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定年

作者: ↑MΦCCAHAN

今日は私、日野源三郎が職場へ行く最終日であった。

谷塚から下り方面へ最後の途帰についている。東武線の駅から徒歩のお供に曲を2~3曲ほど聞いたところで、火鳥のような真っ赤なからすに会ってしまった。こいつは毎朝私の家の近くにあるゴミを漁っていたのでよく記憶に残っていた。仕事を終えたことと、もうこれ仕事として、この道を通る最後の時であるという解放感から、気に留めずに、その場から離れようとした。

「日野さん、あんたんちの草のことだが、」最初何をどこから誰が言ってるのか分からなかった。真っ赤なからすが目の前にばさばさと飛び降りてきたこと。それと私が今1人であることからこのからすが話しかけてきたと分かった。

「日野さんちの草は、あんなに水がいらないらしいぜ。あいつ、名前はレーミモンって言うだけどさ、良い奴なんだ。」私はからすの言葉にムッとして言い返した。「お前に何が分かる。植物は必ず水が多い方がいいんだ。」

「おいらにはお前じゃなくて、奈津と言うダーバジール様から貰った大事な名前があるんだ。そう呼んでくれ。さて、おいらは草の声が聞こえるんだ。死に際の草の泣き声はもう聞きたくないんだ。それにレーミモンは俺の大事な友人なんだ。いいか、これは忠告だ。レーミモンはからすな。」からすは怒っていた。しかし、私は嬉しい気持ちを台無しにされた仕返しに言った。

「からすはあんただろう。それに、仕事が定年を迎えたんだ。時間ができるから、草を加えられる。」

「そうかー」からすは乾いたような声だったと思う。正直に言うと、この辺りから記憶が薄れている。

「おいらは草の鳴き声は聞きたくないが、人間のは別にいいんだ。」

目を覚ますとどこかの植物になっていた。

喉のあまりの潤いさに、初めて定年を迎えたくないと思った。


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