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彷徨い歩く

作者: からくり

水がピチョンと落ちる音が聞こえる。


手の入ってない庭に風がサァーっと吹き抜ける。


廃墟か廃都か。


少なくとも戦禍に巻き込まれた訳ではないのは見て取れる。


家々には蔦が自己主張をするべく張り巡らされ、何より生活感がない。


何年、何十年、放っておかれたのだろうか。


家の気持ちなぞ理解も出来ないが。


道を歩く。


整備されていないアスファルトの上を歩く。


ただひたすらに。


途中で途切れているアスファルトのその先はひび割れた土が広がっていた。


ここ数日雨が降っていないのだろう。


ミミズがカラカラに干からびていた。


亡骸を超え、歩く。


目的もなくただただひたすらに歩く。


自壊により半壊した家。


前の持ち主に変わって蔦が支配している家。


色が剥げている家。


思う所は何も無く、ただただ歩く。


その中ずば抜けて綺麗な家を見つけた。


ふと足を止めた。


何かが気になった。


鋭い感があるとか、霊感があるとか、そんなんじゃあなく。


漠然と何かが気になった。


足を向ける。


一歩踏み出す度に本能が叫ぶ。


危険だ、と。


それについて考えようとするも、足は家へ向かってしまう。


玄関は開いていた。


勝手にお邪魔させてもらうことにした。


生活感がある家だ。


他の家と違う。


綺麗に整頓されている玄関口。


靴は並べられ、余分は下駄箱に並べられている。


革靴はしっかりコーティングされているのが目にとってわかる。


土足で入り込むのも悪い気はするが、かと言って拭くものもない。


仕方が無いので心の中で謝罪しながら入り込むことにした。


少し先の扉からいい匂いがする。


何故。


玄関の近くには2階へ上がる為の階段。


真っ直ぐ先の扉からいい匂いがする。


何故。


2階を見るのは後回しにして先に扉の向こうを見ようか。


本能が再度告げる。


やめておけ、と。


だが、だが、抗いきれないのだ。


好奇心に。


扉を抜けると。


至って普通のリビングだ。


普通の。


食卓に食器は並べられ、食事が始まるのか終わりかけなのかはわからない。


新聞が折りたたまれて置かれている。


キッチンには洗い掛けの食器、切った後の食材の残骸。


何故か動いている音がする冷蔵庫。


テレビは電源が落ちている。


ホコリひとつないフローリング。


至って普通のリビングだ。


これ以上、


これ以上ここにいてはいけない。


戻るのだ。


宛もなく歩く作業に戻るのだ。


そう決めて振り返ろうとすると、


「珍しいね、こんな所に誰かがいるなんて」


声がした。


「ここはね……事件があった場所なんだ。テーブルに朝刊が置かれているから、恐らく朝食の後。ここに住んでいる家族全員が消えた」


声から歳を判断できない。


「聞き込みをしても、探しても、足取りを辿っても、どこにもいなかった」


何故か後ろを振り向けなかった。


「突然、そう突然消えたんだ。一家丸ごと全員が。その事に気味悪がってこの辺りの住民は皆引越ししたよ」


床に足がついていない感覚がする。


「もちろんその後に引越ししてくる人もいない。故に廃墟が連なっているのさ。さぁ、こんな気味悪いところにいないでどこかへお行き」


突然地に足がついた。


ようやく周りを見渡すとそこは廃墟ではなく、普通の街。


喧騒賑わう普通の街。


あれは一体なんだったのだろうか。


夢か幻か。


はたまたもしかすると。


まぁ、そんなことは猫の私には関係の無い話だが。


先のことはさっさと忘れ、今日もまた宛もなくさまよう。

ここまでお読みくださいましてありがとうございます。


性癖を詰め込んだだけ!!


です、はい。


それではまたどこかで。

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