…時に深く

ギュッと抱き締め合った

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