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介護士、自身の変貌に混乱する

 混乱しながらも、どっか私は冷めていた。


私は、35歳のごくごくフツーの女で介護やってて。


夜勤明けに、たまたま実家に寄って家の用事済ませて戻って仮眠してたんだよ。


うん、間違いない。私は間違ってない。うん、うん。




そうなると……


目の前にいるこの有り得ない美丈夫が私の知ってる日常を覆してるって証拠そのものじゃない。


(や、イケメンなんて言葉で表現するにはこの人美し過ぎるから!この表現は妥当)


ここは私の居た世界ではありえないんだ。


……とはいえ。


私を聖女と呼んだこの人を不安にさせてしまうのも、どんなもんだろうね?




そろりと顔を上げたら、美し過ぎる顔がすぐ傍に。


奇声を上げそうになるのを堪えながら、バッと掛け布団を引き上げた。


「済まない。年若いとは言え女性に対して失礼だったな」


ちょっと失礼な私の態度に起こる様子もなく少し離れて、それでもベッド(なんか豪華で。気付いてから驚いた)のヘリに腰掛ける。


ああ、声もいい!ずっと聞いていたくなっちゃうなぁ……




って、あれ?年若いって今言った?


掛布団を下ろして、この人に向き直る。


「私これでも35歳なんですが……どうして若いなんて仰るんですか?」


この人、大人っぽいけど二十歳前だよね?


不思議で仕方なかった。




これに驚いたように一瞬目を見張り。


暫く顎に指を当てて考え込んでから、静かに告げた。


「貴女は成人前のように見受けられたのだが。それが真実だとすると驚きだな」


待っていて欲しいと告げて一度部屋を出て、手に何か携えて戻ってきた。


「見て欲しい」


差し出されたのはキラキラした手鏡。手渡されるままに受け取り覗き込んだ。





 パリーン!


持っている事が出来ず、手鏡が床に落ちてしまう。


体の震えが止まらない私を、ふわりと温もりが包み込む。


「こ……んなっ?!」


「貴女が知る貴女の顔では無かった、か?」


「髪が……目がっ!」




私が覗き込んだ鏡に映ったのは10歳ぐらいの女の子。

あり得ない位可愛い。


一番驚いたのは髪と目の色が銀に変わっている事。


典型的な日本人って色彩しかなかったんだよ、私。


なんで?どうして?考えても答えなんて分かる訳もない。




「異世界から来た副作用かもしれないな。本当に申し訳ない。非は、一方的に弟にある」


優しく背中を撫でられながら囁かれて、ふと気付く。


私、私……だ、抱き締められてる?


「うあ、あ、あ、あ?」




顔が火照り、頭が真っ白になってしまい……


「聖女殿っ?!」


そのまま気を失ってしまった。




私は知らない。


「あれの罪は計り知れない。早く見つけ出して謝罪させねば……」


それだけでは、到底済ませられないがな。


腕の中の私を見詰めながら、彼がそう呟いたのを。





和泉いずみ 織香おりか35歳。


しがない介護職員……の筈なんだけど。


私がこの世界に来た理由諸々を知らされるのは、目覚めた時になる。









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