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東方・幻想書紀  作者: 平民
1/9

化物の器

久々に書いた小説です。

文章力とか色々落ちてるぅ。

それは人間の恨みなどの負の感情の塊なのかもしれない。あるいは、人間だけにとどまらず、生きとし生けるものすべての畏怖の念によって出来た存在かもしれない。

それか、普通に生まれただけなのかもしれない。

ある時まで幻想郷にいた、不可思議な力を持った「化物」。偶然成り果てた存在を、後に生まれ、それを知った生物は皆、そう呼んだ。



ある日のこと、幻想郷にある博麗神社の縁側にて。

「霊夢ー、ひまー……」

そんなことを言うのは、ある時ふと幻想郷に現れ、以後なぜか博麗神社に居座ることになった青年である。当初、霊夢やたまたまそこに居合わせた人(?)は、また紫の気まぐれかと思っていたのだが、紫は「違う」ときっぱり否定した。さらに、青年にはここに来るまでの記憶が全くないのだから、もうどうしようもない。ちなみに、彼に名前はまだないので、青年の呼び方は色々、気分によって変わる。

「そんな事言ったって……何もやることがないんだから仕方ないじゃない」

ひとつ言っておくと、霊夢は霊夢で、彼の隣で寝そべっている。何も知らない人が見ると、それはもうただの恋人である。

「ぶー……」

「私に言わないでよ……そんなに暇なら吸血鬼の所にでも行ってきたら?」

吸血鬼のところ、それすなわち紅魔館である。

「あー、霧の湖の先にあるっていう?」

この言葉でわかる人はいたかもしれないが、彼はまだ紅魔館に行ったことがない。いや、それどころか、人里に行ったことすらない。外出したとしても、神社周辺の森だけである。

「そ。あんたなら行けるでしょ。変な力があるみたいだし」

「んー、まぁ、そうだな。じゃ、行ってきまーす」

言うが早いか、彼は早速神社から姿を消した。



同日の昼前、人里にて。

「ひゃー、初めて来た。ここって割と賑やかなんだな」

そこは、現代社会とは反対で科学が全く無いなかで、かなりの賑わいを見せていた。もう少し広いところに出ると、大人子供……特に子供たちがたくさん集まっていた。彼も気になって顔を出してみると、金髪の少女が人形劇をやっていた。

「ほぅ、これは見事なものだ」

彼はしばらくこれに見入っていた。気が付くと最後まで見ていて、彼も思わず拍手をしていた。それからすぐあと、集まっていた人たちが散り始めたのに合わせて、彼もそこから立ち去ろうとしたその時。

「ちょっといいかしら?」

後ろから、人形劇をしていた少女に呼び止められた。

「……なに?」

「さっきの人形劇見ていたでしょ?」

「あぁ、あれは見事だった」

「ありがとう。でね、その時から思っていたんだけどね……?」

ここで、少女は言葉をためた。そして、何故か、小さい声で何かを言った。それは、里の賑わいの中でかき消されそうな程に小さかったが、彼は、その言葉をしっかりと聞き取った。

「……私はあなたと戦ってみたい」

「……一応聞く。理由は?」

「そんなの、あるわけがないわ」

「……まぁ、いいか。じゃ、里の外に」

今はまだ昼前。正直なところ何時でも用事のない彼は、少女の希望を叶えることにした。



同日昼前、里外にて。

「ここなら、あまり木もないし、十分ね」

「……じゃあ、始めようか」

両者は距離をとって、少女は魔導書を出したのに対し、青年はただそこに立つだけだった。

それを不快に思った彼女は、彼に言った。

「舐めてるの?」

そんな彼女に対し、彼はさらに挑発するようなことを言った。

「いや、そんなことは無いよ。さぁ、どこからでもどうぞ」

こう言われて、彼女は耐えられなかったのだろう。

彼の逃げ道をなくすように円を描くような、尋常でない量の弾幕を放った。並の者であればまず逃れ得ないだろう。しかし、彼は圧倒されるでも、逃げるでもなく、さっきと変わらずただ、そこに立っているだけだった。

(どうして何もしないの……!?)

