だいすきっ!まほろオリジン?
あれ?
那波あすみってどんな性格だっけ。
「お姉様、那波あすみさんは……」
「え?あ、あァ。あすみは性格に少し問題があってね。父親が当時有力な議員だったというのもあって無茶苦茶をしていたんだ。それで……うっ」
「大丈夫ですか。まほろ様?」
心配そうにくすねが覗き込んでくる。
くすねの空色の瞳を見ていると、少し心が落ち着いてきた。
それで、そうだ。僕に付き纏っていた彼女は僕が可愛がっていた後輩を虐めていたんだ。
確かバトミントン部の女の子だった。
可愛がっていた?何部かも定かじゃないのに……今思い出すとそんなに可愛がっていなかったのかもしれない。
ただ僕が面倒を見た後輩を気に入らないと虐めていたのかも。
とにかく後輩の女の子を酷く虐め、彼女はバトミントン部をやめた。
僕の入っていた中学はスポーツの名門で、彼女は推薦だったから……親御さんの期待に添えられなかったこともあって彼女は人生に悲観して投身自殺を図ろうとしたんだ。
だから僕は……彼女と一緒に飛び降りた。それが僕の責任だと思ったから。
それが、魔女まほろの誕生だった。
「酷いですわ。そんなのお姉様は悪くありませんわ」
「えぇ、まほろ様は責任を感じることではありません」
それは違う。
僕は嫉妬深いあすみを好きでもないのにわざと煽っていた。だからあすみは僕の周りで次々トラブルを起こしたんだ。
想定した以上に大ごとになってしまい、僕は後悔した。
そして責任をとって後輩と飛び降りた。
あすみの父親は事件をもみ消し、僕の魔女の力で蘇生された後輩は家族ごとどこかへ消えてしまった。きっとあすみの父親が原因だろう。
そんな事件があったのに、いまだに人魚君とくすねを競わせている僕を見てあすみは何を思ったのだろう。
蔑み?
いや……気が付くだろうか。人魚君とくすねは僕とだいぶ年が離れている。
ただあすみは変な勘が働くところが……いや……でも……。
「お姉様?」
「なんだかあすみのことがちゃんと思い出せないんだ」
「今は仕方ありませんよ」
慰めるようにくすねに言われ、僕はホッとした。
けれど今の僕は魔女だ。責任を果たさねばならない。パン、と頬を叩くと頭を切り替えた。
「さぁ、仕事の続きだ。なぜ彼女が死んだのか……探っていこう」
おそらくこの調査はすぐに魔法による殺人という結論に達する。
そして今は大臣であるあすみの父親のだす結論も予想がつく。
それでもただ僕は責務を果たすのみだ。
つづく