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プロローグ
それは人類の希望。
それは人類の未来。
それは人類への救済。
それは理をも滅し秩序をも覆す。
それは人でなくなった何か。
それは―――
この世界ではないどこかの世界――人が虚構世界、虚無世界と呼ぶ何処か。
かつての学者がその世界についてこう述べたという。
有無相対を超越した世界。天地万物は絶対的「―」なる本体より発生するがそこには形状はなく、見ようとしても見えず、聞こうとしても聞こえない。そこにはただ「 」のみが存在し人が「 」に飲まれるとき全ては絶対的な「 」に向かう。
虚構世界、虚無世界――人知の及ばないどこか別の場所。
人はそこを道徳の極致とし
人はそこを死後の世界と定め
人はそこを無欲恬淡とし
人はそこをこの世の理想とした。
そして虚無は、この世界に「 」を開いた。