そして、弾幕が彼に迫った時、初めて口を開いた。

「……何だ、こんなものか。残念だな」

「!?」

彼はどこからともなく刀を取り出し、弾幕が迫る目の前の空間を、十字に斬った。すると、彼に迫っていた弾幕は、到達することなく目の前で消えた。

「うそ……消えた……!?」

否、それは消えたのではない。別の場所に移動させられたのだ。では、それはどこに繋がるか。

「あ、上に注意ね」

「え……っ!?」

上を見ると、そこには彼女が放った弾幕が、徐々に速くなりながら迫っていた。しかし、明らかに数が少ない。残りは、逃げられないように彼女の周囲に展開されていた。

「……!」

それに気づいた彼女は、戦意を喪失したように、その場にへたりこんだ。青年は、それを見ると弾幕を消した。これは場所移動ではなく存在消滅である。

「……」

「……どうしたの、もう終わり?」

そう言いながら、彼は彼女に近づいていく。

「蒼符『博愛のオルレアン人形』」

彼が彼女に手を伸ばした時、彼女はスペルカードを使った。油断をさせて、不意打ちをするつもりだったようだが……

「へぇ……やるね」

彼はバックステップですぐにその場から離れ、スペルカードの弾幕を避けた。

「今のも当たらないなんて……相当の実力なのね」

「実力……実力か。なんか違うんだよな」

彼は実力というのを認めなかった。

「……何が違うの?」

「それを知るのは、まだ早い。知りたければ俺を倒さなきゃ」

教える気はないようだ。ついでにいえば、倒される気もないらしい。

それからすぐに、彼女は降参をした。

「……もういいわ。倒せる気がしない」

「そうか、まぁそれが妥当な判断だな。」

そういえば、と少女は気づいた。自己紹介をしていなかった。

「……順序が違う気もするけど、私はアリス。アリス・マーガトロイド」

「俺は……名前が無い、というか思い出せないんだ。だから、変なのじゃなけりゃ、なんて呼んでも良いよ」

こんなことを言ってしまったら、呼ぶ人の気分によってはかなりひどい名で呼ばれることも有り得るわけで。

「そう。じゃ、気分で変えて呼ぶわ」

「お、おう……」

「嫌ならちゃんとした名前を考えることね」

そんな事言われてもねぇ……と返しながら、彼は紅魔館の方を向いた。

「……あなたもしかして紅魔館に行くの?」

その方向にはほかに何も無いからだろうか。アリスは青年の目的地を言い当てた。

「おー正解」

「……まぁ、あなたならきっと大丈夫ね」

記述のとおり、紅魔館には吸血鬼が住まう。仮にその吸血鬼と揉め事でも起こそうものなら、間違いなく死ぬだろうから、彼女は、行こうとするのが常人なら止めようとしていたのだ。が、彼は普通じゃない。故に止めなかった。

「そーですか。じゃ、またね」

そう言って、青年は歩き出した。否、歩き出そうとした時だった。

「えぇ、またね。あ、そうだ、ひとつ言い忘れてたわ」

アリスがそれを止めた。

「ん?」

「ごめんなさい、私あなたに嘘をついてた。戦いたい理由なんてないって言ったけど、実は―――」

「実は、俺が来た時から、アリスが使っていた魔力とは明らかに違う異質な力を感じていたから、それが何なのか確かめたかった、でしょ?」

「……」

アリスは呆気に取られていた。なぜなら、一人称こそ違えど、彼女が言おうとしていたことを何も違わずに、心を見透かされているように言われたからだった。

それからすぐ彼女は我に返り、しかし彼の顔を見ていた。

「……どうかした?」

「あ、いや、なんでもない」

このやりとりを最後に、彼らはそれぞれ反対方向へ向かって歩いて行った。



同日の昼 、紅魔館前にて

青年は驚いていた。

「門番が寝てて良いのかよ……」

そう、言った通り、門番が門に背中を預けて居眠りをしているのである。

「こんなんだから、俺みたいに不法侵入者が来るんだよ」

彼は門を飛び越えていった。

「……ん?」

何かがおかしい、彼がそう思った時には既に、彼の周りにはナイフが刃先を彼に向けて、空中で止められていた。

「あらら……こりゃまずいね」

その瞬間、止まっていた時が動き出した。それはつまり、止まっていたナイフがすべて動き出したということである。だというのに、彼はその場で深呼吸をする。ナイフの動きは止まらない。彼の近く、その距離拳二つ分まで迫ったその時だった。

「〜!」

彼は高音域の音による衝撃波を生み出し、迫り来るナイフをすべて落とした。その数およそ百はある。それを一度にすべて落としたのだった。

「危なかった〜……」

そう言いながら、何事も無かったかのように扉に手をかけた時、彼の首元にナイフがあてられた。

「へぇ……時を止めて近づいたんだ」

「っ!何故それを……」

ナイフをあてたメイドと見られる少女は、手段を当てられたことに動揺をみせた。

「なぜ今のようなことが起こり得たのかを考えればわかるよ」

「……でもそれだったら、気配を消して近づいた、ということも考えられるんじゃないですか?」

「うん、たしかに。さっきのナイフのくだんがなければ、俺も気配云々と思っただろうね」

「……そうですか」

ようやく、彼女は落ち着いてきたようだ。しかし、ナイフはあてたままだ。

「……このナイフ邪魔なんだけど」

「そう言われましても、不法侵入者を自由にするわけにはいきませんから」

館内にはそう簡単に入れないようだ。しかしまぁ、彼はここの主に用がある……わけでもないが、主に会うためにここに来たのだ。このまま帰るわけがない。

「んー……じゃあ、意地でも通るね」

いうなり、彼はナイフの刃を触った。すると、なんとそのナイフが砕け散ったのだ。

「っ!?」

それを見て驚き、拘束が緩んだ時に抜け出し、扉を触った。この一連の動きは、およそ一瞬の出来事だった。

「じゃ、中で主探しながら待ってるね」

「あ、ま、待ちなさい!」

彼は、少女の言葉を無視して扉をすり抜け館内へと入っていった。

「あ、あの人は……一体、何者?」

こんな彼女の疑問は誰に聞かれることもなく、空へと消えた。

これからも不定期で投稿していきます。

よければ読んで欲しいです。

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