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太陽のような君へ  作者: ひで
小学校編
27/55

修学旅行~2日目~(1)

 外から漏れてくる日光と鳥の声で眼が覚める。

 欠伸をしながら寝袋から出て周りを見るがまだ全員寝ているみたいだ。

 時計を見ると起床時間の三十分前くらいでこのまま二度寝をすると起きれそうもないので眠気覚ましとトイレを兼ねて外に出る。

 トイレはテントから少し離れた所にあるので、周りの景色を見ながら歩く。

 山の上の方なのでなかなか良い景色が広がっている。

 トイレを済ませ戻ろうとすると向こうから維織が歩いてくる。


「維織、おはよう」

「おはよう。博人もトイレなの?」

「そうそう。もう終わったけど。維織も?」

「ええ。眼が覚めてしまったから」

「じゃあ、待ってるよ」

「分かったわ」


 トイレから出てきた維織と途中まで一緒に帰る。


「昨日は大丈夫だったの?」

「まあ、なんとかな」

「心配だったのよ。揉めたりしてるんじゃないかって。胡桃も心配してたわ」

「俺もそこまで子供じゃないよ。そっちはどうだったんだよ」

「特に問題なかったわ。まあ私がいるからね」

「確かに維織がいれば安心だな。そう言えば今胡桃は?」

「まだ寝ているわ。起こすのも悪いから静かに出てきたの」

「言ってももう時間だけどな」

「そうね。もうそろそろ戻らないと」

「そうだな。じゃあまた後で」

「ええ、また後で」


 自分のテントに戻ると何人かはもう起きていた。

 もちろん俺がどこに行っていたかを気にする奴も聞いてくる奴も一人もいない。

 まあ、俺も言う気はないが……。

 寝袋を片付け、寝巻きを着替えて外に出る。

 これから朝食だ。

 本当はちゃんとした宿舎というのがこの近くにありそこでご飯を食べることになる。

 それなら昨日宿舎に泊まればよかったと思うが、せっかくテントにも泊まれるということでテントで宿泊にしたらしい。

 宿舎に着くと既に維織と胡桃が居る。


「おはよう」

「おはよう、ひーくん」

「さっきぶりね」

「維織はな」

「さっき?」

「朝トイレに行ったときに会ったんだよ」

「そうなんだ。だから私が起きた時、外から帰ってきたんだね」

「そうよ。じゃあ席に着きましょうか」


 席に座って時間を待つ。


「今日するのってオリエンテーリングだよね。オリエンテーリングってどんなのなの?」

「まあ簡単に言えばスタンプラリーみたいなものだな。地図をもらって描かれている場所に行って全部回った後ゴールに行くだけだよ」

「でも胡桃、道中山道だけど大丈夫?」

「うん。走ったりとかしなかったら大丈夫だよ」

「まあ順位とかないんだからさ。時間までに戻ればいいんだからゆっくり行けばいいだろ」

「まあそうよね。私も体力があるわけではないし」

「そうそう、ゆっくり行こう。その前に朝食食べなきゃ」


 運ばれてきた朝食を食べる。


「修学旅行も今日で終わりだなあ」

「楽しかったね」

「そうね。まだ残ってはいるけれど去年の合宿に比べたら楽しかったわ。胡桃がいてくれたお陰ね」

「確かにそうだな。胡桃がいたお陰で雰囲気が明るかった気がするよ。去年は二人共淡々としてたからな」

「そう言ってもらえると嬉しいな。でも私も楽しかったよ。だから今日も楽しもうね!!」

「そうだな」


 朝食を食べ終えて、オリエンテーリングのために必要な飲み物とタオルを小さな鞄に入れる。

 しかし、人があまり密集しないようには五組から一グループずつ出発するため出発まで時間がある。

 指示が出るまで集会場で待っていると、先生から出発地点に行くように言われる。


「じゃあ行くか」

「ええ」

「うん」


 出発地点まで移動するとチェックポイントの場所が載った地図とコンパスとチェックポイントで押すスタンプのシートが配られる。


「え~と……回る場所は六ケ所か。でも地図が地図帳のやつみたいだから見つけるの大変そうだな」

「そうね。周りの地形をちゃんと気にしないと迷うかもしれないわね」

「そうだね。気を付けないと」

「まあ、途中に矢印とかもあるだろうからそうそう迷わないと思うけど」


 順番が回ってきて俺達の出発の時間になる。


「レッツゴー!!」

「おー」

「行きましょうか」


 まずは道をまっすぐ登った場所にあるチェックポイントに向かう。


「最初のところは簡単だね。この道登るだけ」

「まあ最初からいきなり込み入った場所にしないだろ。段々と難しくなっていくんだよ」

「でもこれ全体を通すと結構歩くわね。二、三キロくらいかしら?」

「そのうえ山道だからな。けっこうしんどいぞ」


 そんなことを話しながらもチェックポイントに到着しシートにスタンプを押す。


「次は……あっちね」

「行こう」

「うん」


 そこまでの道中には浅い川にかかった橋もあった。


「水綺麗だね」

「そうね。こういう森林は空気も綺麗だし景色もとても綺麗だわ」

「結構高いところだからな」


 普段から運動をほとんどしないため体力はあまり多くない。

 二つ目のチェックポイントに到着した時には三人とも少し息が上がっている。


「結構しんどいな」

「まだ二つ目じゃない。男が一番初めに音を上げてどうするの」

「維織も息上がってるじゃないか。お互い様だよ」

「でも疲れるね。久しぶりにこんなに運動してるよ」


 地図を確認する。


「ゆっくり行こう。次のところはちょっと遠いから急ぐと余計しんどいからな」


 山道でデコボコしている場所は歩きにくいため地面が木質のもので舗装されており端には鉄の手すりが付けられている。

 そして手すりの先は斜面で森が広がっている。


「この先は……こっちかしら」

「道の形からしてあっちだな」


 俺と維織が地図を見て行き方を確認している時も胡桃は色々な所を見回っている。

 初めて来たので色々なことに興味をそそられるらしい。

 手すりの向こうもじっと見つめている。


「こっちの方は森しか見えないん……きゃ!!」

「!! 胡桃!!」


 バキッという大きな音が聞こえ反射的に振り返る。

 すると手すりが前に倒れ、もたれかかっていた胡桃も落ちていこうとするところが眼に入る。

 とっさに手を掴んで引き寄せようとするが所詮小学生の力ではどうすることも出来ない。

 胡桃の手を掴んだまま斜面を滑り落ちる。


「博人!!胡桃!!」


 維織の悲鳴にも近い声が聞こえてくる。


「ぐっ!!く、胡桃!!」


 渾身の力で胡桃を引き寄せ抱え込む。

 色々なものが身体にぶつかり意識が飛びそうになるが胡桃を守るためになんとか耐える。


「かはっ!!」


 しかし背中に何か大きいものがぶつかった時、肺の中の空気が全部吐き出される。

 そして眼の前が真っ暗になった。

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