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ひまわり  作者: うっちー
3/3

7年ぶりの再会

2学期の初日というのはどうにも憂鬱だ。1学期や3学期のそれも似たようなものだけど、2学期に比べれば大したことはない。しかも今日の予想最高気温は30度。尚更憂鬱になる。

 でも、楽しみがないわけではない。今月の半ばには文化祭、10月には体育祭、そして今年は2年生なので11月には九州への修学旅行がある。メインイベントが目白押しだ。とは言え、「夏休みが終わらなければいいのに」と思うのは僕だけではないだろう。

 期待3割と不安7割の中、僕は「行ってきます」と言って家を出た。

 僕が通う私立 蓮桜(れんおう)学園高校は、機野町(はたのまち)駅から歩いて5分ほどのところにある学校だ。

「おはよう、陽也」

「おはよう、片桐君」

 教室には、暁人や美雪さんをはじめ、多くのクラスメイトがすでに登校していた。3月の震災で節電が叫ばれている今、教室の中は明かりが消えている。でも、慣れていることもあって周りは僕も含めまったく気にしていない。

「いよいよね、転校生。どんな子なんだろう?」

「そうだね」

「そうだな。俺好みの子なら最高なんだけど…髪はポニーテールですらっと背が高くて、性格は良くてスポーツもできて…」

「出た、オタク。そういう話になると止まらないんだから、矢島君は」

そんな話で盛り上がっていると、担任の河野祐子先生が入ってきた。

「みんな、席について」

そういわれると、僕たちは各々の席に座った。ちなみに僕の席は窓際の真ん中あたりだ。転校生用にとっておいてあるのか、隣の席は空いている。

「おはようございます。今日から2学期ですね。1学期の時も言ったけど来年は受験で忙しくなります。なのでやりたいことがあれば今のうちにやっておくように」続けて先生が、

「それと、もう知っている人もいる人もいると思うけど、この2年6組に今日から新しいクラスメイトが来ます。しかもとびっきりの美人です!」と言うと、クラス中がざわついた。特に男子は大喜びだ。

「じゃあ上原さん、入ってきて」と言われ、転校生は姿を現した。その姿は、7年前に引っ越していった歩海そのものだった。ボーイッシュだったあの頃に比べるとかなり女の子らしくなったけど、ポニーテールは昔のままだ。

「陽…くん?」と歩海が呼びかける。

「歩海?」と僕も返す。

「わぁ、久しぶり!元気だった?」歩海は嬉しそうに言いながら僕のところに寄ってきた。

「うん、相変わらず。歩海も元気そうだね」

「もちろん!」

この状況に周りも黙っていない。

「え?片桐、あの子とどういう関係なの?」

「もしかして、恋人?それともただの友達とか?」

などと、質問攻めだ。僕は笑ってごまかした。

「みんな、ちょっと静かに…じゃあ、自己紹介をお願いします」

先生に言われると歩海は黒板に戻り、自分の名前を書いた。女の子らしい綺麗な字だ。そして、名前を書き終えると歩海は自己紹介を始めた。

「すいません、突然の再会で舞い上がっちゃいました…。皆さん、はじめまして。上原歩海と言います。沖縄県立 緒諸(おもろ)高校から来ました。1年半と言う短い期間ですが、これからよろしくお願いします」

周りが拍手をする中、河野先生は歩海に聞いた。

「上原さん、ひとつ聞いてもいい?」

「いいですよ。何ですか?」

「さっき『久しぶり』って片桐君に言ってたけど、上原さんは、彼とどういう関係なの?」

「実は私、3歳から7年間ずっと東京に住んでたんです。陽也君はその時のお隣さんで、いつも一緒に遊んでました」

「なるほどね、筒井筒(幼なじみ)って訳か。じゃあ、そんな上原さんは片桐君の隣ね」

「分かりました」そう言って歩海は僕の隣に座った。

「陽くん、よろしくね!」

「こちらこそよろしくね、歩海!」

そういえば、小学校の時も歩海は僕の隣だったな…僕は一気に懐かしさを感じた。

ホームルーム、そして始業式が終わって休み時間になると、歩海のもとにクラスメイトが集まっていた。

「片桐君のことは好きだったの?」

「誕生日はいつなの?」

「放課後でいいからさ、メアド教えてよ!」などと、こちらも質問攻めになっていた。それに対して歩海は笑顔で答えていた。

そういうわけで、2学期は歩海との突然の再会で幕を開けた。これからどうなっていくんだろう?歩海のおかげで楽しい学校生活になりそうで、朝の憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれそうな気がした。

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