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ライブダンジョン!  作者: dy冷凍
第七章
376/410

絶望からの退避

(死なせた時点でアウトかよ。クソが)



 アンデッド化しているであろうエイミーとガルムを前に努の内心は荒れに荒れていたが、それに反して身体は逃避するように後ろへと下がっていた。



(分身と血武器のタイミングがいい消滅具合からして代わりに二人と戦えってことだろうけど……爛れ古龍本体がジッとしている気配がない。それにあの二人死んだはずなのにフライ継続してるし、仕様無視にも程があるだろ)



『ライブダンジョン!』ならばこういった場面は階層主本体が動くことはないのだが、そんな仕様など知ったことかと言わんばかりに爛れ古龍はブレスを撃つ気満々である。それにエイミーがブーストを使用しながらフライで浮かび上がったことからして、恐らくガルムもフライによる浮遊とスキルを使えることは明白だ。



『…コンバット、クライ』

「アァ!?」

「メディック」



 理性を保っている者ならばコンバットクライに釣られることはないが、龍化状態ではそれも難しい。ガルムから発せられた赤い闘気を浴びて正気を失いかけたアーミラに努はすぐさまメディックを放ち、彼女を正気に戻す。それに続いて錯乱していそうなダリルにも飛ばそうとしたが、意外にも釣られている様子はなかったので途中で止めた。



「ブレスが来る! ガルムに釣られて食らうなよ!」

「はい!」

「わかってらぁ!」



 三人の中ではエイミーとガルムのアンデッド化に一番動揺していたダリルは吹っ切れたような声で返事をしながら上空へと付いてきた。アーミラも苛々した様子で続き、爛れ古龍の口から放たれた腐食のブレスを避ける。



「ダリルは二人にコンバットクライを撃ってみてくれ。もし釣れるならそのまま二人を釣りながら、アーミラにエイミーを攻撃させながら耐える形で。その間爛れ古龍は僕が受け持つけど、初めのヘイト稼ぎに時間はかかるからその間腐食のブレスにだけは当たらないように」

「……はい」



 フライで移動しながら話す努に対して頷くダリルの表情からは完全に不安が滲み出ていた。もし模擬戦闘でガルムとエイミーを同時に相手する状況を想定すれば瞬殺される未来しかないので、不安になるのも無理はない。そんな彼の不安を和らげるように努は苦笑いを浮かべた。



「もしコンバットクライに釣られるとすれば相手に理性はない。スキルを使われるにせよ普段よりは実力も劣るだろうし、僕がダリルを徹底的に支援する。むしろ万が一釣れない場合は僕が瞬殺されて終わるから、そっちの方が不安だよ。普段より気合入れてコンバットクライ使ってくれ」

「……気合でどうこうなるんですかね?」

「どうこうするしかない。アーミラは柔いエイミーから狙って倒してくれ。ガルムと一対一ならダリルも早々死にはしないから」

「あいつ、じっくり来るから面倒くせぇんだよな。しかも龍化は――」

「ガルムがいる限りは使えないね。コンバットクライを打たれたら釣られるのはもうわかってるし」

「ちっ」



 実質的に龍化を封じられたアーミラは舌打ちを漏らす。彼女の立ち回りはユニークスキルである龍化が中心のため、それを封じられたのは痛い。そんな彼女を横目で見ていた努は爛れ古龍の方を指差した。



「これが模擬戦なら相当厳しい状況だろうし、あの二人も動きを見る限り今までの分身より明らかに手強いだろうしね。ほら、あの仕草なんて丸っきり退屈してるエイミーみたいじゃない?」



 腐食のブレスにより地面から消化するような音が流れる中、爛れ古龍の肩甲骨に避難していたエイミーは両手に持つ双剣をペン回しでもするように動かしている。それに対してガルムは大盾をどっしりと構えてモンスターを見るような目つきでこちらを睨み付けてきていた。ステータスだけを引き継いでいた今までの血分身と違うことは明らかであり、その実力すらも引き継がれている可能性が高い。



