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だいすきっ!最後のヒロイン? 中編

 後から来た看護婦さんによると僕が倒れた理由はまだわからないらしい。

 貧血すら無かったようで、今後経過を見て病院に来て欲しいとのことだった。

 僕個人の見解としては体が原因ではない気がするな。


「まほろ、入るぞ」


 まるかの声だった。


「いいよ~大丈夫」


 すっと顔を見せたまるかは心配そうな顔をしていた。ひょっとしてストレスで倒れたと思っているのかもしれない。


「いや、ストレスとかじゃないよ?」

「そうなのか?」


 理由はわからないが何というか……魔法が関わっている。そんな予感がしていた。

 でも不死商人が原因だとも思えない。

 もっとじっくりコトコト時間をかけた呪いのような感じ?

 って言ったら心配増すだろうから言わないでおこう。


「なんだ心配して損したな!返せよあたいの心配」

「今度会ったときに返すさ」


 僕が何の気なしにそう言うと、まるかが不満そうな顔をする。

 

「まだ納得しないのかい」

「んー……あたいだけ除け者ってのはなァ」


 でも君殆ど戦えないじゃないか。とは言わないでもっと親身に説得した方がいいのかもしれない。

 そういえばまるかを迎えに来たリリはどうしたんだろう?入れ違いになったのかな。


「君を護衛する人がもう来ているんだ。リリって子でね。ちょっと態度悪いけど……」

「へぇ。いいじゃないか!そいつに話をつければいいのか」

「困らせるだけだからやめろ」


 リリは僕の依頼を受けた魔女騎士団所属の魔女というだけなんだから、本当に困らせるだけになる。

 むしろバッサリ言ってくれてまるかがまた凹む展開かもしれないが。

 それはそれで有りだ。

 ただ一応最後通告はしておこうと僕が口をあけかけた時、窓ががらりと開いた。


「おい!あんたの使い魔が服を持ってきてたぞ。ババア」

「リリ、ちょうどいいところに……ってババア!?」

「ババア!?」


 僕と同じく三十四歳のまるかも同時に反応する。


「おおおおお前、今、まほろをババアって」

「無駄に若作りだからな。おとぎ話の魔女みたいでちょうどいいだろ」


 吐き捨てるように言ってリリは僕を睨む。

 その手には女物のやけに露出度の高い可愛い服があった。


「若い女引っかけたいんだろうが、自重しろよババア」

「え……違う!僕は普段はもっとこう……落ち着いたレディらしい……」

「あーこれはアウトだわ」


 ショックを受けていたまるかがキキっと笑った。

 くすねが持ってきていたという服は完全におっぱいの下半分が見える仕様になっていた。

 これは若くてもキツイ!だってちょっと凝った可愛い下着にしか見えないし!

 少なくとも普段着と言い張るのは無理があるだろう。着るけどさ!


「違うと言いながら着る準備してるじゃねぇか」

「おいおいまほろ。本当に着るのか?」

「着るよ。くすねが僕のために用意してくれたんだ。このデザインだって可愛い物が好きな僕に気を遣ったんだと思う」


 最近落ち込むことが多い僕を励ましてくれる彼女の顔が思い浮かぶ。あぁ、可愛い子だ。

 下着っぽいのは本人の趣味だろうけどね、と心で付け足す。


「フン!きざな奴」


 そう言ってリリはぱっつんぱつんのミニスカートを履く僕からそっぽを向く。

 なんだかこの子は今まで僕の周りにはいなかったタイプで新鮮だ。

 まぁ、ババアは流石によくないと思うけれどね……。

 

「はい、OK」


 服を着替え終わり、まるかがまとめてくれた荷物を持って僕達は退院することにした。

 理由はまだわからないけれど、病気ではない気がするからベッドを使ってしまって悪かったな。

 念入りに病院の人達にお礼を言い、売店でも多めに買い物をしておく。

 みんな胸から目線を逸らしているのが印象的だったけど、同じくらい嬉しそうにしてくれたことも心に残った。

 その笑顔に、僕も思わず笑顔になる。


「あんたは律儀だな」

「迷惑かけちゃったから。心配してくれたみたいだしね」


 この町の人々の思いやりは本当にありがたい。僕はそれに報いていられているんだろうか。

 いや、報いなければならない。この町を全ての脅威から守るという形で。

 あすみやあの女の子のようなことは二度とあってはならない。


「……それに僕はこの町や人が好きなんだ。だから守りたいんだよ」

「変な女」

「魔女には珍しくない話だろう?君だってそうじゃないのか。騎士団の魔女さん」

「俺はそんな綺麗な人間じゃねぇよ」


 何か気に障ることを言ってしまったのか、リリは黙ってしまった。

 沈黙の空気が苦手で、まるかに助けを求めたい。けれどまるかは今いなかった。


「あー……まるかはどうしたのかな」

「今さっきトイレに行くって……ん!?」


 そこで僕達はミスに気付いた。

 すぐ傍のトイレは清掃中だ。

 

「あいつ、たぶん逃げた!」

「まずいぞ。あの一般人!今うろちょろされたら……」


 まるかはちょっとバカだ。

 だからって命の危険がある時に問題を起こすほどバカだとは思ってなかった。


「何考えてるんだ……!?」

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