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ライブダンジョン!  作者: dy冷凍
第九章

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第469話 相性無双

「随分と久しぶりに感じます」

「最近は159と160の往復だろうしね。ヘイスト」

「確かハンナが馬鹿みたいに引っかかっていましたよね?」

「そうだね」



 今の神台にはほぼ映らないであろう81階層にある幻想の花畑を眺めながら、リーレイアは懐かしそうに微笑む。そんな彼女を横目に努は新たに作っていた刻印装備の性能を確認するように支援スキルを自身に付与し、効果時間の測定をしている。



「それでは早速検証を始めましょうか。恐らくツトムに契約してみれば済むと思いますが」

「よろしく」

「……契約――雷鳥」



 そう言うや否や帰還の黒門に手をかけながら待機し始めた努にリーレイアは微妙な視線を送ったが、念のため今日はロストしても構わない装備をしている彼女も彼女である。そして現状のリーレイアでは契約するだけで精一杯である雷鳥を、努指定での契約で結ばせる。


 すると努の目の前に突如として巨大な落雷が落ちた。その目が焼けるような光と鼓膜が破けたのではないかと思うほどの轟音に、彼は思わず黒門を開いてしゃがみ込む。



「……っるせー。ヒール」



 危なそうなら蹴飛ばしてでも帰還の黒門に叩き込んでくれとリーレイアには頼んでいるので、恐らく雷鳥とやらが敵対しているようではなさそうだ。だがスタングレネードでも食らったかのように動けない努は、むかむかとしたような声を漏らしながら念のため回復する。


 そうしてようやく目を開けられるようになったので軽く耳を押さえながら立ち上がると、努の前には金色の刺々しい鶏冠とさかが特徴的である巨大な怪鳥が鎮座していた。ただ彼の様子を窺うように丸い目をパチクリとさせている雷鳥には、少なくとも敵意は見られない。



「これ、どうなの?」

「……ここまで間近で拝見するのは初めてです。基本的には上空を飛んでいるだけで、機嫌が悪い時は契約しても無差別に雷を落としながら去っていくので」

「取り敢えず、リーレイアがそこまで好かれてないのはわかったよ」



 リーレイアが少し喋った途端に雷鳥は彼女の顔を睨み付けて金色の翼を不機嫌そうに揺らし始めたので、それと比べれば自分への対応がいかに好意的であるのかはわかった。


 そして他の精霊にもするようにマジックバッグから雷の中魔石を出して地面に置いてみると、雷鳥は片足で器用に掴んで魔力を吸収してそのまま握り砕く。そしてお礼でもいうように鋭い嘴を開いて控えめな舌を覗かせた。



「なんか魔石の使い方に関してはハンナっぽいな。もしかして魔流の拳みたいな感じで雷とか出してたり?」

「……さぁ、どうでしょう」

「それにしても登場の仕方がやかましくてしょうがない。次回はもう少し抑えてくれる?」



 えー、とでも言うように雷鳥はしわがれたカラスのような鳴き声を漏らしたものの、渋々了承はしたのか拗ねたように地面を金色の嘴くちばしで突いている。その際に伸ばした首周りに生え揃っているふかふかとした朱色の羽毛は触り心地が良さそうだったので、努は手を伸ばしつつも触っていいか顔の表情だけで尋ねる。特に問題なさそうだったので触れてみると、まるで静電気が漂っている毛布のようにそわそわとしていて少し驚いた。



「四大精霊ほどではないけど、ある程度は言うこと聞いてくれそうな感じはあるね。とはいえウンディーネみたいに何でもかんでも聞いてくれるわけではないっぽい。こら、止めろ」

「……そうですね」



 今度は自分の番と言わんばかりに努の服を嘴でつまんでぐいぐいと引っ張っているものの、普段の雷鳥を文字通り死ぬほど知っているリーレイアからすれば大人しい故この上ない。それにここまで精霊に好かれている者など一度も見たことがないので、彼が神の計らいで異世界から来たということもリーレイアからすれば信憑性が増した。



