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だいすきっ!間章 その1
「あの女狐は上手く死んだようですわね」
久しぶりに荷物を取りに来た自宅の自室で人魚は独りつぶやく。
「あの女狐……お姉様をあんなにも苦しめて、許せませんわ」
ギリリと爪を噛み、人魚は吐き捨てる。
その満月の瞳にはギラギラと光が輝いていた。
「大丈夫ですわよお姉様……お姉様にはこの人魚が付いております。この人魚だけが」
その首にさげた鎖を引き上げ、指輪を見つめる。
「同じ指輪は、二つあれば充分ですわ」
人魚は机の引き出しからナイフを取り出す。
その刀身は夜の光を浴びてキラリと光る。
ナイフはそのまま宙を舞い、壁に貼られた写真のある部分に刺さった。
「くすね……次に死ぬのは貴方よ」
そして彼女は愛おしそうにもう一枚の写真に頬ずりする。
「あぁ、お姉様……いつかこの星を……わたくしとお姉様二人だけの物に……。いいえ……この星にはもとよりわたくしとお姉様しかいませんわ……後は砂塵のようなもの……元より消えるが定め……ふふふっ」
大きすぎる自室に、少女の狂った声が木霊した。
つづく