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介護士、クローバー兄妹と引き会わされる

 ノックの音がした。


『あの王子だよ』


エリアルが直ぐに教えてくれる。


「起きています、シャスティン様。どうぞ」


『聖騎士の末裔(すえ)も一緒』


エリアルの隣に腰掛けたダァムも教えてくれた。


って、いいのだろうか?人間に姿を見られても。


ふと思いついて慌てる私に妖精たちはくすくす笑った。


『いいのいいの』

『あの子達なら構わないから』




彼らの言葉通り、部屋に入って来たのはシャスティン様だけでは無かった。


緑髪の男女。って、まだ若いな。15、6歳って所?


「おはよう。早朝に済まないオリカ殿」


シャスティン様は少し後ろに居た彼らを目で促した。


「彼らは私の後見人の家族なんだ。さ、2人共……」


シャスティン王子より頭2つ分低い2人はそれぞれ笑顔で名乗ってくれた。


「初めまして聖女様。私はレオパルド=クローバーと申します。シャスティン王子付きの近衛騎士です」


「セレスティア=クローバーですわ。クローバー公爵家の次女ですの。よろしくお願い致しますね」




3人の視線は私に纏いついて離れない妖精達に集中していた。


「見えてるし、気になるんですね?」


自己紹介する前に、ついそう口にしてしまう。


「ってやっぱり!聖女様見えていらっしゃるのですね?」


セレスティアさんが興奮気味に寄ってくる。


貴族のご令嬢なのに一気に寄って来たんだけど。


ってか、息が掛かるって近い近い!なんだかフレンドリーな人だな。


「済みません、挨拶が遅れました。和泉織香と申します。オリカと呼んで頂けたら幸いです。あと……」


聖女と呼ばれたくない。そう付け足した。


すると、シャスティン様が鼻を鳴らしてこう結んだ。


「そうはいかない。貴女は間違いなく聖女なのだから」




 何を根拠にそんな事を言うんだろう?


『オリカ、まずは座ったら?』

『そうそう、腰を据えて話し合ったらいいよ』

『私達の事は気にしないでいいから』


妖精達が私を宥めるけれど、大きく頭を振った。


一度6人の妖精を見てから、シャスティン様達に向き直る。


「妖精達に祝福を貰いました。そして聖女召喚が禁忌とされたという情報も。

正直、頭が混乱しています。私を聖女と呼ぶ理由はこの髪と瞳の色だけでは無いのですか?」


確か、髪や目についてはそう言ってた気がするから。

そう話したんだ。




 シャスティン様は私の前に進み出て視線を合わせるように屈んだ。


「オリカ殿、貴女が妖精から祝福されている事が理由の一つ。

後……これはまだ非公開なんだが。獣人族や魔族からも使いが来ているんだ」


「聖女の身柄の引き渡しを望んで。ですか?」


「……何故分かった?」


「当て推量です。深刻なお顔をしていたので」


僅かに顔を歪めると、私の手を引いた。


「座って話をしたい。いいだろうか?」




適当に言ってただけなんだけど私。

まさかドンピシャに当たるとは思って無くて閉口してしまう。


「獣人や魔族にとって聖女は特別なのだよ。人間とは敵対していた彼らとの架け橋であり、恩人にあたるのだから」


そのせいか、聖女の魔力には敏感で直ぐに気付いてしまうらしい。


「初代王妃は聖女でいらして。戴冠式には高位の獣人や魔族が集い、祝福しました。国王以上に崇められたと聞いてます」


黙っていたセレスティアさんが そう続けた。


つまり、聖女を特別視している彼らからのアプローチも重なって信憑性が増し増しって事なのか。


『ああ、使いの子達?まだ都に居るよ』




エリアルの言葉に思わず肩が跳ねた。


「オリカ殿?」


「シャスティン様は妖精の言葉が分からないんですか?」


「ああ、分からない。何と言っている?」


「使いの子達はまだ都に居る、そう話してくれました」


シャスティン様は、ああと苦笑した。


「王都には獣人街や魔族街がある。そちらに宿を取っているらしいんだ。いずれもかなりの有力者が来ている」


声音はかなり固い。私は……どうなるんだろう?




 ふわりと薔薇の香りがした。


「許可無く申し訳ありません、せ……オリカ様。私共が付いてますわ!クローバー公爵家が必ずお守り致します」


正面きって抱き締められるとは思わなかった。

あったかいし綺麗だしいい匂いがするしで、ちょっと目眩が。


「セ、セレスティアさん……」


あたふたしていると、背後から抱き寄せられた。


「理不尽にも巻き込まれて、さぞ腹立たしかったでしょうね。

オリカ様、我等が総力尽くしてお助けします。どうか、今は私達を信じて下さい」


ってレオパルドさん?

これ、ムスクかなあ。セクシーでまたまたいい匂いだなあ。


ぼんやりしてしまう私を、更に別の方向から引き寄せる腕があった。


「オリカ殿?顔が赤いが……」


言うが早いかシャスティン様は私を横抱きにして立ち上がるから頭が真っ白になった。


「だ、大丈夫ですから下ろして下さい!」




顔に感じた熱が引いたのを確認してから、改めて口を開く。


「クローバー公爵家の事を教えて下さい」


3人は顔を見合せ微笑んだ。


「勿論だ。私が話していいだろうか?」


シャスティン様は、要点だけ話してくれて。

私が知りたい事を質問し、情報は取り敢えず得られた。


クローバー公爵家は魔族と戦った聖騎士と賢者を初代とする由緒ある家柄で、その人材の豊富さは世界的にも有名なんだとか。


そんな凄い家から助けて貰えるなら、渡りに舟だ。


「私にはもったいない位の申し出ですね」


よろしくお願いいたします

そう頭を提げた。


「オリカ様は堂々としていて下さい」


「家から選りすぐりの侍女と侍従を連れて参りましたの!食事の際面通し致しますので楽しみにして下さいませ」


私とクローバー兄妹のやり取りをシャスティン様はにこやかに見守っていた。


「では、食事としようか」


言い置いてから手を叩いたのだった。

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