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30話目 サログド迷宮からの帰還


 最初に違和感を覚えたのは、名もなき迷宮に入った時だった。

 ラウロは案内役という立場でついてきた筈だったのだが、なぜか後ろからついてきていた。

 さらにラウロは、自分はあまり攻撃に参加せず、後ろから公平達のことを観察していた。

 そして、サログド迷宮攻略中、公平の感じていた違和感をさらに強めることが起こった。

 あの時、ラウロは迷宮担当であるにも関わらず罠にかかり、その上、抜け道の先になぜかいた。

 罠にかかっただけなら、ただのドジだと思ったが、考えてみれば、鉄球が通り過ぎた後、入った場所からまた出てくればいい。

 穴から聞こえた声からして、上がってこれないほど深くはなかった筈だ。

 さらに、現れた後も、攻撃をこちらに飛ばしたくせに、いざ公平が危なくなったら蛇の牙や目などを確実に潰していた。

 公平は、最初は外す攻撃が多かったので気にしていなかったが、よくよく考えればおかしいことに気づいた。

 そして、ある仮説を立てた。

 その後、赤スライムとの戦いの際、ラウロに加えてガノイも積極的に戦いに参加しなかったことで、公平は自分の立てた仮説がある程度正しいものであると確信した。

 その仮説とはーー


「ラウロ君。君、実はすごい実力者で、本当は俺を見定めるために来たんじゃないか?」


 公平がそう言うと、ラウロは突然笑い始めた。


 ーーな、何かおかしかったか?


「え、もしかして全然的外れだったか?」


 公平が狼狽えていると、いや、とラウロが言った。


「正解だ、魔王様。俺はあんたがル・デイダニア迷宮に挑むに足る男かどうかを見極めていたのさ。」


 そう言ってラウロは認めた。


「口調が違う…あれはわざとだったのか?」


「わざと、という程ではない。あれも俺の一つさ。

だが、ああやっていかにも変なやつ、というふりをして、それに騙された奴らに無能の烙印を押していくのも俺の仕事さ。

あんたも後少しでそっちのお仲間入りだったが、よく気づいたな。」


 ラウロの言葉に、危なかった、と公平は内心で安堵する。


 ーー正直ペルド君から、昔ラウロ君がガノイ君に勝負で勝ったことがあるって訊かなかったら、今こうして聞いていなかっただろうな…


 赤スライムとの戦い後、ラウロの実力を知っているかと聞いておいて良かった、と公平は思う。


「見た目だけで判断していたら、すぐに騙されて魔物にやられちまう。

魔王様、特にあんたは実力も経験も圧倒的に不足している。

一人であのル・デイダニア迷宮を攻略するのは無理だ。」


 公平は痛いところを突かれて、う、と呻く。


「そのための精鋭三人だが、あんたのミス一つで簡単に犠牲になってしまう。

だから、俺は見ていた。

もしあんたが途中で逃げ出したり、不利な状況に陥った時に焦ってやられるようなことがあれば真っ先に迷宮攻略を諦めさせるつもりだったが、あんたはそれをしなかった上に、不意の攻撃にもちゃんと反応した。」


 ーーあの攻撃はそういうことだったのか…


 ラウロがミスだ、と言っていた攻撃を思い出す。


「突然の事態にも諦めずにちゃんと向かって行った。

それに、赤スライムでの連携も良かった。

あんたは、部下であるモルイスの作戦に同意し、魔力をほとんど一回の攻撃に使っただろう?

彼らを信頼している証拠だ。

信頼のない奴らと行動を共にしても先が見えている。

あんたは合格だよ、魔王様。」


 ーーそこまで深く考えてなかったなぁ…


 モルイスの作戦に全てをかけたのは事実だが、そんなに重要なことだとは思わなかった。

 公平は、一緒に迷宮に行く仲間であるからとハナから信頼していた。


「合格ってことは…」


「あんたがル・デイダニア迷宮に行く資格があるってことだ。

…だが、攻略されたことがない、ていうのは伊達じゃない。

一筋縄でいかないだろうし、油断すれば飲まれるぞ。」


 俺が出せるのは許可までで、勝利を約束できるものではない、というラウロの言葉に公平は頷く。


「認められたのは素直に嬉しい、けどそれで油断するようなことはしないさ。」


 その言葉にラウロは検討を祈る、と言い残して、あっという間に立ち去ってしまった。


 ーー早っ!


 その後、魔王城に戻りこのことをゼノンに報告すると、彼も知っていたようだった。


「元々案内役に迷宮担当の者を一人か二人出すように、と通達しておいたのですが、その中で一番上の役職についているラウロが出てきた事をガノイから聞いたときに、そうだろうな、とは思っていました。」


 公平は、あの魔族結構偉かったんだ、と思った。

 さらにゼノンの話を聞くと、最初の迷宮から帰って報告を受けたときにガノイに協力するように言っていたのだそうだ。

 通りでガノイも途中から手を抜いていた筈である。


「そうですね、魔王様の迷宮行きを反対する身としては、不合格であって欲しかったですが…」


「と、止められたって行くからね⁉︎ ところでラウロ君から合格をもらうと何かあるのかい?」


 何もないならそもそも審査する必要もない。

 そう思って公平はゼノンに尋ねた。


「はい。ラウロが不合格と判断したものは彼の権限によって、迷宮への侵入を完全にブロックされます。力ずくで。

それに、ル・デイダニア迷宮の前には昔に作られた魔物が出てくるのを防止するための扉があります。

その扉の鍵を持っているのもラウロです。

なので、彼の許可がなければ入ること自体無理ですな。」


 ーー合格もらえてよかったよ‼︎


 ゼノンの言葉に公平は心の底からそう思った。











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