「でも生前の二人と模擬戦して勝つよりはマシな状況だ。アーミラは模擬戦で使えなかった実戦向けのスキルをガンガン使ってけ。もう龍化だけが取り柄じゃないってことを大剣士たちに知らしめるチャンスだぞ」

「……どの口が言ってんだか」



 初めに龍化だけが取り柄だと自分に真正面から言ってきたのは紛れもなく目の前の男であるため、そのあまりにもずけずけとした物言いにアーミラは呆れたように返した。しかしその不機嫌そうな口調とは裏腹に彼女は悪くなさげな笑みを浮かべていた。



「ダリルは模擬戦通りクリティカル判定を意識して時間を稼げ。今まで通りの動きで十分通用する。ここが正念場だ、気張れよ」

「わかってます」

「よし、それじゃあ今すぐ使え」

「……コンバットクライ」



 ダリルはいつもと同じような顔つきをしたまま腕を組んでいるガルムに何とも言えない視線を向けていたが、努に無理やり背中を押される形でコンバットクライを発動した。



「プロテク、ヘイスト」



 それと同時に努は二人にプロテクとヘイストを同時掛けすると、まず手始めにガルムへヒールとメディックの弾丸を飛ばした。それを避けようともしなかったガルムの頭部にあった傷は僅かに回復し、状態異常などが解除された様子もなかった。



(ヒール系は効かないパターンか。それなら爛れ古龍を巻き込んだオーラヒール系の運用は無理。ここで役に立たないでどこで役に立つのか疑問だけど。……というかあれは一体どんな仕様なんだ。まさか本人が思考してるんじゃないだろうな)



 広範囲回復の効果を持つオーラヒールの相変わらずな役立たず加減に内心で突っ込みながら、ヘイパス! とサッカーボールでも要求しているような身振りでアピールしているエイミーを見て努はここに来て初めて緊張感が抜けそうになった。


 普通に考えれば恐らくガルムが回復したのを見てそれじゃあ自分にも! といった具合なのかと想像は出来るが、アンデッドのはずなのにそこまでの思考能力を持ち合わせているのは非常に厄介である。だがコンバットクライによるヘイト効果はちゃんと受けている様子もあるので、人間に近いチンパンジーくらいの知能は持ち合わせていると考えた方が良いか。


 最後に何でパスしてくれないんだよー! とでも言いたげに不満を目一杯アピールしてからコンバットクライを飛ばすダリルの方に目を向けたエイミーを見ないようにしながら、爛れ古龍に乗っているガルムに向けて光線のホーリーを飛ばす。すると彼は先ほどと違い大盾でしっかりと防いだため、聖属性が有効であることは確認した。


 そしてホーリーを大盾で防ぎながら爛れ古龍から飛び降りたガルムは、その勢いのままダリルへ急接近する。



『シールドバッシュ』

「ガルムさんっ……!」



 既にモンスターへと変貌しているとはいえ見た目としては病的に肌が薄黒くなっている以外変わりないガルムを目の前に、ダリルは苦悶に満ちた表情のままその攻撃を防ぐ。エイミーはその隙を狙い懐に潜り込もうとした。



「ちっ」

『……双波…斬…』

「カールブレイクゥ!!」



 そんなエイミーをアーミラが横合いから大剣で真っ二つにしようとしたが、彼女はその攻撃を察知してしなやかに身体を屈めて避けた。そして大剣の強烈な空振りにより血に濡れた白髪をぱたぱたと揺らしながら放たれた斬撃を、アーミラはスキルによる動作キャンセルを利用し大剣で受けた。


 双波斬が打ち払われたことが意外だったのか、エイミーは欠けた猫耳を警戒するように立てて双剣をゆらゆらとさせながらゆっくりと距離を詰めてきた。大振りの攻撃を繰り出そうものならすぐさま距離を詰められ、かといって様子見をすれば手数で押される絶妙な間。模擬戦で何度も見たその立ち回りにアーミラは吠えた。



