誰が私を殺したの?9
一人減ってしまった室内は、沈黙に包まれていた。
「ねぇ、これって真里の話に似てない?」
綺麗に整えられた爪をかじりながら美樹が沈黙を破った。
「えっ?」
全員の視線が美樹に向く。
「だって!ここまでそっくりじゃん」
「あんなの噂レベルだろ」
けんもほろろに龍弥が言い返した。
「でも、真実かもしれないじゃん」
「美樹さんの言うことも当たってるかもしれませんね」
「春樹、お前まで」
呆れた視線を龍弥が春樹に投げかける。
「おかしいんですよ。考えてみてください、何故、ここは電気が付いているんですか?水が出るんですか?冷蔵庫に新鮮な食材があるんですか?」
「それは、・・・」
「昨日まで人が住んでいたのならわかります。短期旅行ならわかります。じゃぁ何故、誰もいないんですか?これだけ大きなお屋敷です。メイドの一人はいるんじゃないでしょうか?それに何故家具には全て布がかけられているんです?長期不在としか考えられません。それに・・・」
春樹はちらりと雪夏に視線を送る。
「電話ですが、夕飯を作りに行く時僕もやってみたんです。救急車も遅すぎて・・・」
その言葉に、救急車を読んでいたことを忘れていた二人は、ハッとした表情になる。
「通じませんでした。全く無音なんです」
「でも、私はちゃんと・・・」
「わかってます。もしかしたら、あの後電線が切れてしまったのかもしれません。それにしてもおかしなところだらけなんです!不気味なんですよ」
「今の整理すると、もしかしたら、出かけていてこの嵐で帰ってこれないって可能性もあるわけだよな」
「微妙なところですよね。一日二日の留守ではないと思います」
「なぜ?」
「シルバーですよ」
「シルバー?」
「銀の食器があったんですが、くすんでるんです全て。銀は磨かなければ光りません。放置するとくすんでしまうです。こまめな手入れが必要なのが銀の食器なんですよ」
「なるほどね」
「それに・・・事故とはいえ半日の間に4人は多すぎるよな気がします」
「じゃぁ、殺人か?」
「いえそれはないです。全員がその現場を見ていますから・・・」
「とりあえず、早くここから出るのが一番ということか?」
「ですが、どこから出るんかが問題なんすよ」
男二人で腕を組んで考え込む。
「ねぇ、こんだけ大きなお屋敷なら、別の出口あるんじゃない?」
「え?」
「だって、使用人専用とか業者の出入り口とか、まさか玄関使うの?」
美樹の言葉にハッと二人して顔を合わせる。
その後龍弥は顔を片手で覆ってしまった。
「えっ?違った?」
「いや、合ってる。なんでさっき思い浮かばなかったか後悔してるんだ。冴えてるぞ」
龍弥の言葉に美樹は満面の笑みを浮かべた。
「よし、二手に分かれて探そう。鍵を探すより懸命だ」
「そうだね」
「私は龍弥とじゃないと行かないわよ」
「じゃぁ、私は春樹くんと行くね」
そうして、二手に分かれて探すことになった。
龍弥と美樹は二階を中心に探す。
抜け道とかあるかもしれないからだ。
「ねぇ、龍弥」
「なんだ?変なことだったら怒るぞ」
「違うよ~!さっきの続き」
「続き?」
二人は多くある部屋をひとつひとつ回る。
「そう、怪談話」
「あぁ、ほら話ね」
龍弥は開けれるところは全部あけ、怪しいところは壁を叩いたりした。
今回は美樹もベットの下などを積極的に探す。
「あのさ、覚えてる?1番初めに殺さてたは」
「メイドだろう?確か頭を殴られたんだっけ?」
「そう」
天井から床まで一つの部屋をくまなく探す。
その部屋にないと次の部屋と、手早くだが見逃しがないように慎重に探す。
「で、次は弟、騒がないように水につけて溺れさす。三人目は執事、殺したところを見られたから、窓から突き落とされた。四人目は妹が、首を絞めて殺された」
「よく覚えてるな~~」
次々にしゃべりだす美樹に舌を巻いた。
「だって似てない?」
その言葉に龍弥は立ち止まる。
「璃紅は溺死、真里は頭部損傷、浩太は転落死、翔子は窒息死か・・・」
「そう、ここまで死に方似てない?」
「美樹、他はどうやって殺された?」
龍弥の言葉に美樹が必死に記憶の底をさらう。
「えっっと父親が、毒殺。母親が刺殺。そして、最後が・・・」
「最後は?」
「ないの。この話はここで終わってるの。でもね、おかしいの」
「・・・残るは殺した本人か?」
「違うの。弟と妹ということなら兄か姉がいるはずなのに、書かれていないの」
「だから最後が分からない」
「分かった。とりあえず、刃物と食べ物に気をつよう。あいつらにも言っとかなっ」
突然立ち止まった龍弥を不思議そうに美樹が見つめた。
「どうしたの?」
「美樹、具合は悪くなってないか?」
「なんで?」
「俺達食ったよな」
「えっ?」
「夕飯」
その言葉に美樹は口元を抑えた。
「どうしよう・・・」
「気持ち悪いとかないか?」
「だ、大丈夫。龍弥は?」
「俺も平気だ、春樹も食ってたよな」
「うん、雪夏は食べてない」
「探しに行くぞ」
「うん」
二人は慌てて雪夏と春樹がいるであろう場所に足を向ける。