2012年再会:ジニョク
恐らく僕は、ここDMZではアメリカ軍との共同生活になる場合が多く、英語ができるというだけで僕はここの配属になったのだろう。
軍隊の生活は訓練はいくらでも我慢できる。
だけれど他人と長い時間一緒にいることが苦痛な僕にとって、人と同じ部屋を使わなくてはならないということが厳しかった。
ある日DMZを見に来る外国人ツアーの担当の日があった。
僕はこの仕事は結構好きだ。
色々な国の人が参加していて、見ているだけでも面白いからだ。
パスポートチェックをして、会議場まで警備をするのが僕の仕事。
あらゆる国のパスポートが並ぶ。
ふと日本人の女性のパスポートを見た。
「玲」という名の日本人。
名刺のお姉さんも玲さんだった。
顔もはっきり覚えていて、少し歳は取ったかもしれないけれど、あの玲さんに間違いない!!
僕は顔を見た。絶対そうだ。
でも規則だから話をしてはいけない。
玲さん気づいてほしい。
気づくわけがない。僕は軍服を着て濃いサングラスをしている。
僕は、ずっとずっと気になって、休暇で家に戻ったとき、名刺を確認してみた。
日本人は結婚すると姓が変わる。
玲さんは以前とは違うものになっていた。
電話をしてみようか?
いや、こんな10年近く前にもらったもの、電話なんてしても向こうも分からないし、日本に来るなら電話してって言ってたから。
捨てるに捨てられなくて持っていた名刺。
僕はまた箱にしまった。