介護士、朝食と今後を話し合う
熱々のスープにパスタ、新鮮な野菜のサラダにパン。
異世界なのに、野菜は此方もほぼ同じらしかった。
くう、と鳴るお腹。
視線を感じて顔を上げればシャスティン様と目が合う。
「気にせず食べてくれ」
「はい」
恥ずかしくて顔が上げられない私の頭を優しく撫でてくれる。
「ふふっ、オリカ様可愛らしいですわ」
「ありがとうございます」
そんな事を言うが。
言ってるセレスティアさんこそ、ものっ凄く可愛いんだけど。
見るからに綺麗な緑色の髪は、サイドを編み込んだだけ。
背中辺りまでの長さだけど、すっきりした印象に見えた。
「オリカ様は甘い物は好きか?」
「レオパルドさん、様は止めて貰えませんか?
私はお世話になる身、きちんと向き合いたいので」
レオパルドさん、にっと笑って頷いた。
「なら俺はレオな?オリカ様」
「様要らないよレオ君」
「年下が君付けか?」
「私35歳なんだけど、君16歳位じゃない?」
「……そりゃ失礼。16歳で合ってるよ。様は取れないよ、不遜って言われるし」
これだけは引くしかなさそう。
「そう、ならばそういう事で。セレスティアさんも、いい?」
セレスティアさんは嬉しそうに目をキラキラさせて頷いてくれた。
「私はセレスとお呼び下さいまし!甘いもの……見繕ってお持ちしますね」
そうして四人で食事しつつ、たわいない話をした。
「そう言えば、妖精達はどうしたんでしょうね?」
話が粗方尽きた所で、セレスさんがそう呟いた。
「また来るとは言ってたんだけど、今は帰ったのかな」
「素晴らしい輝きの持ち主でしたし羽が6枚でらしたので、きっと王族なんですね」
初耳だ。
身を乗り出した私にシャスティン様が教えてくれた。
「妖精は普通羽が4枚なんだ。王族だけが6枚羽を持つ事が出来る」
雑談は楽しかったけど、この後どうしたもんだろう?
ふと思い立ち、尋ねた。
「国王陛下と王妃陛下にご挨拶したいのですが、如何でしょうか?」
これにシャスティン様の表情が和んだ。
「会ってくれるか?!では直ぐに話を付けてこよう、待っていてくれ」
そう言いおいて、セレスさんだけを残して行ってしまった。
セレスさんは両手を胸の前で合わせて口の中で何か呟くと、ポンと白い箱が現れた。
「これは……?」
「はい!謁見の機会もあろうかと白いワンピースをご用意したんです」
ご用意って……
「わ、私に?!」
「はい!白いローブも考えたんですけれど、此方にいらしたばかりじゃないですか?
以前お目にかかった時にざっと目算させて頂いたので、オリカ様の可愛らしさに合う物だと思いますわ」
ドレスと言われなくて良かった。
セレスさんも動き易そうなワンピースを着てるけれど、結構豪華。
ドレスとワンピースの中間みたいな感じのを着ている。
色味は綺麗な水色で、とても似合ってる。
「ワンピースだけじゃありませんわ!下着類も一式ございます。
殿方が居ないうちに着方などお教えしますね!此方の衝立の方へどうぞ」
此方は服も中世の物に近いようだ。
まぁ、下着類も悪戦苦闘しながらなんとか着方をマスターした。
びっくりしたのは、セレスさんが何の躊躇いもなく服を脱いで下着姿を披露してくれた事。
まずこんな感じで着ると見せてから、上から薄い貫頭衣を着て。
更に着て見せてくれた。
終わってからきっちりお礼とお詫びを言ったけれど、セレスさんは頭を振った。
「ちょっと恥ずかしかったですが、オリカ様は何もかもが初めてでいらっしゃるのですから」
それにしたって、本当に分かりやすかった。
口頭だけではきっと何時間もかかっただろうから、本当に有難い。
この後、用意して貰ったワンピースを着てみた。サイズぴったり!セレスさん凄い。
真っ白ではなく、これはオフホワイトかクリーム色なんじゃないだろうか。
襟元と袖口に透明なビーズみたいなものが縫い付けられていてキラキラしてて綺麗だ。
「お飾りはシャスティン様から既に頂いてますからご安心下さいね」
お飾りってなんだろう?
質問する前に顔に出てたらしい。すぐセレスさんが教えてくれた。
「首飾りや髪飾り、耳飾りなどですよ。此方です」
見せてくれたものは青い石をあしらった髪留めと同じ色の石を使ったペンダント。
そしてパチンと挟むタイプのイヤリングだった。
ペンダントもイヤリングもとてもシンプルで、ちょっとほっとした。
貴族って感じの豪華な感じだったらきついなと思っていたから、だと後で気づいた。
「これで謁見の時も慌てなくて済みますね」
「はい!動き易い衣類をありがとうございます」
「いえいえ。お気に召したなら色違いで似たデザインの物をご用意しましょうか?」
一も二も無く頷いてお願いした。色は緑がベースの方がいいと言ったら凄く喜ばれた。
「私も緑が好きなので、嬉しくなってしまいますわ。有難うございます」
お礼まで言われてしまったのだから、苦笑するしかない。