「ほんっっとうに生きてるみてぇだな! 面倒くせぇ!」

(こっちは面倒くせぇどころか動きたくもないんだけど)



 そんなアーミラの怒声を聞いて努は思わずそんなことを内心で愚痴りながら、今もよろよろと歩いている爛れ古龍を前に冷や汗を流していた。自分が唯一殺されたトラウマともいえるモンスターのヘイトを自ら受け持たなければいけないという状況。だがそれをしなければダリルとアーミラが戦闘に集中できず負ける可能性が上がるため、自分がその役割を果たすしか道はない。



「ホーリーウイング」



 爛れ古龍の体を成す骨自体の耐久性は非常に高く、アーミラでさえまともなダメージを与えることは不可能に近い。そのため『ライブダンジョン!』では敢えて爛れ古龍を回復させて受肉させた後、その箇所を殴ってダメージを稼いでいくのが常套手段じょうとうしゅだんだった。


 ただ今は機能を失っているように見える臓器がまだ存在するため、そこに当てれば攻撃は通る。その中で唯一動いている灰色の心臓に向けて聖なる羽根の束を矢のように飛ばし、表面に浮いている邪気を払いながら突き刺す。その攻撃を受けた爛れ古龍は嫌そうな呻き声を上げながら動きを止め、すぐに標的をこちらへ切り替えてきた。



「メディック、ホーリー、ヒール」



 思いのほか早く釣れた爛れ古龍が向かってくる恐怖を何とか押し殺しながら、ダリルへ支援回復をしつつガルムに対してホーリーを飛ばして戦闘の妨害も行う。



「シールドバッシュ!」

『…………』

「メディック、ホーリー」



 相手がガルムの実力を継承し疲れ知れずの身体を持つアンデッドとはいえ、ダリルの背後には『ライブダンジョン!』でのクラン戦でも上位には入れるヒーラーが控えている。タンクが一人の今はメディックも普段より多く回されているのでダリルもまた疲れ知らずであり、それでいてVITとAGIが一段階上昇している中で戦闘することが出来ている。



「ヘイスト」

『……!』



 更に数秒で解けてしまうくらい小さなヘイストの弾丸を一発だけガルムに当てて速さの感覚を狂わせるなどといった、この世界ならではの地味な妨害も取り入れている。



「ダリル、コンバットクライは定期的に使っていけ。エイミーは完全に釣れなくてもそっちに気が逸れるから隙が出来る。それにガルムの攻撃は関節技以外は取るに足らない。そのまま高いVITでどんどんゴリ押していけ。アーミラはとにかくエイミーの気が逸れる時を狙え。流石にパワスラは避けられるから一刀波かエアスラでいい。相手のVITは脆いから軽いのでも持っていけるぞ」



 アンデッドの二人がある程度の思考能力と実力を兼ね備えていることは厄介であるが、それならば戦い方を対人戦に切り替えていけばいい。人の嫌がることを考えさせれば右に出るものはいない努の支援回復と妨害、そして戦闘を観察してから提示する戦略によって初めこそ辛い立ち上がりだったダリルとアーミラは勢いづいてきた。



「ふぅー……」



 だが二人の支援回復と戦闘に気を配りながら恐怖の対象である爛れ古龍のヘイトも稼ぐことは、努の気力をじりじりと削っていた。普段ならば呼吸するように出来る支援時間の秒読みも、いざ爛れ古龍を目の前にすると乱れてしまいそうになり気が抜けない。


 爛れ古龍は二人のアンデッドを作成してから血の操作も出来なくなり、今ではその巨体と腐食のブレスくらいしか怖いものはない。その性能だけ見れば遅いマウントゴーレムのようなものだが、それが自分を狙っているというだけで努にとっては大きなプレッシャーだった。


