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太陽のような君へ  作者: ひで
小学校編
29/55

卒業式

「これより卒業式を始めます。最初に卒業生の入場です」


 教頭先生のセリフで卒業生が入場する。

 六年生全員で百十四人くらいいるので二~三分経ってやっと全員の入場が完了する。

 卒業式が始まり国歌斉唱、校歌斉唱、卒業証書授与とどんどん式が進んで行く。

 今日で小学校生活も最後ということもあって、クラスメイトも他クラスの中にも泣いている人が何人かいる。

 胡桃のその中の一人だ。


「何で胡桃泣いてるんだよ」

「だってなんか色々思い出して」

「思い出してって俺あんまりいい記憶がないんだけど」

「そ、そんなことないよ。いっぱいいい思い出があるよ」

「……あなた達、式中くらい静かにしなさい。美由紀さんと香苗さんがビデオを撮っているのよ」


 母さんと香苗さんは前に授業参観の時に会い、意気投合し仲良くなった。

 今日も二人で並んでカメラを回している。


「いやなんかもう疲れてきたんだけど」

「静かにしてなさい」

「……は~い」


 俺達も順番に名前を呼ばれ壇上に上がり卒業証書を受け取っていく。

 卒業証書を受け取り壇上から客席を見てみると母さんと目が合う。

 そして手を振られるので小さく振り返す。

 維織も俯きながら恥ずかしそうに小さく手を振っている。

 多分母さんに手を振られているのだろう。

 席に戻り維織から静かにしておけと言われたので、六年間の小学校生活でも振り返ってみる。

 と言っても思い出のほとんどが今年に集中している。

 胡桃が転校してきて仲良くなってからそれまでよりも俺と維織の毎日は確実に楽しくなった。

 確かに花園のことで俺達と胡桃の仲が怪しくなってしまったり、修学旅行の時に思わぬ緊急事態に見舞われるなど色んなことがあったがそのおかげで互いの仲も以前よりよくなった。

 そのことも時間も経てば俺達の人生の中でいい思い出になるのかもしれない。


「学校長式辞」


 卒業生全員が卒業証書を受け取り、この後は知らない人たちが祝辞を読み続ける。

 式ももう終盤に差し掛かっている。

 今こうして卒業式に出席しているが終わっても半月くらいすればまた中学校生活が始まってしまう。

 受験のない中学校に進学するため同じ小学校の奴が沢山いるので、きっと今までと変わらない生活を送ることになるだろう。


「これをもちまして卒業式を閉会いたします」


 でもこの二人と一緒に居れば平凡な楽しい毎日を送れるだろう。


「卒業生が退場します。大きな拍手でお見送りください」


 その声で卒業生全員が起立し、盛大な拍手に囲まれながら体育館から出ていく。

 この後は卒業アルバムを貰うために教室に戻る。


「あ~、やっと終わった」

「疲れたわね」

「やっぱり維織も疲れてたのかよ」

「いーちゃんも卒業証書受け取ってた時美由紀さんに手を振ってたの?」

「……ええ、そうよ。無視なんてできないし……したら後で怖いから」

「確かに母さんは後でネチネチと言ってくるかもしれないな」

「でしょ?恥ずかしかったわ」


 担任の先生が教室に入ってきて卒業アルバムを配ってから最後の話をする。

 それが終わるとみんなは友達同士で記念に卒業アルバムのコメント欄にコメントを書き合ったりしている。


「私達もやろうよ」

「やろうたって中学も一緒なんだしコメントなんて書く必要なくないか?」

「そうよね。どうせ毎日会うわけだし」

「記念にしようよ。言葉はいつか忘れて消えちゃうけど文字はずっと残ってるから一生の記念になるよ」

「……凄い良いこと言うな」

「確かにそうね。まあ、減るものでもないししましょうか」


 胡桃の提案に乗って維織と胡桃の卒業アルバムにコメントを書く。


「できた!!」

「俺もできた」

「私も」

「見てもいい?」

「良いけど、普通のことしか書いてないぞ」

「そうよね」


 胡桃が自分の卒業アルバムを見る。


「ひーくんからがこれからもよろしく――」

「よ、読まなくていいから!!」

「えっ?ご、ごめん」

「は、恥ずかしいからさ。俺は家に帰ってから読むよ」

「私もそうするわ。もうそろそろ教室から出ないといけないから」

「本当だ」


 最後は校門前に集まり親や友達、先生などと写真を撮ったりする。

 卒業生全員が校門前に集まり各々写真を撮ったり先生と話したりしている。

 俺達も行くと母さんと香苗さんに出迎えられる。


「三人ともお疲れ様~」

「博人!!あんた卒業式くらい大人しくしてなさいよ」

「し、してたから」

「だから静かにしてなさいって言ったのに」

「わ、私も喋っちゃったから」

「胡桃ちゃんは良いのよ」

「……理不尽だ」

「まあまあ、じゃあ最後に三人で記念写真撮りましょう」

「そうね。じゃあほら三人ともそこに並んで」


 母さんと香苗さんに急かされ慌てて三人横に並ぶ。

 右から俺、胡桃、維織の順番。

 いつの間にかこれが俺達が一緒に居る時の順番になっている。


「行くよ~、はいチーズ。……オッケー!!」

「いい写真撮れたわね」

「それは良かった」


 少し伸びをしながら自分が六年間通っていた学校を見渡す。


「さて、帰ろうか」

「そうね」

「せっかくだから遊ばないの?」

「またうちで遊ぶのか?」

「博人の家くらいしか遊ぶ場所ないじゃない」

「そんなことはないとは思うけど……。まあ、じゃあ行くか」

「うん!!」

「じゃあ私達はもう少し話してから帰るから先に帰っといて」

「分かった、じゃあ行こうぜ」


 三人で俺の家まで帰る。

 部屋に戻り卒業アルバムを本棚にしまう。

 ついでに、さっき二人が書いてくれたコメントを見る。

 胡桃のコメントは“いつも仲良くしてくれてありがとう!!これからもよろしくね!!”と可愛い文字で書いてあり、維織のコメントは“中学生になるんだからもっとちゃんとしなさいよ”と整った綺麗な文字で書いてあった。

 二人らしいコメントと文字だなと少し笑いながら本棚にしまおうとすると、一階から胡桃の呼ぶ声が聞こえてくる。

 本棚に卒業アルバムをしまい返事をしてから階段を下りて行った。

次話から高校生に戻ります(`・ω・´)

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