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ライブダンジョン!  作者: dy冷凍
第八章
409/410

後日談⑤

 努が突如として引退したことによる変革の流れによって、探索者たちが自身の立ち位置を顧みたことでクランの情勢も大分変化した。


 事前にクランメンバーを募集していた紅魔団は変革の流れに乗ることは出来ていない。しかし事前に入ってきたクランメンバーたちはただただ熱に浮かされ流されてきた者たちではなく、紅魔団に一定の尊敬を持つ者たちばかりだった。お節介おばさんことアルマとのトラブルはあったにせよ、今は連携も馴染むようになり徐々にその頭角を現し始めていた。


 金色の調べはユニスの電撃引退が痛手となったが、その穴は彼女の技術を受け継いだミルウェーで埋められた。更にユニスが残していたPT構成の考察やスキル操作のコツなどを記したメモがわかりやすく、それを現実的な形で実現できたミルウェーの活躍もあってか九十階層の突破を果たすことができた。


 その他にも中堅クランの間では熾烈な人材確保の競争が行われて迷宮マニアたちからは大きな注目を集めていたが、その中で大手クランの情勢すらも変えたのはやはり無限の輪を脱退したメンバーによるものが大きかった。


 ディニエルは無限の輪を脱退してからはアルドレットクロウに移籍し、現在は様子見で二軍に配置されその実力を試されている。しかし既に百階層を突破している彼女が一軍のアタッカーになるのは時間の問題であり、アルドレットクロウが更に躍進するための鍵となるのは間違いなかった。


 ダリルは孤児たちを中心にしたクランよりは結束が緩いサークルのようなものを立ち上げ、孤児院での知り合いや王都から成り上がりを目指してやってきたリキたちなど、後進の者たちを育てることに注力していた。その規模と勢いは中堅クランの中では注目される程度まで成長し、迷宮マニアからの評価もまずまずといったところだった。



「もう、話すことはありません。帰って下さい」

「…………」



 その分最前線の探索者からは遠ざかってしまったダリルを説得しようとガルムは一度出向いたが、先日出来てしまった信頼の溝もあってか門前払いとなり、二人の距離は離れたままだ。


 アーミラはしばらく酒に溺れて現実逃避する毎日だったが、カミーユの甲斐甲斐しい世話もあってか数週間で精神は持ち直した。その後はリハビリも兼ねてギルドの掲示板でPTを募集するようになったが、一時的なPTは組んでも固定PTには至らずあくまで一人での探索にこだわった。


 そんなアーミラを見かねてかカミーユは一匹狼となった彼女を一時的にギルドへと迎え入れ、探索調査の仕事を割り振って孤独にはさせないようにしていた。それにダリルにもガルムに送られていた手紙の文脈を引き合いに出して、努が信頼の区別をしていたわけではない可能性を示したりなどしていた。


 そしてエイミーは探索者を休止中にディニエルとの仲を修復した後、警備団に付いていく形で海境の先にある帝都へと向かうことになっていた。



「それじゃあここは任せるけど、アルドレットクロウに易々と引き離されないでよね」

「お前こそ、船から海に落ちて藻くずにならないといいがな」



 ただそれは彼女の独断専行ではなく、事前にガルムと話し合ってから決めたことだった。努からの決別にショックを受けたとはいえ、彼がまたこの世界に帰ってきたいという願いを叶えたい目的はガルムと変わりはしない。


 だからこそ神のダンジョンを攻略することで得られそうな帰還の手掛かりはガルムに任せ、彼女は急激に国力を伸ばしていると噂されている帝都へと向かうことにしていた。その伸び方がかつて迷宮都市の発展と同時に急成長した王都と似通っているため、もしかしたら帝都の方にも神のダンジョンが出現したのではという可能性を考えてのことだ。


 若干顔がげっそりとしていたがその目に生気が戻り始めていたエイミーを、ガルムは迷宮都市の門まで見送った。その場にはディニエルも来ていて何やら彼女に叱咤激励を飛ばしていたが、最後にはエルフの森の特産品でもあるお守りを渡して早々に去っていった。


 それから数日後、ガルムは残ったクランメンバーたちを連れてシルバービーストのクランハウスに足を運んでいた。



「これからよろしく頼む」

「あぁ、ガルムたちなら大歓迎だ。こちらこそよろしく頼むぜ」



 努からロレーナに送られていた手紙を切っ掛けに、無限の輪とシルバービーストとの間には長期の同盟を組むことが浮かんでいた。それから少し期間を空けて双方話し合った結果、二つのクランは本格的に同盟を組むに至った。


 これで無限の輪は一先ずクランが安定して存続できるような人材の確保に成功し、シルバービーストは努の遺した資産の一部と百階層を攻略した手練れの探索者と本格的な交流をする機会を得た。


 シルバービーストとの長期同盟を組むことの是非は無限の輪のクランメンバーたちでも話し合われたが、新たにクランメンバーを募集するよりは同盟の方が抜けた者たちも戻りやすいだろうということで受け入れられた。それに短期とはいえ、一度同盟を組んだ経験があることも大きかった。


 その後無限の輪と同盟と組んだシルバービーストと、ディニエルを引き入れたアルドレットクロウでどちらが先に百階層を攻略できるかの競り合いが始まった。



「ツトムの弟子なだけはある」

「褒め言葉として受け取っておきます」

「ソーなんとかも思いのほかよかった」

「……俺のことだよな? ソーヴァな、ソーヴァ」



 その競り合いを制したのはアルドレットクロウだった。百階層だけでいえば努と同程度の安定した支援回復が可能となっていたステファニーに、優秀なタンクであるビットマンとドルシアがいるPTならばディニエルは前と変わらず思い切った動きができた。それに加えてソーヴァの魔道具を使用した爛れ古龍の血液を無効化するサポートもあり、百階層の攻略は早かった。


 そして今まで開かなかった百階層の先へと続く黒門は、三つの丸い光が輝いた後に開門した。迷宮マニアたちが予想していた通りにその先の階層が存在することも確認され、それが神台で流れた時は大歓声が迷宮都市を震撼させた。


 更に百レベルを超えるとジョブも進化することが判明したり、属性の合わさった魔石が確認されるなど、新たなことが次々と発見されていった。それによって新たなジョブスキルの開拓や装備の一新、魔道具開発と魔石売買も盛んとなる中で、探索者たちは見果てぬダンジョンの攻略に心血を注いだ。


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