 しかし最善を尽くさなければ自分はまた爛れ古龍に殺されるだろう。その可能性を防ぐためだけに努は吐き気を押し殺し、爛れ古龍を前にしても支援回復と妨害の手を緩めることはなかった。



(爛れ古龍もこのパターンだとまだ次の段階がある。それまでに少なくともガルムとエイミーは確実に潰しておきたい。蘇生出来れば一番なんだけど……怪しいところだな)



 今までの仕様からすれば白魔導士の蘇生可能時間は五分なので、もう二人は蘇生出来ない可能性が高い。だとすればアンデッド化している二人を再利用される可能性もあるため、完全に潰しておく必要がある。そのためには恐らく聖属性の武器で倒す必要があるだろう。



「アーミラ、エイミーへの止めはその大剣で頼む。聖属性で倒せばアンデッドが再復活することは多分ない」

「わかった」



 ダリルのコンバットクライで何度も気が逸らされるようになってからはエイミーの被弾が増え、既に勝負の行方はアーミラが勝つ方向に傾き始めている。余裕のある間に努はそのことを伝え、了解の意を示しているダリルも確認したところで爛れ古龍に向き直る。


 エイミーは右のふくらはぎを一刀波という大剣士唯一の飛び道具で深く切り裂かれ、今は身体構造的に動きが制限されている。ガルムの方はそこまで影響はないがそれはダリルも同じであるので、アーミラが加勢すれば一気に倒せるだろう。



「大人しくしてろよ……」



 あとは爛れ古龍が大人しくしていれば楽なのだが、その見るからに弱体化している――悪く言えば力を温存しているような様子を努は警戒していた。するとそんな努の呟きに反応でもするように、爛れ古龍は唾を飛ばすように腐食のブレスを放った。


 シェルクラブの水鉄砲と同程度の速さしかないその物体を空中で避け、努は訝しげな目つきのまま爛れ古龍を眺める。瞳が失われている真っ黒な眼孔と視線を合わせるのも束の間、爛れ古龍は右腕を振り上げると自身の左胸――僅かであるが鼓動している心臓を鷲掴みにした。洞窟の奥から響くような唸り声。



(胃は破壊してるから暴食竜みたいなことはないはず……何だ? 何をしてるんだ?)



 そのままミチミチと音を立てながら心臓を引き千切ろうとする爛れ古龍の姿に、努は暴食竜の自食作用を想起した。だが既に胃は完全に破壊してその箇所はポッカリと穴が開いている状態のため、心臓を食って何かをするということは出来ないはずだ。


 意図のわからない行動に対して努は取り敢えず心臓に向けてホーリーを放ってはみたが、それが効果的であるかはわからない。そしてそのまま自らの心臓を引き千切った爛れ古龍は、それを抱えるようにうずくまった。すると爛れ古龍の中心からレイズの光に似たものが二本打ち上がる。



(……おい)



 その光は上空で弾けて二筋の光が落ちたと同時、爛れ古龍は身を起こす。その手にあった心臓は焼き焦げた炭のようになっていたが、その代わりに爛れ古龍の腹部には真新しい臓器が二つ。


 完全に破壊したはずの肺と肝臓は、綺麗な形で復活を遂げていた。そして文字通り息を吹き返した爛れ古龍が肺を使い大きく空気を吸い込む。



「アーミラ! ダリル! 空中へ退避!」



 その声に反応して二人が上空へ退避した時、先ほどまでとは比べ物にならないほど規模が大きい腐食のブレスが降りかかった。退避が間に合わなかったエイミーはすぐさま腐り果て、VITの高いガルムも少しの間耐えてはいたが最後には吹き飛ばされる衝撃で身体の節々が腐り落ちた。



「何だぁ!?」

(……何だよ、これ)



