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東方・幻想書紀  作者: 平民
4/9

化物の指南

 翌日 早朝

 カン!カン!と朝っぱらから木刀のぶつかりある音が響いていた。

「はぁっ! やっ!」

 掛け声とともに木刀を振るのは昨日から博麗神社に住まうことになった少女である。

「んー……」

 そうして振られた木刀を、何かを考えながら同じく朝っぱらから木刀を振って弾いているのはよくわからない力を持っている青年である。

 傍から見ればその二人の様子はとても言葉では表せなかった。なぜなら、一見ただの少女も青年も、木刀の残像がいくつも残るほどの速度で振っているからだ。

「せやっ!」

 カァァン!と一段と強く高い音が鳴り響いた。おそらくこの音で人里のほとんどの人は起きてしまっただろう。言わずもがな霊夢も、である。

 しかしこの音は、青年を追い詰め木刀を弾き飛ばした音ではなかった。ただ単に、青年が少女の木刀を止めた音だった。あの強く響いた音は、力と力の正面衝突によるものである。

「あなた達ねぇ!こんな朝っぱらからうるさいわよ!」

 と、響いて間もなく霊夢が怒鳴りながら来た。

「うん、ごめん。多分今の音は人里の方にも響いちゃってるよね?」

 対して反省した様子もなく答えたのは青年。本当に反省していない訳では無いと思うのだが……実の所はどうなのだろう?

「まったくよ……なにか苦情が来たらあんたが責任もって謝罪して回りなさいよ?」

「はいはい」

 と、霊夢と青年が話している合間、本気で猛反省していたのか少女はシュンとしていた。

「あなたはそんなに気にしなくていいの」

 どさくさに紛れて少女の頭を撫でる霊夢だったが、少女にするりと逃げられてしまった。

「……私が言い出したことなんです。今日の朝、稽古をつけて欲しいって」

「あら、そうだったの?」

「……はい」

 さりげなく責任はすべて青年が持つことになっているが、そこは気にしない余裕というものがあるのだろう。彼は何も言わなかった。

 逆に、事実を知った霊夢は少し悪い笑みを浮かべていた。

「じゃあ、あなたにはお仕置きが必要ね」

「……え?」

「えいっ!」

 霊夢は、少女が反応するより早く、脇腹をくすぐり始めた。

「ひゃんっ! や、やめっ……あは、あははは!」

 しかし、最初の声を聞いた霊夢はくすぐりをエスカレートさせた。

「あひっ、あははははは!」


 十分後


「……ふぅ、今日はこのくらいで勘弁したげる」

「はぁ、はぁ……も、らめぇ……」

 笑い疲れているだけなのだが、涙目になって呂律が回っていない。この部分だけ切り取れば少しエロっぽいのは気のせいだろうか?

