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11話目 ステータス


 スライム料理を食べ終え、公平はテドラから貰った薬を飲んだ。


 ーーに、苦い…


 良薬口に苦しと頭の中で唱えながら、公平はどうにか薬を飲みきる。

 すると、体が内側から暖かくなった。


「おお、効いてる効いてる。早いね」


「そりゃワシ作じゃから当然じゃの」


 うわぁ、といつの間にかいたテドラに公平は驚いた。


 ーー魔族ってなんでこう、神出鬼没なのかな? ノックもしないようだし…


「あの、いつの間にいたんですか?」


「どれ、ちょっと見せてみ」


 公平の問いかけをテドラは完全無視して、公平の体をまじまじと見る。


「ふむ、ちと量は少ないがちゃんと魔力は循環しておるの。

じゃが、油断は禁物。まだ魔法は使うんじゃないぞい。

…ところでステータスは鑑定したのじゃろうな?」


「ステー…タス?」


 ーー地位、じゃないよな。ゲームとかでよく見るあれかな?


 おお、ファンタジー、と公平の内心は浮き足立った。

 その様子を見ていたテドラは眉を寄せ、ため息を一つつくと、


「…なんじゃ、その様子ではまだやっておらんようじゃの。

全くじじいには口煩いくせに、自分は仕事が遅いのぉ〜ゼノンよ」


 と言った。


「ぐっ、今から測っていただく予定だったのです」


 ゼノンはそう言うと、懐からA4位の布に包まれた石版を取り出した。


「魔王様、こちらの石版に触れていただいてもよろしいでしょうか?」


 す、とこちらに石版を差し出す。


「これは? それにさっきから言っているステータスってなんだ?」


「鑑定用の石版です。また、ステータスとは名前や年齢、あとその者の持つ力の総合値を表したものの総称です。」


 へぇー、と公平が頷く。


「これに触れればいいのかい?」


 はい、とゼノンが肯定する。


「はよ触れんか。」


 テドラの催促に、公平は苦笑いしながらゼノンから石版を受け取り、表面に触れた。

 すると、石版の表面が一瞬強く光り、文字らしきものが浮かび上がってきた。


「……」


「どうでしたか?」


 ゼノンが尋ねてくる。


「…わからない…」


「…は?」


「文字が…読めないんだ」


 日本語が通じていたので全く意識していなかったが、ここは異世界。

 文字が違ってもおかしくはなかった。


「無学な奴じゃの…どれ、わしが見てやろう」


 そう言ってテドラは、公平の手から石版を奪うと、まじまじと見始めた。


「ふむ………お主、本当に魔王かの?」


 テドラが胡散臭そうな目で公平を見る。


「…私も見せていただいてよろしいですかな?」


 ゼノンがテドラの横から石版を見た。


「これはーー低い、ですね…」


 ーー何が?


 ゼノンの言葉に公平は嫌な予感がした。


「ごめん、ゼノン君。俺にもわかりやすいように教えてくれないか?」


 公平が頼むと、ゼノンは、はい、と返事をし説明し始めた。


「まず、一番上の行。ここには触れた者のの名前が表示されます。

…コウヘイ、というのが魔王様のお名前で間違いありませんか。」


 ああ、と頷く。


「続いて二行目。ここには年齢が表示されます。33と書かれていますね。」


 ーー自分の年齢が知られるって、やだなー


「そして最後の行。最後の行には触れた者の持つ力の総合値をレベルという単位を使った数値で書かれています。

…魔王様のレベルは…その…非常に言いにくいのですが…1…です」


 ーーつまり、


 名前 コウヘイ

 年齢 33

 LV 1


 …ってことか?


「ちなみに、力の総合値ってことは強さなんだよね? レベル1だとどれくらいの強さなのかな。」


「強さ、ですか…そうですね…大体…人間の町娘…くらいでしょうか…」


 ゼノンがこれ以上ないくらい言いにくそうに告げた。


「魔族なら生まれたばかりの赤ん坊でも5はあるのう」


 ーー赤ん坊以下…!


 テドラの言葉が公平にグサリと刺さる。


「だ、大丈夫ですよ魔王様、まだお若いのですから修練すれば多少は上がりますよ!」


 ーー多少…


 それを聞いていたゼノンが咄嗟にフォローを入れるが、その言葉が逆にまた公平に刺さる。


「ちと弱すぎるのう…この状態で黒魔法を使えばそりゃあ魔力も枯渇する筈じゃの。むしろよく死ななかったものじゃ」


 テドラは呆れたようにため息を吐いた。


「レベル1かー、なんだかすごく遠い道のりが、さらに遠ざかった気がするな…」


 ーーこんなんで封印の遺物を探しに行けるのか?


 諦めるつもりは微塵もないが、どう考えても力不足だと公平は思った。


「そうですね。…人間と争う争わない以前に、魔物に襲われただけでも死んでしまいますし、早急に対応しなくてはならないですね…」


 そういえば、と公平が呟く。


「魔物と魔族は一緒じゃないのかい?」


 公平の言葉を受けて、テドラが、がくり、とうな垂れた。


「お主、異世界から来たか何か知らんが、その程度の違いも分からぬのか? どう見たって違うじゃろ。」


 大馬鹿者、というテドラに、公平はすみません、と謝る。


「魔王様の世界ではどうだったか知りませんが、この世界では魔族と魔物は別物です。

彼らは魔王様といえど平気で襲って来ますし、普段は迷宮にいますが、たまにこの辺りに出現することもありますので、倒せるように訓練する必要があります」


 そうですね、とゼノンが続ける。


「まずは基本的な…腕立て伏せ1000回、腹筋1000回、城の外周50周から始めましょうか。」


 その言葉に、最近腹についた内臓脂肪が気になりだした公平は固まった。







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