「それじゃ、リーレイアも契約してみれば?」

「……装備、預けておきます」

「……捨ててもいいやつなんじゃなかったっけ?」

「消えるとわかっているものを無くすのも意味はないので」

「それじゃあ、これ着とけば? 気休め程度だけど」



 いつも通り消し炭にされることも予想してか、リーレイアは使い捨てる予定だった武器防具を努に預けた。そして彼に渡された雷耐性の刻印が施された敗者の服を羽織る。



「契約――雷鳥、っ!?」

「だからうるさいって。ハイヒール」



 リーレイアがそう唱えた途端に雷鳥は目の色を変えて翼を振るい彼女に紫電を打ち放った。そして雷鳥の後ろにいた努はそうぼやきながら感電している様子の彼女を回復する。



「それとこれとは別みたい?」

「……いや、もし雷鳥が本気ならば死んでいるはずです。それに明確な雷鳥との繋がりを感じます」

「僕の刻印装備凄くない?」

「アルドレットクロウの刻印士たちが作った雷対策装備よりも強靭だというのならそれも認めますが?」

「それは残念」

「……精霊契約、解除」



 雷鳥そっちのけで話している内に今度は本気の雷を放つ予兆を感じたのか、リーレイアはそっと精霊契約の解除を試みた。それに雷鳥は勿論応じなかったものの、努にさよならーと手を振られると舌打ちするように小さな雷を漏らした後に粒子となって消えていく。


 それを茫然とした顔で見送ったリーレイアは少しだけ放心していたものの、切り替えるように咳払いした。



「……では、次は光の精霊と契約してもらいましょうか」

「今度は目、瞑ってよう。絶対フラッシュみたいなの来るでしょこれ」

「契約――アスモ」



 まさか本当に雷鳥と契約できるとは思ってもみなかったリーレイアは、逸る気持ちが乗った声でそう唱えた。すると薄目を開けながら手で前を押さえて待機していた努の前に、一本の白い糸が垂れてきた。



「……なんじゃありゃ」



 それを辿るように上を見てみると、そこには真っ白な巨大繭きょだいまゆがUFOのようにゆっくりとこちらに向かってきていた。それはまるで心臓のように力強い脈動音を響かせ、時折もぞもぞと動きながら空に鎮座している。


 進化ジョブの精霊についてそこまで詳しくない努は説明を求めるように視線を向けたが、彼女も未確認生物でも見ているような顔のまま動かない。


 その後も脈動に合わせてするすると何本も落ちてくる白い糸は、最初蜘蛛の糸のようなものだと努は思っていた。ただ地面に落ちて束になっているところを見るに蜘蛛の糸のような粘着質さは感じられず、むしろ女性の髪のようにさらさらとしているようだった。実際つまむように触れてみると思った通りの触り心地で、夏場用のシーツにでもすれば高く売れそうである。



「で? 結局のところあれは何なの?」

「初めて見たので詳しくはわかりませんが、推測するに蛹さなぎのようなものではないでしょうか。光の精霊は白い幼虫のような見た目をしていますし、強力な光属性の籠った糸も吐き出しますから」

「へー」

「光属性が効くモンスター相手なら有効ですが、それ以外なら四大精霊の方が扱いやすいと聞き及んでいます。ですがその情報も信用はできません。特にアスモと契約する際に上昇するステータスはLUK運と言われていますが、それ以外にも副次効果はあると睨んでいます。あいつらは自虐する体を取りながらも情報を隠しているに違いありません。むしろこちらを見下している節すら感じられます」

「あぁ、そう」



 光精霊と契約できる精霊術士からゴリゴリにマウントでも取られたのか、リーレイアは暗い目をギラつかせている。そんな彼女を横目に努は巨大繭を見上げながら困ったように腕を組む。



(羽化させるには何かしらの条件がいるんだろうけど、どうするんだろ。気持ち悪いからあまり近づきたくないんだけど)



 虫を見るのも嫌だし触るのなんて死んでも無理というわけではないが、サラマンダーのように引っ付いてくることを想像すると流石に嫌な気はする。ダンジョン内ならあの大きさなので問題ないだろうが、フェンリルを見るにクランハウスなどでは小さくなる可能性も大いにあるだろう。



「取り敢えず、光魔石を捧げてみたらいかがでしょうか? アスモは他の精霊と違ってあまり魔石を食べない傾向にありますが、あの状態なら別かもしれません。フライで飛んであげてきてもらえますか?」

「……リーレイアが行っても変わらないんじゃない?」

「何を言っているのですか。それで万が一アスモの機嫌を損ねて契約が解除されたらどうするおつもりなんですか? 光魔石はこれに入れてある物全て捧げて構いませんので、さぁ、さぁ、どうぞ」

(なんか見覚えあるなと思ったら、あれだ。友達がやってるソシャゲのガチャでSSR当てた時の反応だこれ)



