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介護士、街に出る

 今日は、セレスさんや護衛騎士の二人と一緒に街に出る事にした。


一般教養や必要になる礼儀作法もそれなりに形になり、この世界に来て早や十日目……感慨深い。


「いや、オリカ様は色々出来過ぎだから」


オラトリオがそういうともう一人も苦笑しながら頷いた。


「そんなものかしら?」


生活上必要になるであろう事を取り敢えずは知らないと。


元々勉強は好きだったし、知らない事があるとより燃える方だったっけ。


学生の頃の事を思い返して目を伏せた。




この外出を決める時、結構揉めた。


過保護なシャスティン様をはじめ、オリヴィオ様、果ては仲良くなった宮廷魔術師達がこぞって同行を申し出てくれたからだ。


騎士達に至ってはそういう時くらい自分達に行かせろと護衛騎士達に詰め寄った程で。


「シャスティン様やオリヴィオ様は却下です!ご多忙なお二人にそんな事させられません。

魔術師長マーリン様も笑ってないで皆様を止めて下さい。髪も瞳も術で色を変えて行くので滅多な事にはなりませんから!」


騎士達の熱意は嬉しかったけれど、今回はこんな提案をした。


「明日の午後、また騎士棟にお邪魔しますから」


その時の差入れを買いに行かせて欲しい。


そうお願いしたら了承してくれたんだけど、皆俯いてしまった。


「察して下さいオリカ様」「聞かないでやってくれ」


護衛騎士の2人に窘められて不承不承ながらも頷いたのだった。


侍女の皆も行きたがったけれど、セレスさんには敵わなかったらしい。


結果、私と護衛騎士の2人とセレスさんの4人で街に出る事が決まり……


「おお~!」


お城の通用口から出て街に出た。




 遥か上にある立派な作りの門に思わず声が上がる。


「いい作りしてるわね。ただの白じゃなくてほんのり卵色がかって……ホント綺麗」


色々術が掛かってて耐久性もいい。

施された彫刻は華麗かつ精緻に金で獣の姿を模していた。


異世界と言えば私の中ではドラゴンなんだけど。

ここのドラゴンと思われる獣は、○ラゴンボールあたりに出てくるというか。

日本昔ばなしあたりに出てきそうな長い龍の姿をしていた。


「クルルに似てる」


クルルはふさふさした毛皮があったし、鼬の変種かなんかだったんだろうか?


「あの動物はファードラゴンの幼体ですわよ、オリカ様」




セレスさんの言葉に軽くショックを受ける。

この世界って龍に毛皮があるんだ?!


「とても珍しい個体で、変異体として生まれるんですわ。魔力も高いですし、姿は小さいですがとても強くて、しかも気に入った者にしか触れさせないし力も貸さないんです」


あのやたら人懐っこい子がねぇ……


「まあクルルに嫌われてないならいいわ」


「オリカ様を嫌える存在は居ないでしょうね」


セレスさん、やたら持ち上げるのはヤメテね。




 城門を七つ潜って、漸く街に出る事が出来た。


門一つ潜ると道が三方向に分かれていて、私達はひたすら真ん中の道を選んで歩き続けた。


あの神殿で感じた気配みたいなものがしたのは三番目の門を潜った後。不思議に思って聞けば、こう返された。


「王城と生命と死の神の神殿は、神殿の中では一番近くにあります。専用の抜け道まである位に」


ジオヘルグの説明に頷く。


「重要な場所だからね」

「ええ」


見上げればジオヘルグと目が合った。


「オリカ様は理解が早い。説明し甲斐があります。

それにお若いのに落ち着いていらっしゃるので、此方も安心です」


「外見はかなり可愛らしくなっちゃったけど、中身は中年なの。そこいらのお嬢さん方とは違ってても無理ないわ」


ジオヘルグといいオラトリオといい、かなりの美男だし侍女達からも注目されまくりだからね。

無骨な感じのジオヘルグは特にやりにくそう。お察しします。


「では、そろそろです。薬師ギルドに到着します」




私はこの世界で流通している薬草とかを知りたかったんだ。


既に国王様から一筆頂いているし、私の事もオリヴィオ様が伝えて下さっている。


どんな病気があり、どんな治療をしているのか。


今回それを教えて貰って私がどれだけの事が出来るのか、分かる範囲で知りたい。


私のスキルがどこまで通じるのか分かればより役立てる筈だから。


それが終わってからになるけれど、市場を巡ってみたい。


「オリカ様は凄いですね。俺……じゃない。

私だったら無理やり連れてこられてここまで熱心になろうとは思わないですよ」


“軽口はオラトリオのトレードマークになりそうね”


内心そう思いながら頭を振る。


「シャスティン様や国王様の事を思えば無碍には出来ないでしょ?」


「あの方のご苦労は並々ではありませんから。お察しします」


ジオヘルグ、本当にブレないね。


緊張と期待に手が震える。


重厚な木の扉をそっと押したのだった。



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