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だいすきっ!間章 その3
「大丈夫。まほろ姉ちゃんはあたしが守るから」
自分に言い聞かせるように女は言う。
どこかの部屋のどこかの浴場で、女はシャワーを浴びていた。
その体には傷一つなく、玉の肌ともいえる美しさだった。
「魔法がある限り、きっと姉ちゃんの記憶は戻らない。それでもいいんだ」
夢のことなど露知らず。女は自分を必死に鼓舞する。
「姉ちゃんが昔あたしを救ってくれたように、あたしが今度は姉ちゃんを救う」
頭によぎるのはあの日の屋上。自分の血の匂い。まほろの涙。もう動かなかった右手。
「姉ちゃんを恨んでないって言ったらウソになる。でもあたしは戦う」
ダン、と女は壁に右手をつく。
赤く長い髪はあの日の血のようにべったりと体に張り付いている。
二人の、カルマの日。
「姉ちゃんの幼馴染に転生したこの体で、あたいはまほろを救う。例え相手がなんであろうと関係ないかかってきなよ」
鏡の中の自分を睨み、まるかは宣言した。
「あたいはまほろを救い……まほろを殺す」