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太陽のような君へ  作者: ひで
目覚めと再会
6/55

聞きたかったこと

 結局、また胡桃に会えたのはあの日から一週間が経った後だった。


 コンコン


「は~い」


 胡桃のどこか気の抜けた返事を聞いて胡桃が目覚めたことを改めて実感する。


 ガラガラッ


「……久しぶり」

「ひーくん!!来てくれたんだ!!」


 胡桃は二年前と比べて体は痩せ、髪は長くなった。

 俺はベッドの横の椅子に座る。


「当たり前だろ、やっと面会出来るようになったんだから。……まあ、とりあえずお帰り、かな?」

「うん、ただいま。ごめんね、ずっと待っててくれたのに」

「起きてくれたんだし、もうそれで十分だよ。それより身体の方は大丈夫なのか?」

「うん。昨日までずっと検査してたけど大丈夫だって先生は言ってた」

「そうか、良かった。……元々の方は悪くなったりしてないのか」

「そっちも大丈夫だって。先生には奇跡だって言われたよ」


 椅子の上でほっと胸をなでおろした。

 身体の何処かに後遺症が残っていないかを心配していたからだ。

 ……元々の病気のことも。


「そりゃそうだよ。まず二年間ずっと眠ってた人が起きるってことがすごい奇跡なんだからさ。でも何も悪くなってなくて安心したよ」

「うん、でももう二年も経っちゃったんだね……」


 胡桃は少し悲しそうな顔をするがすぐに笑ってこっちを向いてくる。


「ひーくんは変わったね!!声も低くなって背も高くなってる」

「二年も経てば身長も伸びるし声変わりもするよ。まあ自分ではよく分からないけどな」

「すごくカッコよくなったよ。でもやっぱりひーくんはひーくんのままだね」

「そりゃな。俺は俺のままだよ」


 おれは苦笑し、胡桃も笑う。

 そのはにかんだように笑う仕草も二年前のままだった。


「そういえば祐子さんが教えてくれたんだ~」

「何をだ?」

「ひーくんがずっと毎日私のお見舞いに来てくれてたって。ありがとね」

「別に俺がしたかったからしてただけだしな。だからお礼なんていらないよ」

「うん。でもありがと」


 ……。

 お互いが何かを言おうとして病室につかの間の沈黙の時間が流れる。

 その沈黙の後、二人が同時に口を開く。


「なあ――」

「ねえ――」

「っ悪い。なんだ?」

「ううん。ひーくんからどうぞ」


 俺はゆっくり口を開く。


「じゃあ……おじさんとおばさんのことはもう聞いたのか?」


 今まで笑顔だった胡桃の顔が少し強張る。

 それを見て俺は慌てて謝罪する。


「あっ、わ、悪い。無遠慮な質問だった。本当にごめん」


 胡桃は少し泣きそうな顔をしながらも静かに首を振る。


「ううん、謝らなくても大丈夫だよ。……聞いたよ、二日前に祐子さんから」

「……そうか」


 胡桃の両親は二年前の事故で急死している。

 あれはひどい事故だった。

 車で出かけていた三人は高速道路を走行中に反対車線を走っていた居眠り運転の運送トラックに正面衝突されてしまった。

 そして燃える車の中から胡桃だけが奇跡的に助け出されたのだ。


「……悪かったな。思い出したくないようなこと聞いちゃって」

「大丈夫だよ。でも泣かなくなるまでは時間がかかっちゃうかもしれないけどね」


 胡桃は静かに笑う。


「……そうだよな」


 俺も今まで両親が死んだ日のことを忘れたことはない。

 あの日を思い出して泣かなくなる日はまだまだ先になるだろう。


「……それで胡桃から言いたいことは何なんだ?」


 俺の言葉で胡桃は少し真剣な顔になる。


「ひーくんにね、一つ聞きたかったことがあるの」


 俺は久しぶりに見た胡桃の真剣な顔を見つめる。

 何かと聞いてはみたが何を言いたいかは大体察しが付いていた。

 胡桃が今知りたいことなんて一つしかない。

 そして胡桃は俺が考えていた通りの言葉を口にした。


「いーちゃんはどこにいるの?」

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