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介護士、【生命の証】の事を聞かされる。

 晩餐が終わって部屋に戻ったらセレスさんとレオ君が出迎えてくれた。


部屋に着くなり挨拶だけして行ってしまったシャスティン様の事を、2人は楽しそうに話してくれた。


明日の予定を伝えると同時にこの世界で生活する上で必要になる基礎的なところを説明する役目を、2人に託したんだとか。


改めて、彼の気遣いに感謝した。


「シャスティン王子は王子の中でも一番の行動力の持ち主でいらっしゃるから、何かと声がかかるんですよ」


でしょうね。


心で同意の声を上げたのだった。


話し易いし、聞き上手だし気遣いが出来るし。


理想的な人だよねって思うんだ。





その後小一時間この世界での事を教わった。


まず、この世界では3歳になると神殿に行き、改めて己の存在を登録するんだという。


その為高位神官は王族並に権力があるという。


「神殿って何を祀っているの?」


「勿論神様さ」


「大まかに全部の神様を祀る場所って事?」


暫く話合ってお互いの意思疎通が出来てなかった事に気付いた。


「この世界には神殿が幾つもありますが、個々人の存在を登録し記録する神殿は生命と死を司る神殿なんです。この世界で一番大きな神殿だと思います」


聞いていて結構疑問がわく。


「このクオーツ王国にある神殿が本部って事?」


「はい、初代王妃が作った神殿なんですよ」


他の国にも生命と死の神殿は存在し、同じような事を担っているんだそう。


「戸籍管理も担っているって事かな。とすると、神官ってどうやって選んでいるの?」


普通に雇用試験みたいなものはあり、その中でも魔力が強く適性がある者が高位の神官になるんだとか。


「神官は収入も待遇もいいんでね。それこそ城で働く侍従とほぼ同等なんだよ」


国家公務員とかと同じって思えばいいのかな、ふむふむ。




その他諸々、レオ君とセレスさんと話して分かった事。


一人、部屋で反芻する。


◎明日は午後から神殿で【生命の証】を授与され諸々説明を受ける。


◎この世界には色々神殿があるけれど、生命と死の神殿は殆どの国にあり有力な存在で。

個々人の存在を登録し記録する役目を担っている。


◎生命と死の神殿は、この世界の存在なら3歳になったら登録に行き【生命の証】を授かる事が出来る。


◎【生命の証】にはスキルや称号が記載されていて、適性も知る事が出来る。


◎【生命の証】は金属の板状になっておりその素材によって魂の格を知る事が出来る。


◎一部高位の神官や大臣の任命には【生命の証】の素材や記載が影響される事がある。





「しっかり仕事をして生活の目処が立ったら自活したいものね」


まだこの世界の通貨単位や相場が分からないから、暫くご厄介にならないといけないでしょうけれど。


あまり甘えているのも心苦しいし……


ああ、魔族国や獣人国にも行ってみたいかな。


正直、この世界には介護士なんて職業無いでしょうけれど。


妖精たちは帰れないって言ってるけれど、向こうの世界に帰る方法も探そう。


帰れないまでも、兄さんに何か残してあげたいのよね……シスコンだから、あの人。


いきなりいなくなった私をきっと心配しているだろうし。


って、今頃そんなことをやっと思う私って薄情かな。


一人滔々と考えに浸っていった。





「オリカは……城が嫌なのか?」


何時の間にこんなに傍に来ていたんだろう。


シャスティン様が私の隣に座っていた。


「え……?」


「……城を出たいという事ではないのか?」


疲れきっているのが見て取れるのに、目だけが切なそうに歪められていて言葉が出ない。


「無理矢理連れてこられたのだから……不愉快だろうな。でも、どうか城に居て欲しい」


抱き締められて、顔がぶわっと熱くなる。


だってこんな美丈夫にここまで構われるなんて事、向こうの世界では有り得なかったから。


「あのですね、シャスティン様。私はそれなりに年増ですから割り切りは得意なんです」


無作為にこの世界に召喚された事は、かなり腹立たしいと思っているけれど。


ロナウド王子以外の存在には不快感は無いのだ。


そう、話した。





「国王様も王妃様も本当によくして下さって、有難い限りなんです。だからこそ、それに甘えたくはなくって」


「甘えればいい」


優しく髪を撫でてくれるから、くすりと笑う。


「私もいい年ですから心苦しいんですよ。贖いのつもりもあっての申し出だとは思うんですが……って、済みません!」


思わずその胸に手を突いてそっと押した。


「シャスティン様、凄く疲れてるでしょう?」


早く休んで貰いたくて見上げれば、困ったように微笑んだ。


「話がしたくて来たんだが……いけないか?」


う~ん、そんな顔されると何も言えなくなるよねぇ。


「……有難う」





シャスティン様、面倒見いいだけじゃなくて甘やかし癖もあるのかも。


膝に乗せられて後ろから抱えられてるから、さっきより密着度が凄いけれど落ち着く。


「どうした?」


「人のお膝に乗るなんて子どもの頃以来で新鮮です。足、疲れませんか?」


「オリカは軽いから大丈夫だ。三日分くらいの仕事を一気に片付けたから確かに疲れはしたんだが、こうしてると落ち着くんだ」


「シャスティン様動物やら子どもに好かれそうですし、好きそうですもんね」


綺麗な琥珀色の瞳が細められた。


「分かるか?オリカは人をよく見ているな」


うん、介護士ってそういうのが仕事だもんね。


情報は一応復習うけど、様子を見て相手の現状を把握しようと務めるのは職業柄じゃないかな。


へらりと笑って躱す。


「長居して済まなかった」


そう言って部屋に戻って言ったのは月が高く登った頃。


晩餐がそこそこ早い時間に終わってなければ夜更けになってたかもしれないな。


『明日は、大神官の間で授与を行うから余人は入って来れない。安心してくれ』


まだ見ぬ【生命の証】に思いを馳せながら、寝支度を始めたのだった。












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