介護士、別れを惜しむ
お城に戻って来てから、セレスさんやレオ君を交えてランチを楽しんだ。
妖精達は、また来るからと手を振ってから姿を消した。
ダァムが名残惜しそうに私の頬にキスして消えたのを見て、エリアルが目を怒らせてたのが印象的だった。
お友達なんだし、気にする事じゃないと思うんだけど。挨拶でしょう?
シンとリュオンは食い入るように私を見ていて。
「「……その手があったか」」
綺麗に揃ったセリフに苦笑する。
「何言ってるんだか」
魔族と獣人族って仲いいんだなあ。
感心してしまう。
「聖女が取り持った仲なんですよ」
「そう、マドカがな」
マドカ……和風な名前だなあ。
「何なら見てみるか?」
差し出されたのは……
「写真?この世界にあるのね」
向こうの世界では珍しくない、写真だった。ちゃんとカラーの。
「これはマドカが風景を切り取ってくれたんだ。あいつの独自の魔法で切景とか呼んでたぞ。
シャシンはカメラとやらが無いから無理だとか言ってたな」
そこに映っていたのは獅子の顔を持つ獣人の女性とシン、クルル。
その真ん中に黒い騎士の服を着た銀髪銀目の女性。
和と洋両方の要素を伺わせる美貌の持ち主で、かなりの長身だ。
「何もかもが桁違いの女で……しかもマドカは聖女なのに剣を振るって戦ったからなあ」
聖女と言えばかなり平和なイメージなんだが、シンの話からするにまるでヒーローではないか。女性だからヒロインか。
「ジャンヌダルクとか、あんな感じ?」
シンはオリカの言葉に大きく頷いた。
「ふらんすだったかの英雄なんだってな。神の声を聞いて勇敢に戦った少女。マドカはニホンとやらに住んでいた混血児だったんだと」
ジャンヌダルク知ってるんだ、改めてシンも凄い。
切景かあ、凄い。
シンに返して呟く。
「私にも出来るかなあ」
今、こうしている皆の姿を手元に残しておきたい。
「オリカの魔力なら大丈夫だろ。やってみたらどうだ」
きっと理屈じゃないんだ。
マドカさんオリジナルって奴なんだろうけど、要はイメージ。
彼女と同じ位の魔力が私にはある。
「オリカの方が魔力は大きいぞ」
さいですか。
あ、今は割合メジャーな魔法?
生み出したのはマドカさんだけど。ふむふむ。
「シン、リュオン。此方に寄って」
私の両隣に二人を呼び寄せて肩に腕を回した。
ふあさり……
空中から何かが舞い落ちる。
「よし!」
拾い上げ、見てから思わずガッツポーズをとる。
肩を組んだ私達3人の姿だ。きっちり足元迄切り取れていた。
同じ物が3枚あるのは勿論2人に渡す為。
「有難うございます」
「大したもんだな、オリカ」
切景の中の私達は微笑んでいた。
「コツは掴んだわ。あまり力も使わないし、これからは記録として使おうかしら」
二人はこれから帰路についてしまう。
今更ながら淋しくなった。
帰り支度をしたシンとリュオンと固い握手を交わした。
「切景有難うございます。大切にします」
「次会う時のために色々用意しておく。またな」
この世界には月が13個あり、日は28日しかないらしい。
ひと月週が四つあり、一週間はあちらと同じ7日
神殿に行った日は3の月の21日だから、約束の日は6の月の21日になる。
正式な書面の認め、クォーツ王国、獣人族の国、魔族の国それぞれに残す。
私、全く教わって無かったんだけど読み書きが出来た。
スキルは知っていたけど、改めて驚かされた。
「オリカ、いい字書くんだな」
「サイン、楽しみですね」
リュオン、何?その悪い顔。
「ふふ、約束の日迄の秘密ですよ」
楽しそうだから、いいか。
二人が姿を消した後、暫くその場を離れられなかった。
「オリカ?」
部屋に戻っても私は少しぼんやりしてしまっていて。
はっとして顔を上げたら、シャスティン様が心配そうに此方を見ていた。
「もう少し滞在して貰った方が良かったろうか?」
「それは駄目でしょう。彼らだって立場があるんだし、また会えるんだから」
シンは英雄だった上現役冒険者。
リュオンは獣人族の王族。
自分からは言わないけど、やらなければならない事が山とある筈。
それなのに聖女の魔力を感知したが為に、わざわざこうして来てくれたのだから。
淋しいからって、2人を留めておくのは間違えている。
「移動魔法もこの際作っちゃえばいいかなって」
切景の話を聞いて思ったんだよね。
移動用の魔法ってあるそうだけど、何なら私がオリジナルで作っちゃえばいいんじゃないかなって。
折角色々出来る力があるんだから、それを生かす方に向かわないと。
「それでこそオリカだな」
ほわほわと頭を撫でられて、ちょっと擽ったい気持ちになった。
「これは父上から。明日は、午前中は勉強をし午後は自由にして欲しいそうだ」
「え、いいんですか?」
「三ヶ月あるんだから、無理はして欲しくないいんだそうだ。甘えておくといい」
ううん、性分だから出来ゃしないんだろうけどけどね。
でも取り敢えずは……こうして気にかけてくれてるシャスティン様の顔を立てておかないと。
「じゃあ!知りたい事を書き留めておきます!」
「対応出来そうな教師を頼んでおく。セレスティアも来るように話しておこう」
「有難うございます!」
明日からが楽しみだ!