 突然にして強化された腐食のブレスを前にアーミラが驚いている中、努は絶望を目の前にしていた。肝臓の復活により再生能力を得た爛れ古龍が、再び蘇ろうとしていた。



「レイズ! レイズ!」



 ガルムとエイミーを生き返らそうとレイズを連発するが、その声にスキルは答えてくれはしない。それどころか肝臓の機能によって腐り落ちたはずの二人はみるみるうちに再生され、何とか原型を留めていた装備を拾い集め始めた。



(……殺す気だ。完全に殺しに来てる)



 着々と戦闘準備を整えているガルムとエイミーを前に、努は目に見えてたじろいだ。それは仲間である二人の醜悪な姿にではなく、その背後から透けて見える意思――神からの明確な殺意にだ。


 成れの果ての初見殺しの時も、僅かではあるがその殺意は感じられた。だが今目の前にしている無茶苦茶な現実は、その殺意を明らかにしていた。生きて返すつもりがないのだ。いくら自分が最善を尽くしたところで。



(死ぬ、また死ぬのか。くそっ、くそっ、くそっ……! 死んでたまるかっ!! 何で僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!! ふざけるなよ!!)



 肝臓で爛れ古龍が再生している中、アンデッド化したガルムとエイミーを相手にしなければいけない最悪の状況。これから先の展開を考えたくもない現実を前に、努はすぐさま手に持っている杖を振ってスキルを唱える。



「プロテク、ヘイスト! ダリル! 二人のヘイトを取れ! アーミラは肝臓の破壊を最優先! 再生能力だけは野放しに出来ないっ!」



 だがそれでも努は勝利と生を諦めきれなかった。『ライブダンジョン!』でPTメンバーたちが匙を投げる絶望的な状況でもヒーラーとして勝負を投げなかった意地と、生への強い執着。その二つが努を突き動かし、茫然としていたダリルと驚きで固まっていたアーミラに指示を出す。



「ダリル、ボサっとすんな! 行くぞ!」

「は、はいっ!」



 アーミラに背中を蹴られてようやく正気に戻ったダリルはすぐにコンバットクライで二人のヘイトを取る。だがアーミラが肝臓にパワースラッシュを叩き込んだと同時に、二人はダリルを無視して彼女の方へ向かった。



『コンバットクライ』

『ブースト』

「こいつらっ!?」



 ヘイトよりも臓器破壊する者を狙う血分身の特性は、アンデッド化した二人も引き継いでいた。そのためアーミラは二人の攻撃を避けるのに手一杯となり、身動きが取れなくなる。



(詰んで……るなこれは。死ぬ)



 今の現状をどうにかするにはPTの人数が足りない。こうして足止めを食らっている間にも爛れ古龍の再生は進んでいく。詰みという言葉が努の心に重くのしかかる。詰んでいるということは、また自分は死ぬ。爛れ古龍にまた殺される。死。



「はっ……はっ……」



 死の未来が確定したと同時に、努の心を恐怖が支配した。もう何をどう足掻いても死ぬ。その事実は努の体感温度を下げ、寒気と冷や汗が止まらなくなる。普段通りフライで浮かんでいるはずなのに、視界がおぼつかなくなり空中で留まれなくなる。


 時間が経てば経つほど遠のいていく生存への道。それでもその道が途切れるまでは何とか恐怖を誤魔化しながら戦闘を続ける。だがそれは延命措置でしかなく、根本的な解決策はどこにもない。



「…………」



 そして臓器の再生を繰り返した爛れ古龍がとうとう脳の再生に着手し始めた時、地面へ降りていた努の目先には忘却の古城が佇んでいた。



「……っ」



 まだダリルとアーミラの目は死んでいない。だが努がその古城に向けて一歩踏み出してからの決断は早かった。


 努はそのまま走り出し、戦場から一人逃げ出した。


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[気になる点] 階層主戦って逃げられないんじゃなかったっけ? [一言] 逃げたあとのツトムの評判やパーティメンバーからの評価が気になるなぁ。
[一言] えっ逃げられるの…!?
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