だいすきっ! まるかの章
言えなかった言葉がたくさんあった。
あたしが府付ちよなんだよ。まほろ姉ちゃん。
そう言ってしまえていれば今頃二人はどうなっていたのだろう。
それとも自分で自分を救うべきだった?まほろの幼馴染という与えられた役割を捨てることになるかもしれないのに?
まほろはきっとあたしに……ううん、誰でもいいから自分の事をわかっている人になって欲しかったんだと思う。
それに偶然でも選ばれたのなら、こんなに嬉しいことはない。
例えそれがもう一人の自分を殺すことになっても。
心のどこかでまほろ姉ちゃんを憎んでいる自分がいても。
あたいは選択した。火野まるかとして生きることを。
そして今もう一度同じ選択をした。
体に雪崩れ込む魔力の奔流があたしを削り取っていく。
きっとこれが不死商人から全てを引き継ぐ代償なのだろう、府付ちよは今度こそ死ぬ。
くすねを倒したとき、きっと火野まるかは羽柴まほろのただの幼馴染になっている。
ちよじゃないあたいはきっと選ばれない。それでもいいんだ。
代わりにあいつの大事なちよがいなくなる。復讐劇としては完璧じゃないか。
一生幼馴染でいてやるよ。まほろ姉ちゃん。
いつか全てに気づいたとき、せいぜい悔やむがいいさ。
心の中でそう吐き捨てると、あたいは、あたしは、魔力の鎌をくすねに振り下ろした。