「ああ、終わった?」

「う…ん……」

「もういい時間だし、顔洗ってきたらどう?」

「……うん」

 息を整えてようやく落ち着いた少女は、青年に促され顔を洗いに行った。

「あ、あんた今日暇?」

「あの子の指南以外はすることないけど。何?」

「妖怪退治の依頼に行ってきてほしいのよ」

「……霊夢は?」

「私は今日やることがあるの」

 青年は、「ふぅん……」と興味が無いのか信じてないのか微妙なところの返事をして、顔を洗いに行った。


 それから一時間余りの後。


 人里外れの森の中にて

「依頼にあった場所は多分この辺だと思うんだけど……」

 青年は、言われた通り依頼のお片付けに来ていた。

 しかし、どうにもこうにも、妖怪らしき気配は察知できない。人里からの依頼であるゆえ、おそらく本能で動く魑魅魍魎だと思うのだが、来る時間が悪かったのだろうか。

「朝だと出ないとか……そんな感じなのかな?」

 誰にでもなく彼はそう言い、もう一度集中してみる。

「あ……いた。けど何だろう……なんか違う気がする」

 とりあえず、彼はその気配のする場所まで行ってみることにした。

 果たして、そこにいたのは妖気を放つというよりも漏れ出ている(に近い)少女だった。

「……依頼の対象は君か」

「……こんなところに人? 珍しい」

 彼女は金髪で、白い肌に対照的な黒いドレスを着ていた。その背中には、小さなコウモリの羽が生えている。

「……吸血鬼?」

「あら、正解。て言ってもこれ見たら分かるか」

 そう言って彼女は羽をパタパタさせた。

 少しの沈黙の後、青年は話を切り出した。

「で、なんでこんなところに?」

「さぁ?」

「さぁ?って、わかんないの?」

「えぇ、気がついたらここにいたもの」

 彼は自身に近いものを感じながら、思案する素振りを見せた。

「それで、私に何か用? 依頼とか言ってたけど」

「あぁそうだった。あのね、この近くに人里があるんだけど、そこの住民から仕事場の近くに妖怪がいて近づけないから見てきてほしい、という依頼があったのさ」

 彼は事の詳細を彼女に話した。

「……なるほどね。たしかにそれは私ね、この辺り歩いていたら小屋みたいなのを見たし。とりあえず私がこの辺りから離れればその人の悩みは解決?」

「……まぁ、そうなるけど……離れたとしてどこに行くの?」

「それはテキトーに歩きながら探すわ」

 それなら、と青年は人里から少し離れたところにある「想像したら出来ちゃった家」に住むことを提案した。

「……いいの?」

「いいよ。俺は多分もう使わないし」

「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。ありがとう」

 彼は彼女に家の場所の詳細を教えて、神社へと帰っていった。



 同日の昼、神社にて


 青年は不思議そうな顔をした。

「あら、そんな不思議そうな顔をしてどうしたの?」

 吸血鬼の少女は彼に聞く。

「いや、いやいや、なんでここにいるのさ?」

 まぁ、青年が不思議そうな顔をするのも無理はないだろう。青年宅(仮)への道を教えて戻ってきたはずなのに、何故かそこには道を教えた彼女がいたのだから。

「ねぇちょっと、この子誰よ? 神社に帰ってきたら縁側に普通に座ってて驚いたんだけど!?」

 と問うのは霊夢。知らない人がいたのだから当然だ。

「この子、俺が代わりに行った依頼の対象の子。ほら、害なさそうじゃん? だから保護した。一緒に住むわけじゃないけど」

「あー、そう。どっかから攫ってきた訳じゃないのね。よかったわ」

 なぜいつも攫うとかそういった方向に思考が及ぶのか疑問に思う青年だったが、そこはもう触れず、テキトーに説明をした。が、その途中であることを思い出した

「そういえば、君の名前を聞いてないね」

「そういえばそうね」

 当の少女も忘れていたようである。

「貴女の名前はなんて言うの?」

「私は……エルシィ、エルシィ・フォン・ユーグリスト。長いからエルシィでいいわ」

 霊夢の質問にフルネームで答えた彼女は、優雅に礼をした。羽をパタパタさせながら。

「名前もわかったしもう一回聞くけど「ちょっと待ってよ」……?」

 青年が本題に戻ろうとしたところに割り込んできたエルシィ。

「まだ貴方たちの名前を聞いていないわ」

「あー……」

 青年も霊夢も今思い出したというような反応をする。脳が老いたか。

「私は霊夢よ」

「俺は……実は名前が無いんだ。だからまぁ、よほど変なのじゃなければ、なんて呼んでも構わないから」

「あっそ……じゃ、とりあえずは青年君でいいわね」

 エルシィは特に興味もなさそうにそう言うと、徐に立ち上がった。

「それじゃ、そろそろ行くわ。またね」

 彼女は手をひらひらさせながら去っていった。


  同日の深夜 青年の部屋にて


 彼はまた、あの白い空間にいた。

「……汝、我が宿主よ」

「……」

「汝が今を生きておる由、知りたかろう」

「やっぱり、お前となにか関係があるんだな」

「いかにも」

 そう言って狐が語りだしたのは、まさに青年が思い出した過去の村での出来事と相違ない内容だった。

「汝は我が祠の前で1度、力尽き、死した」

「……!?」

「我は訳あって弱っていてな。その折、祠の前で倒れ伏す汝を見つけ、魂に憑依する形で汝の体に入った。かくして汝は生き返ったのだ」

「そうだったのか……」

 しばらくの静かな時が流れ、また、狐が口を開いた。

「そしてもう1つ、見せるものがある」

 そう言って狐が一回転をすると、そこに居たのはただの狐ではなく、4尾の狐だった。

「4尾……」

「いかにも、して我が名を天狐という。しかし宿主は汝ぞ。この力、どう扱うも汝の自由なり」

「天狐……」

 青年は暫く空狐を見つめ、1つの疑問を口にするかを迷っていた。しかし、そうしているうちに空間が薄れ、次第に崩れ始めた。

「直に夜が更ける。では、いずれの時にかまた会おうぞ」

 天狐は振り返り、ゆっくりと奥へと消えていていく。

「1つ、聞いてもいい?」

 彼はその背に問いかけた。天狐は振り向き、彼を見つめた。

「過去に……暴れ狂ったことはある?」

 その問いに天狐は少しの間何も言わず、次に口を開いた時にはもう何も聞こえなかった。空間は崩れ果ててしまっていた。



  翌朝 博麗神社境内にて


 その日もまた、青年と少女の稽古が行われていた。

「はっ、せや!」

「ん、昨日より筋がいいけど、どこかで練習でもしてたの」

「昨日っ、里にっ、半分幽霊のっ! 人がっ、いて!」

 言葉の切れ目ごとに喋りながら少女は木刀を振るう。

「その人に付き合ってもらってたの?」

「そうっ!」

 ガァンッと響いて、片方の木刀の鋒は青年の喉元にあった。もう片方は少女の頭の横を抜けるように止まっている。

「わお、すごいね」

「やった……!!」

 彼女は鋒を喉元から離しはしないものの、その顔は嬉しさで綻んでいた。

 「さて、片付けるか」

 「あ、うん」

 彼女はまだ、その余韻に浸っていたかったかのような雰囲気を出しながらも異論せずついて行った。

ストック、めんどくさいので文法的な誤りとか直さないでそのまま投稿してるんですけど、指摘されても直す気はさらさらないので、頑張って脳内補完してくださいね。では。

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