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だいすきっ!一瞬の地獄

「久しぶり、ハッシー」


 那波あすみ、彼女は僕の高校時代の同級生だ。

 高校時代、いやもっと前からずっと僕はクズだった。

 女の子の管理法というものを何もわかっていなかったのだ。欲望のままに動いて、何もかも台無しにした。

 今だったらもっと上手くやるのに。本当に勿体ないことをしたんだ。


「あの事件からもう何年かなぁ。私なんてもう立派なママだよ。びっくりだよね」

「……」


 立派なママという言葉に一言物申したくして僕は黙った。

 僕の空気に不穏なものを感じたのかくすねがあすみに小さく会釈する。


「ボク、ママ達大事なお話があるみたいです。くすねと人魚様と一緒にあっちで遊びましょうか」


 本当によくできた使い魔だ。僕はその様子を横目で見ながらも頭が上手く働かないでいた。

 あすみは僕の髪をじろじろと見ながら気味の悪い笑みを浮かべている。


「ハッシーのお弟子様も使い魔さんもいい子だねぇ。まるで……あの子みたい」

「そうだね」


 僕はわざと素っ気なく答えた。

 この女はどこまであの時自分が煽られていたことに気づいているんだろうか。


「ふふ。ハッシーって仕事以外は殆ど決まったエリアでしか生活してないよね。それってやっぱり」

「要人である君のお父様のお蔭で情報統制は引かれたけれど、それでも地元で生活するのは気まずいからね」

「そんなの魔法や私のパパの力で何とでもなるじゃない」


 この女とこんなまだるこっしいやり取りはしたくない。

 だから過去は何とも思っていないかのように僕はハキハキと喋る。


「僕はもう、過去と付き合う気はないよ。さようなら」

「ふーん。あの子の居場所知りたくないの?」


 気分が悪い。吐きそうになる。

 これ以上この女と何を話しても無駄だ。

 踵を返し、くすね達……今愛すべき少女達のところへ向かう。


「ママ!お話終わった?」

「うん」


 すれ違いに聞こえる子どもの無邪気な声に憂鬱になりながら、空を見上げた。


「あの、お姉様、今の女性……」

「大丈夫」


 何が大丈夫なのかもわからないまま、僕達は帰路についた。




 帰り道のことはよく覚えていない。家に帰ってトイレで吐いたことは覚えているけど。

 人魚君やもちもちには本当に悪いことをしてしまった。あれだけせっかく上手くいったのにロクに褒めてあげられなかった。最悪だ。

 くすねだって僕に気を遣っている。早くなんとかせねば。


「しっかりしろ、まほろ!」


 ベッドに座り頬を叩く。そのままボフッと体を沈め、僕は眠りについた。

 せめて、夢の中では全てを忘れ幸せでありますように。




「まほろ姉ちゃん!姉ちゃんが高校卒業したらゲーセンに遊びに行こう!」

「そっか。もう中学生だから保護者がいればいけるかー。よしよし、二人でプリクラ撮りに行こう」




 その日見た夢は、あの事件なんて何も関係ない……知らない栗毛の美少女と戯れる夢だった。

つづく

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