第1章 第4話
深夜
結局あの後、蓮子たちに明日とある場所に行くことを伝えて別れた
瑛士は寝ようにも眠れなかった
外の世界にきて早速事件に巻き込まれたのだから当然だ。
様々な疑問が頭から離れないのだ…
疑問に思うことは二つある
一つは彼女達が持っている能力についてだ
外の世界に行く前に紫が言っていた「解決の鍵」というものは見つけることが出来たものの本当にこれで合っているのだろうか…、そんな不安が頭を過る
講義室で初めて二人を見た時、すぐに彼女たちが能力を持っていることが分かり判断した。
ちなみに、瑛士が見た彼女たちの能力はこんな感じだ。
蓮子:星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力
メリー:結界の境目が見える程度の能力
メリーの能力は分かる。紫に近しい能力を持っているのだから
だが蓮子に関しては分からない…
この能力のどこに今回の件と繋がっているのだろうか…。もしかしたら二人で一つの何かを齎すのかもしれない。
もう一つはあの研究員との話だ
蓮子たちの話からこのような状況にあることは把握することはできた。
だがそれでも分からない。
どうして俺だけではなく二人にもあの爆音を聞こえるようにしたのだろうか。
どうして二人を捕らえる必要があるのか
その時は捕らえた奴らを叩いて二人を解放する状況をまで時間を止めたから良かった。
しかし彼の去り際に一瞬にして消えたあれはどう説明すればいいのだろうか…
もしかすると外の世界に能力を持つ者が多数いる可能性もある。
ましてや、あの研究所の人たちが持っているとすれば…
もう少しこの事に関して調べる必要がありそうだが、まずは異変解決が先決だ。
今頃幻想郷では俺の作業を待っているかもしれない。
早いところ境界を直して、終われば調べる時間はいくらでもある。
そう思いながら瑛士は眠りについた。
次の日、瑛士は蓮子とメリーを引き連れて博麗神社にやってきた。
その場所は蓮子たちが通っている大学から電車で二駅離れた所にある。
瑛士がここに着いた時にはスキマを使って移動したが、さすがに二人がいる前では使えないので場所を調べて行こうとした。
二人はどうやらその場所に行ったことがあるらしく案外楽に行けたのも事実である。
瑛士が外の世界に着いたのが夜だったのでその外見が分からなかったが、幻想郷の博麗神社と比べると歴然の差だった。長年使われていなかったのか、いつ崩れてもおかしくないような風貌をしていた。そのせいか、絵馬も無ければ賽銭もない。まぁ幻想郷も同じだが…
蓮子は着いて早々こう言った。
「何回も来てるから分かるけどやっぱり不思議なところよね、博麗神社は」
蓮子の発言を聞いて大体の事は察したが一応聞いてみた。
「どういうことだ?」
「ここに来た人の一部は神隠しにあっている、ていう噂があるんです。春先に気になって行ってみたことがあるんですけど結局分からなかったんだけど…」
メリーが説明を加えた。
「実際にその神隠しはあったりしたのか?」
「昔はあったらしいけどここ最近はないわね…」
そう答えながら瑛士は自分が来た境界を探していた。
しかし…
「あれ」
おかしい、瑛士が入ってきたスキマの気配……、いや、境界すら見当たらなかったのだ。
しかもどこかは分からないが境界の歪みがどう考えても違う部分も感じる。
瑛士はメリーに聞いてみた
「メリー、何かおかしなところとかないか?境界の歪みとか」
能力上、メリーならきっと分かるだろうという希望をもちながら聞いてみた。
が…
「え、特におかしい部分は感じないわね」
彼は焦り始めた。
瑛士が見えてメリーが見えていないのはありえないことなのだ。
まさか…、メリーの能力では見えない力が働いているのか…
俺でも分からないということは…
もう、使うしかないか…
そしてついに瑛士は能力を使うことにした。
彼自身、できれば使いたくはなかったが、そうしないと事態が動かない。
「メリー、俺の目を見てくれないか」
「えっ…、うん」
二人は互いに目を合わせた。
瑛士の目が赤くなる。
そして見つめていたメリーの目も赤くなる。
すると、生気を失ったかのようにメリーは倒れそうになり蓮子が支える形になった。
急の出来事とメリーが倒れたことで蓮子は瑛士に怒りを向ける。
「ちょっと、メリーに何したの!」
「本当はこんな事はしたくなかったけどこれしか打開策が無かったんだ。今やったのは、メリーの能力の力を完全に俺の物にした。簡単に言うとメリーの精神を借りたってことだよ。安心しろ、終わればメリーは何事も無かったかのように目が覚める」
瑛士は意識を集中する。
すると今まで分からなかった境界の現状が明らかになった。
俺が入ってきた境界が消えている。あと、離れの方に完全に破れた結界があるな…
もしかして、何かがこの不安定な状況の結界を割って幻想郷に入ったな…
直す前に入られるのは相当まずいぞ…
頭の中で考え、そして場所も把握した
「すまないな、蓮子。今メリーを起こすよ」
そう言うと、すぐにメリーの意識が戻った。メリーはさっきまでの事は覚えていないらしい。
そして、瑛士は話を切り出した。
「なるほどね…、メリーの能力で見えないのは当然だな。今確認した結果、俺があそこにいない間に相当まずい状況になっていたようだな。」
「どういうこと?メリーでも見れない境界って存在するの?」
「これをやった奴はとんでもない事をしてくれたな、本当に…」
瑛士は明らかに苛立ちを感じているように二人は見えた。
そして、
「予定が狂ったがもうやるしかないな、二人とも俺についてきてくれ」
すぐさま瑛士は走り出した。
蓮子とメリーは訳が分からないまま彼の後を追いかけた。
今回も読んで頂きありがとうございました!
一話にまとめるのは本当に大変です…
今回はついに外の世界にいた瑛士も異変に気付きました。
そしてついに第1章も次回で終了です!
動き始めつつある異変の影…
はたしてどういう状況なのか…
徐々にではありますが明らかになっていきます。
次回、第1章最終回!ゆっくり待っていただければ幸いです。