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ライブダンジョン!  作者: dy冷凍
第六章
257/410

ガルムの変化

「うわぁぁぁん!! ひどいっす! 師匠のせいっすよぉぉ!!」



 ソリット新聞に載っている記事を見て、ハンナは朝から呻いている。その記事には八十一階層で心底驚いて半泣きになっているハンナの写真が映し出されていて、観衆から話題になっていると書かれていた。


 以前潜った八十一階層は稀に行ける場所で、最初にその体験をしたアルドレットクロウのPTも新聞で驚いている写真を晒し上げられていた。それからは大分話題に上がってすぐに広まったのでもう驚く者がいなくなった分、ハンナの新鮮なリアクションに観衆も喜んでいるようだった。


 そんなハンナの嘆きを知らんぷりしている努は、朝のランニングを終えてぐったりとしていた。未だに体力がクラン中最下位であるため最近は毎日走っているのだが、コリナにすら勝てる気がしない。ただそれでも既に習慣にはなっていたのでまだ続けてはいた。



(今日は昨日組めなかった人と組もうかな)



 現状の最高到達階層はアルドレットクロウの八十三階層であり、そこまで進行度も早くないので焦る必要はない。そのためまずは光と闇階層で出現するモンスターに全員慣れさせるため、PT自体は自由に組んでいいだろう。


 なので今回は昨日組まなかったダリル、ガルム、ディニエル、エイミーで行こうと考えていた。そしてリビングで朝食を食べながらPTを誘うと、ダリルは黒い尻尾をぶんぶんと振って快諾し、ディニエルもこくりと頷いた。



「すまん。私は今日コリナと組みたいと思っている」

「へ?」



 しかし普段ならば真っ先に頷くであろうガルムの思わぬ否定に、努はすっとんきょうな声を上げた。用事などでPTを組めないことはあるにせよ、コリナと組みたいと言われて断れるのは初めてだった。そんなガルムの言葉にはダリルも目を丸くしている。


 するとエイミーも気まずそうに白い猫耳を畳みながら手を上げた。



「ごめん、わたしも今日はコリナちゃんと組みたいかな」

「えっ。……あー、そう? んー……」



 正直なところ二人は絶対快諾してくると思っていただけに、動揺を隠せず口が止まった。そして二人に指名されたコリナもそんな努の方を見て、あわあわと口を動かしてサラダをすぐに飲み込んだ。



「えぇ!? ツ、ツトムさんとPT組まないんですかぁ!? ガルムさんとエイミーさんが!?」

「……いや、別に僕の指名が絶対ってわけじゃないから。九十階層主に挑むPTは決めさせてもらうけど、それまでは別にどんなPT組んだっていいわけだし」



 若干コリナのフォローが心に突き刺さった努は微妙な顔をしながらそう言うと、前の席にいたアーミラが面白そうにけらけらと笑った。



「飼い犬に手を噛まれたみたいな顔してるぜ! ツトムにはいい薬だな!」

「……じゃあ今日はコリナがPTを決めるといいよ」

「え、えぇぇぇ!? えーっとぉ、私は別に全然……ツトムさんがクランリーダーですし、実力だって上なわけですしですね……? ツトムさんが決めて下されば私はそれに従いますよぉ」

「うだうだうるせぇんだよ、てめぇは。さっさと決めやがれ。クランリーダー様もご立腹だぜ」

「…………」



 見下すような流し目で見てくるアーミラに対して努は無言で親指を下に向けている。そして今までPTを決めたことがないコリナはしばらくまごついていたが、朝食を食べ終わった頃にようやく決めた。



「そ、それじゃあですね……。ガルムさん、ハンナさん、アーミラさん、エイミーさんで行こうと思いますぅ……」

「了解。皆はそれでいい?」

「なんか新鮮でいいっすねー! もちろんいいっすよー!! あたしを騙した師匠をこてんぱんにしてやるっす! しゅっしゅ!」



 ハンナは先ほど沈んでいた感情は何処かに消し飛び、楽しそうにシャドーボクシングをしている。アーミラも赤ちゃんを相手にするように舌を出して馬鹿にしてきていた。そんな二人を努は冷めた目で見た後、今回組むPTメンバーたちを見回した。


 その後全員で食器を台所まで持って行き、各自部屋に戻って神のダンジョンへと向かう準備に入った。努も部屋着からいつもの白いローブに火山階層で手に入れた黒ズボンに着替え、ポーション瓶を入れるベルトを締める。


 そして最後にマジックバッグを背負って部屋を出て、下に降りる途中で少しだけ足を止めた。ガルムの部屋の前で止まった後、すぐに歩いて階段を降りた。



「あとはディニエルとゼノだけか」

「あ、はいっ」

「ゼノも割と遅いからな……」



 既に準備を終えてリビングにいるダリルとリーレイアと合流した努は、嫌そうな顔で二階を見上げた。ディニエルは何だかんだ部屋でだらだらとし、ゼノは自分の姿を入念にチェックするので準備に時間がかかる。



「ガルムさん、どうしたんですかね。ツトムさんの誘いを断ったことって今までなかったですよね?」

「……さぁ、何かあったなら話すだろうし、気にしなくていいんじゃない」

「そうですよね……」



 少し不安そうな顔をしているダリルに努は少し冷めた言葉を返した後、二階に上がってベッドに寝ていたディニエルを引きずっていった。


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