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誰が私を殺したの?8

ぼーんぼーん


と大きな音が突然響いた。

4人の肩が跳ね上がる。

音の発信源を探す。

辺りを見回す、視界に入るのは壁に交差するようにかけられている、剣と散弾銃らしきものがかけられている。

その壁の向こうから音が聞こえている気がする。

壁の横には木製の扉がある。

立ち上がった春樹と龍弥はその扉を開いた。

すると音は先程よりも大きく聞こえる。

音の数が12回を数えると静かになった。


「何かあった?」


恐る恐る立ち上がりながら美樹が隣の部屋を覗き込む。


「時計がある」

「時計?」


背の高い振り子時計が正確に時を刻んでいる。


「古いね」


そう言いながら美樹が時計に近づく。

高さは2メートルくらいあり、振り子の大きさも1メートルある。

細部まで気を使った繊細な彫りが優美だ。


「あぁ、立派だな。おそらくかなり高価だと思うよ」

「へ~、売ったらいくらくらいかな?」


美樹が時計を持ち上げようとしている。


「盗むなよ!」

「盗まないわよ!こんな大きなもの」


小さかったらいいのかよ。という言葉は胸に秘める。

手癖が悪いのは昔からだった。

先程の厨房でも、二人に隠れてこそこそしていたのを知っていた。

龍弥の言葉に慌てて手を離す。

すると、時計が大きく美樹の方に傾いた。


「きゃ~~~」


美樹は衝撃に備えしゃがみ頭を抱えた。

しかし、衝撃は襲ってこない。

恐る恐る美樹が目を開けると、春樹と龍弥が両側から時計を支えている。


「あぶね~」

「あっ、この後ろの足のところ腐ってますよ。美樹さんが触ったので微妙なバランスで保たれていたのが壊れたんでしょうね」

「私のせいなの!?」

「お前のせいだろ!」

「何よ!いつもいつも私が悪いみたいに!」

「実際にお前が原因だろう!」

「まぁまぁ、とりあえず元の部屋に戻りましょう」


時計を壁に立てかけて部屋を出る。


「危ないのでここの部屋には入らないほうがいいですね」

「入らないわよ!」


美樹はそのまま部屋を横切って入口に向かっている。


「どこ行くんだ美樹」

「トイレよ!」

「ひとりで行くな」

「はぁ?ヤローと連れションしろっていうの?」

「そうは言ってないだろう。一人で行動するな」

「じゃぁ、祥子といく」

「祥子が行けると思ってるのか?」


未だに微動だにしない祥子の様子を龍弥は顎で促す。

チラリと横目で祥子を見たものの美樹は自分が失言したとは思っていないみたいだった。

不貞腐れたままの美樹にため息をついた龍弥は妥協案を提示た。


「俺が一緒にいく。これ以上は認めないから」

「龍弥が!分かった」


龍弥が一緒にわかった瞬間美樹の機嫌は上昇し、あっという間に彼の腕に抱きつく。


「お前らはどうする?」

「僕は別に・・・雪夏さんは?」

「私も大丈夫です」


美樹は龍弥の腕を組みながら、さりげなく鋭い視線で二人を制止していた。


「だって、行こう」

「何かあったら、声出せよ」

「分かりました」


春樹がそれに答え雪夏が小さく手を振る。


カタン


何かが床に落ちる音がする。

祥子の手からスマホが滑りこ落ちたようだ。


「あぁ、僕が拾いますよ」


そう言って春樹が拾って祥子に渡す寸前止まった。


「どうしたの?」

「いや、なんかこのケース、不自然な気がして」


そう言ってケースを外すと中からシャラリと鎖が滑り落ちてきた。


「ペンダント?」

「女性ものみたいです」

「プレゼントかな?」

「おそらく」


ガタイがいいくせに実は照れ屋な浩太は中々渡せずにいたのかもしれない。


「これ、渡したほうがいいのかな?」

「どうしたらいいんでしょう」


こっそりと渡す機会を伺っていたのだろう。

そんな大事なものを今渡してもいいものか戸惑う。

スマホとプレゼントは重みが違うのだろうと二人にも分かっていた。

なので、先程みたいに形見にどうぞと気軽に祥子に渡すのは戸惑われた。

困りながら話しているとタイミングよくふたりが戻ってきた。

