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東方・幻想書紀  作者: 平民
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化物の散歩2

お久しぶりです、なんか唐突に思いついたんで書きました。次の話は未定です。

「よっと……さて」

 地底に降り立った彼はきょろきょろと見回して、奥へ続く道を探す。程なく木の橋を見つけた彼はそちらへ歩いていく。そしていざ渡ろうとすると、後ろから声をかけられた。

「ここから先は危険よ、貴方みたいなただの人間には。悪いことは言わないから引き返した方がいいんじゃない?」

 青年が振り向くと、そこには金髪で緑目の、まるで外国人のような出で立ちの少女がいた。

「……君は?」

「私は水橋パルスィ。この橋と通行人を見守る妖怪よ。別の側面もあるけど」

 最後の方だけボソッと話す彼女。対し青年は今のところ名前が無いことを告げ、しばし思案顔になる。

「……何か?」

「……違ってたら失礼だけど、若い女性に恨みを持ってたり?」

「あら、大筋は当たっているけど本当に失礼ね。確かに嫉妬の妖怪でもあるけど、目の敵にしてるほど恨み僻んでなんかないわよ。まぁ妬む時もあるけど」

「そうなのか。この前読んだ物語に、この橋と似たような場面のお話があってね。申し訳ない」

 それからも少し話に花を咲かせ、地底に来た理由が興味であることも話題となった。パルスィもやはりというか呆れていた様子で、青年の話を聞いていた。そうして彼が先へ進む頃。

「さて、それじゃそろそろ先に行くよ」

「えぇ、気を付けてね。好奇心はいいけど、身を滅ぼさない程度にね」

「あはは……ありがとうね。じゃあ、また」

 彼はパルスィに軽く手を振って橋を渡り、彼女は橋の欄干に腰かけぽつりと呟いた。

「名前が無いのに交友が広いなんて、妬ましいやつ」



 旧都


 あちらこちらから強めの酒の臭いがするそこは、誰彼から聞いていた程どんちゃん騒ぎという訳でもなく、そこが地底であることを除けば、至って普通の繁華街であった。

「案外普通の場所なんだな。もっと騒がしいのかと思っていたんだけど」

 独り言を呟きながらしばらく歩いていると、凄まじい敵意が彼の前に立ちはだかった。その正体は鬼だった。僅かながら酒の臭いもすることから、どこかで酔いつぶれた鬼を怨霊が乗っ取り、人間を襲いに来たのだろうか。

「うーん怨霊かぁ……散歩くらい平和にしたいものだけど」

 怨霊は、彼が丸腰であると認識するや否や一瞬で間合いを詰め、身体を潰さんとばかりに、鬼の剛腕を振りかざす。

「これ多分乗っ取られてるだけだから危害加えられないよなぁ……」

 彼は1度大きく後ろに下がり、深呼吸で気を整える。

「天狐、ちょっと借りるよ」

 怨霊は一瞬、ただの人間だと思っていた彼からとてつもない力を感じて怯んだが、すぐに彼と向き直る。

 怨霊と青年の目が合った刹那、彼が視界から消え、目の前で拳を振りかぶっていた。咄嗟に腕でガードしようと、怨霊が顔の前で構えた時、青年は待ってましたとばかりに、振りかぶった拳を解いて両の腕を掴み強引に左右に広げた。

 そして直後、地底にはとても鈍い音が響き渡った。

「っあ〜……痛ぇ……」

 なんと操られた鬼を頭突きで一撃ノックアウトしたのである。

 その質量によって巻き起こった砂埃が晴れると、そこには体操服のような衣服を着て盃を傾ける新たな鬼がいた。

 鬼の角には星のマークがついており、とても満足そうな顔をして青年を見ていた。

「いやぁ、いいものを見せてもらったよ。アンタ、なかなか強いねぇ?」

 青年は、この鬼は今は警戒しなくてもいいと悟り妖狐の力を解く。

「君は?」

「おっと警戒しなくていいのかい? 私は……いや、私たちは悪い鬼かもしれないよ?」

 彼は、「達」と言われ初めてその場にもう1人の鬼がいることに気が付いた。しかし姿は見当たらない。

「ん~、漂っている方も含めて、君たちはそういう意思はないと感じた。少なくとも今はね」

 なおも盃を傾ける鬼をまっすぐ見据えながら彼はそう言う。

「へぇ、私のことも見抜くんだ。これは、逆に私たちが警戒しないといけないかもね、勇儀?」

 喋りながら現れたのは、頭の左右に角が生えた、もう1人とは真逆の体躯の鬼であった。

「そうさね萃香。こいつの勘の鋭さは博麗の巫女並みかねぇ」

 勇儀と呼ばれた鬼は品定めをするように青年を見つめる。

「おっと紹介が遅れたね。私は星熊勇儀。こっちの小さいのは伊吹萃香」

「小さい言うな!!」

「そうか……俺は、名前がないんだ。何と呼んでも構わない」

 互いに紹介が済んだ後、彼女らがここに来た理由を尋ねると、先ほど青年が相手をしていた怨霊を鎮めに来たのだという。それが役目なのだとも。

「なるほど、一足先に俺がやっちゃったのか」

「そういうこった。まぁとりあえず助かったよ。周りに被害が出なくてよかった」

「荒事も済んだみたいだし、私は霊夢のとこに戻るよ。じゃあね勇儀、それと旅人」

 萃香はそう言い残し2人の横を歩いて去っていった。

「アンタはこの後どうする気なんだい? ここはあまり人間が立ち寄る所じゃないんだけど」

 この問いに青年は、ただ散歩をしているだけだと答える。

「散歩、散歩か! この地底を人間が散歩! いいねぇ、アンタ面白い。いつか私とも戦おうや」

「いつか、ね。どう見ても君は強そうだからあまり気乗りはしないけど」

「なに、退屈になったらここへ来い。相手してやる」

 お手柔らかに、などと軽口を言いつつ、彼はこの地底にはほかに何があるのかを勇儀に尋ねた。

「他って言ってもな……ここはあくまで地獄。鬼たちは酒と娯楽に溺れ、怨霊が跋扈する。それだけだな」

 いや待てと、彼女は何かを思い出した様子を見せる。

「地霊殿があるな。いつぞやに間欠泉の異変が解決して以来あそこの主も少し丸くなった感じだし、散歩なら行ってみればいいんじゃないか?」

「……地霊殿、ね」

 勇儀に行き道を教わり別れた後、彼は地霊殿を目指して歩き始めた。

 数m進んだ先で彼は視線のようなものを感じた。そちらを見るも誰もいない。萃香の気配ではなかった。しかしそれ以上気にすることはなく、再度歩みを進めたのだった。

過去曰くの「未来の私」は頑張りましたよ。なので次も頑張れ。未来の私。

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