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介護士、異世界で目覚める
擽る様に髪を撫でる熱を感じた。
ううん、眠い。すっごく眠い。
寝返打ち、唸る私に触れる何かに意識が浮上する。
「ん、ユズ?」
実家に帰っていた私。
気ままな愛猫の名前を呼びながら手を伸ばし、わさわさ探る。
……あれ、何時もなら手をベロって舐めてくれるのにどしたの?
いくら探っても、あの慣れ親しんだ極上の毛皮の感触が無い。
代わりに___
「目覚めたか」
男の人の声が、した。
「……はぁぁあ?!」
飛び起きた私の目に飛び込んできたのは、やたらと豪華な天井と
「気分はどうだ?聖女殿」
獅子を思わせる精悍な美貌。
明らかに初対面の美丈夫だった___