簡単に説明をすると、反応は全く違った。


「考えるまでもないじゃん!さっさと渡せばいいよ」

「出てからの方がいいじゃないか?」

「なんでよ」

「今渡して、錯乱されたら手に負えない」

「大丈夫よ。だって、こんなに大人しいだもん」


そう言うと、春樹の手から奪って祥子の首にかける。


「ほら、よく似合うじゃない。浩太も趣味がいいね」


なんの前触れもなく祥子が泣き出した。


「ずっと、ずっと、くれなかった。忘れてると思ってた」

「祥子さん?」


いきなり話始めた祥子に皆唖然とした。


「ずるいよ。浩太。誕生日も忘れてると思った!プレゼントも買ってない思った!」

「祥子さん!」


興奮して話し出す祥子をなんとか落ち着けようと雪夏が手を伸ばす。


「忘れようと思った!ここでたら全て忘れようと思った!なのに・・・」

「落ち着いてね。ゆっくり話して、ねっ」

「忘れられない!浩太が好き!」

「うん、うん、好きだよね。わかるから。だから」

「だから・・・浩太といるの」


止める暇もなかった。

雪夏の手を振り払った祥子が駆け出す。

後を追おうと立ち上がった瞬間机に足を取られて雪夏は転んでしまう。


「雪夏さん」

「私はいいから。祥子さんが」

「龍弥くんが追いました」


龍弥は雪夏が部屋から飛び出ると共に誰よりも早く動き出していた。


「じゃぁ、春樹くんも行って。私は大丈夫」

「分かりました」


春樹も後を追う。

美樹は突然の成り行きについていけないかのように、ドアを見て呆然としていた。


「美樹さん。美樹さん!」


雪夏の声に我に返ったの美樹も慌てて部屋を出て行った。

痛む足を耐えて雪夏も後を追う。


いや~~~~~!!!


部屋を出る寸前美樹の悲鳴が聞こえた。

雪夏が廊下にでて見たものは、一部の階段の手すりがなくなり龍弥と春樹を上半身を乗り出している姿だった。

その少し後ろで美樹が座り込んでいる。


雪夏は壁伝いにゆっくりと近づく。


「春樹、下からはだどうだ?」

「やってみます」


春樹が移動すると今まで見えなかったのが見えるようになった。

折れて残った子柱に捕まり、龍弥が何かを掴んでいる。


「足掴めました!」

「よし、美樹!ネックレス外してくれ。美樹!」

「私が」


茫然自失の美樹に変わり雪夏が急いで向かう。

雪夏の見たものは、手すりが壊れむき出しになった子柱にネックレスが引っかかり首を吊られている祥子の姿だった。


「祥子さん・・・」


口に手を当てて息を飲む。


「雪夏!早くしろ!」


龍弥の声に我に返り子柱に引っかかっている祥子のネックレスを外す。

足を持ちあげていた、春樹の腕に重みました。


「雪夏、変われるか?」

「やってみる」


階段に腹ばいになり、龍弥の掴んでいる場所に手を伸ばす。

雪夏の手が祥子が上着にかかる。


「片手は子柱を掴んどけ」

「分かった」

「俺は手を離す。重くなるから覚悟しとけよ」


頷く雪夏を確認すると龍弥は手を離した。

ぐんっと下に引っ張られるような感触が手にかかる。

腕の付け根が痛い。


「少し我慢しろ」


そう言うと、龍弥は二段飛ばしに階段を下りていく。

足を掴んでいた、春樹の隣に並んだ龍弥は落下地点で待ち構えた。


「いいぞ、手を離せ」


雪夏が手を離すと、祥子の体が構えた龍弥の場所に落ちていく。


「よし!春樹、心臓マッサージ」


一息つく間もなく階段下から緊迫した声が聞こえる。

壊れた手すりに気をつけながら慎重に階段を降りると。

横たえられた祥子に心臓マッサージを施しながら人工呼吸を試みている二人。

雪夏は祈ることしかできなかった。

どのくらいたったのだろう、人工呼吸を続けていた龍弥が顔を上げる。

そして、二人で視線を合わせて首を横に振った。

雪夏は目を閉じて天を仰ぐ。


「雪夏さん、シーツをお願いできますか?」


春樹が声も出さずに涙を流している雪夏に声をかける。

嗚咽のため声が出ない雪夏は頷くことで答え、階段を再び上がっていく。


「くっそ~」


悔しそうな龍弥の声が響いた。


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