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三月の影【春の詩企画】【第二回 初恋企画】

作者: 古都ノ葉


沈丁花の香が漂う



日差しは目を射ることが多くなり、風は柔らかく頬を撫でる。

道ゆく人は足早に、軽くなったコートを舞わせながら通り過ぎた。


なのに私は影がない

あなたが勝手に連れて行ってしまった


〈――いらっしゃい、いらっしゃい! パステルカラーのお嬢さん〉

〈――買ってゆきなよ、そのスカーフは今年の流行だ〉


ネモフィラの青い花絨毯に腰を下ろし 雲の行方を追いながら

遠い山の峰につぶやいた

「あなたはどこにいるのか」

そして 

「もう戻っては来ないでしょうね」



予感がなかったわけではないけれど、旅立たれるのは唐突だった。

好きだという言葉も

一緒に居たいという希望も

私は口にすることができなかった。



いつか――会える時が来ても あなたは私を覚えていないでしょうね

都会が大地を忘れるように


風の唄が届かないから

二人の時間は交わり合わない

ただ指さきの憂いが寂しさを投げかけて来る



あなたは私の影を連れて行ってしまった


私には沈黙しか与えてはくれなかった



ゆるゆると過ぎし春

沈丁花の香に包まれて 私は






挿絵(By みてみん)




読んでいただきありがとうございました。



本作は「春の詩企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2230859/(志茂塚ゆり活動報告)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーがあって意味が分かりやすいですね。 悲恋の詩なのでしょうか? 思い人がさり、自分は当てもなく生きるしかないような切なさが伝わってくるようでした。
[良い点] 沈丁花の香りが全体に行き届いて、美しい表現を支えていると思いました。 影がない、指先の感覚、とてもリアルに伝わって来ます。 お見事です。 [気になる点] 追いかけるという選択肢はなかったの…
[良い点] 寂しさについて語られているようだけれど、悲しさや切なさとはちょっと違う、不思議な落ち着きを感じる詩ですね。 熱くならない感じが、古都ノ葉さんらしさなんだなと思います。
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