 やたら早口になっているリーレイアとスマホ片手に狂喜乱舞しているオタクを重ねながらも、努は一つため息をついた後にマジックバッグを持って浮いている巨大繭に近づく。



「これ、もしかして意味ないんじゃない? 止めとけば?」



 巨大繭と繋がっている糸に光魔石を置いてみると確かに魔力を吸収しているようだったので努は一通り試してみたが、大した変化は見られなかった。その後に魔力がなくなり砂のように崩れ落ちる光魔石を回収しては設置を繰り返したが、想定より遥かに消費していたので努はリーレイアにそう進言する。



「……159階層を探索すればいくらでも手に入ります。全て捧げて下さい」

(全部溶かしてもやし生活になってそう)



 これで出なかったらどうするんだろうと思いはしたが、所詮は人の金だし努もアスモに多少興味はあったので光魔石を捧げ続けた。



「光魔石、無くなったよ」

「…………ツトムも少しは持っていますか? 光魔石」

「あるにはあるけど、リーレイアの持っていた量と比べると雀の涙だよ。……それでも一応捧げてみる?」



 ギャンブルで生活費まで擦ってもう後には引けないような顔をしている彼女を前に、どうせ無駄だろうし僕の身銭まで切りたくないですとも言えない。下手をすれば力づくで奪いにくるかもしれないので、努は素直にそう提案した。



「お願いします」

(この流れじゃ絶対無理だろうけどな。羽化の条件なんだろ。単純な物量っていうこともあるかもしれないけど、リーレイアの持ってた光魔石、結構な量だったしな。160階層主も光系統のモンスターだし、そのドロップ魔石じゃないと駄目みたいな感じかな)



 努はそんなことを推察しながら小銭でも漁るようにマジックバッグを探り、そこまで数のない光魔石をぽろぽろと出していく。そして全て繭の糸に巻き付けて吸収させてみたが、大した変化もなく妙に生々しい脈動を続けているだけだ。



「駄目っぽい。光魔石の他に何かしらの条件がいるのかもね」

「……神から招かれた貴方なら、その条件もご存知なのでは?」

「いや、だとしたら初めから伝えてるよ。手紙にも書いたけど、見知ってる裏ダンジョンじゃないから百階層から先は僕にとっても未知だよ。そもそも進化ジョブも知らなかったし、アスモって精霊も初めて聞いた」



『ライブダンジョン!』でも四大精霊まではほぼ同じだったが、その後に追加された精霊はテコ入れもあってか大体が美少女化しているので雷鳥やアスモについては努も知らなかった。開放条件もサブミッションをクリアするだけで、親愛度を上げるのもドロップ品か課金アイテムなのでそこまで変わりはない。



「いくら貴方でも、そこまでのことはしませんか。もしそうなら久しぶりに殺したくなるほどの憎しみを覚えたかもしれません」

「そういうラインは飛び越えないようにしてるよ」

「そういう節は確かにありますね。納得です」

「…………」



 そう言って座して待つように体育座りをしたリーレイアに、努は嫌な予感を覚えながら沈黙する。



「……もしかしてだけど、しばらくこのまま待つつもり?」

「あと二十三時間の辛抱です」

「嘘でしょ? 闇精霊の契約試さなくてもいいの?」

「……惹かれはしますが、時間経過による羽化の可能性は捨てきれませんから。ツトムは刻印していて構いませんよ」

「マジかよ。リーレイアはどうするの?」

「私は観察を続けます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します」

「……マジかー。これは正直予想してなかった」



 刻印するためのセットはマジックバッグに常備しているので問題はないが、まさか一日拘束されるとは思ってもみなかった努はげんなりした顔で亜麻色の服を地面へと広げる。



「流石に申し訳ないので、今度埋め合わせは致します」

「それならいっそのこと帰らない? 確かにあの量の光魔石を失ったのは痛手だけど、別に破産するほどじゃないでしょ」

「……オーリになんて説明したらいいのでしょうか。帰りたくありません。経費で落ちませんか?」

「ハンナじゃあるまいし」



 リーレイアの場合はあくまで個人で所有している魔石を溶かしただけなので、ハンナのようにオーリから大目玉を食らうことはない。ただこのまま大量の光魔石がサンクコストになってしまうのは我慢ならないのか、彼女は体育座りのまま粘りの姿勢は崩さなかった。

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ツトムが上行って撫でたら一発で羽化したりして
珍しく年相応に若い子なムーブしてる感w
ガチャ文化がなくてよかったよ……ないよね?
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