池袋駅構内の中心で、愛を叫ぶ⑫
もういくつ寝ると、メリークリスマス。
池袋駅、西武東口の車道に救急車が停車している。
さっき、駅構内のアゼリアロードで横たわってた人が搬送されるとこ見たっけ。
前から寝床にしてた方か、そこで倒れた方かは分からないけんども。
あたしは、西武東口の宝くじ売場を目指し、構内トイレを巡回しながら、とにかく歩いてきた。
年末ジャンボ3枚を買うための千円札を、右手手のひらで握りしめる。
あの救急車、搬送先が決まったのかしら。
サイレンを鳴らして、いなくなった。
当たりたいから買うのか?って。
ちがう。
突発的に思い付いた、お金のつかい方をしてみる。
大胆に。
当たる当たらないじゃなく。
自分の行動習性を変えるの。
人間だから。
動物みたいに、決まったところでウンチしないの。
あたしは。
もう亡くなっていて、今はいない、おばあちゃん。
あたしに会うと、いつもかわいい、かわいいって。言ってくれた。
切なくてキュンとなる。
かわいくないよ。
あたしなんて。
涙が出てきた。
「大丈夫ですか?」
売り場のお姉さんに心配されちゃった。
「大丈夫です。年末ドリームジャンボを3枚ください」
「バラと連番どちらになさいますか?」
「連番で」
普通は、ここでバラって答える人が多いんじゃない?
何も考えず、呼吸をするように連番を買うの。
あたしはね。