この孤独を共有できることを祈って
ボッチとは何であろうか。初めて孤独を感じたとき、あるいは初めて疎外感を感じたときを思い出してほしい。まさに周囲の中でただ一人自分だけが惨めで、取り残された気持ちにならなかっただろうか....。俺、府中糖拒は現在東京の私立大学に通う一年生である。小中学校の頃は、友達はけっこういたが、なぜか歳を重ねるにつれて友達は減っていき、大学生になると友達は0人になってしまった。辛さと悲しさと惨めさが毎日襲ってくる.....。
「そもそも大学生になってまでクラスとかいらねぇんだよ」俺はため息をつきながらそう口した。このお話を聞いてくれている方々へ先に言わせていただきたいことがありまして、この話は誓って俺の実体験であることを明言しておきましょう。物語のフィクション要素は環境と登場人物くらいかな。そうでなきゃつまらないからね。さて、この物語のイントロダクションとしてはそろそろ潮時だね。
春、それは新たな生命の芽生えと同時に、新生活の始まりの季節でもある。入園式、入学式、入社式。年齢に違いはあれど、次なる環境へ移行することはみんなが一緒のことである。俺は、地元愛知からはるばる上京してきて、某私立大学で入学式を迎えるのだが....。その前に、新歓の話をしようか。
「一年生ですか?おめでとうございます。大学生活楽しいことばかりだから、サークル入って、コンパして、ほんと楽しいよ‼」俺は、大学の入り口入ってすぐ二人の女子大学生にそう呼び止められた。
「そ、そうですか..」こんな反応しかできない俺はラノベの主人公達のように、考える時間もなかったので、とりあえずそう答えた。「何かサークル入るとこ決めてますか?」二人の女子大生のうち髪の長い方が、片手にチラシを持ちながらそう問いかけてきた。
「いや、まだ何も決めてないです。これから見て回ります。」俺の返答が予想通りだったらしく、すぐにその手に持っていたチラシをの説明に入った。
「英会話のサークルで、実際に外国人留学生の人とディベートだったり、会話だったりしてもらって、実践力を養うことを目的としています..」
長々とした話を、チラシを持ってないほうがするため、俺はただ、うんうん顔を縦に振るだけであった。
「どうかな?今日の19時からある新人コンパにさんかしないかな?参加費は1000円で、飲み放題、食べ放題だよ‼」自分の時計をチラッと確認すると、13時を回ったところであった。
「そうですか...。えっと、夜ご飯家族で食べる約束していて、次の機会があったら参加させてください」これが今即興で考えられた最善だった。
今まで、みんなでワイワイしている空間にいてロクな経験がなかったので、ここは戦略的撤退が自衛には最優先である。惨めな思いをしないためには、その要因を作らないこと、強いてはわざわざそういう環境に身を置かないことである。
女子大生2人からの勧誘を無事断れた俺は、新歓にわざわざ足を運んだ当初の目的を果たしに行く。念のために言っておくと、新歓とは新1年生を歓迎する会のことである。
かなりの人がサークル勧誘を行っており、四方八方で話し中である。この群衆を切り抜けるために、かなりの時間が必要であった…。
15分くらい経過したであろうか、俺は大学内の一番奥の各サークルのブースが出てる場所へ到着した。
しかし、問題発生。コミュ症でぼっちな俺は全く新しいコミュニティにどう話を切り出せばいいかわからない…。
「はぁ…、ほんといつも妄想している自分のようにはっきり話せたらいいんだが」 思わず心中を吐露しかけてしまった。
「こんにちは。ここに来たってことはそうゆうことなんだよな?」ブースに座っていた、帽子をかぶった小太りの男の先輩にそう言われた。
「あ、はい。気になって…」 相手の目を直視できないので、目を斜め下に、つまり先輩の襟元を見ながらそう答えた。
その場所は、広いキャンパス内の一角で、植えられた木々に囲まれた綺麗なところだった。春なのに風は生暖かく、その日は25度近くにのぼっていた。木立は揺れ動き、その息吹に俺は、少し当てられつつあった。
「りょーかい。そんならそこの椅子に座ってやー。テーブルの上に置いてある声優本や、アニメ雑誌見て待っててー」 先輩は楽しそうにそう言い残すと、その場を駆け足で去っていった。
俺、府中凍拒は陰キャラアニメオタクである。見た目は、目つきの悪い三白眼である。だから、アニメキャラのキメ顔三白眼とは訳が違うのである。体型は筋肉質に近く、身長は170cm、体重60kgだ。あと、髪はロン毛。
「とりあえず読んで待っていよう。」テーブルの上の雑誌数冊をペラペラめくってみると、衝撃文庫のG'sマガジン、このラノベがしゅごぉい、声優グランブルが置いてあった。
「俺の定期購読である衝撃G's マガジンを読むしかない」声優グランブルの表紙がチェリー綾音さんであることが気になったが…。
ペラペラめくっていると、戻ってきた先輩に入部手続きの話をしてもらい、とりあえずその場は後にした。
そして、速攻帰宅である。
新たな地東京では拠点をどこに置くか非常に苦労した。なぜなら大学からの距離を優先させるとどうしても土地代が高くつくからである。ただ、うちは裕福な家のもとに生まれたため家賃は気にせず大学から程よい距離の場所に落ち着くことができた。
アパートのオートロックを解除し、一階にある自分の部屋に向かう途中この後の四年間が非常に不安に思えた。「俺は、どうやっていくのだろうか。地元からやってきた人は一人と聞いてたし.....。」そしてそのままベッドへ倒れこむように眠るのであった......。